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市町村合併:6月住民投票、合併に対する賛否が拮抗

2004/07/05

 長野・千曲市では6月15日、合併特例法で旧3市町(更埴市、戸倉町、上山田町)の議員がそのまま在任したことの批判を受けて、全市議47人が辞職した。これにより、7月実施予定だった議会の解散の是非を問う住民投票は実施されないこととなった。出直し市議選は辞職翌日から50日以内に新定数24で実施される。

 山口・周南市は6月20日、住民投票で解散した市議会の出直し選挙(定数34)を実施した。同市は2003年4月、2市2町(徳山市、新南陽市、熊毛町、鹿野町)の合併で誕生。在任特例の適用で、全議員78人が市議になったが、5月に実施した住民投票で解散賛成票が90%を占めたため解散した。投票率は65.56%と住民投票の46.55%を上回った。

 6月に実施した住民投票では合併に対する賛否が拮抗している。以下、個別に実施した住民投票を紹介する。

【6月6日実施】
 新潟・荒川町は合併の枠組みを問う住民投票を実施(73.10%)。「村上・岩船6市町村(村上市、山北町、神林村、朝日村、粟島浦村)による合併」が3829票、「中条町・黒川村との合併」が2513票、「合併せず町単独」が583票となった。町長は中条町・黒川村との合併を目指していたが、結果を尊重して辞任せずに法定協を設置している村上・岩船6市町村の枠組みを維持する考えを明らかにした。町長は2003年11月に、法定協離脱を表明したが、議会はこの方針に反対していた。村上・岩船6市町村法定協は荒川町の離脱表明で休止していたが、荒川町が10日に、協議再開を申し入れ、合併協議を再開する予定。なお、今回の住民投票では、いずれも過半数に達しない場合は、上位2つによる決選投票という全国でも珍しい規定が盛り込まれていた。

 山形・舟形町は新庄市との合併の是非を問う住民投票を実施(85.77%)。「賛成」が1259票、「反対」が3466票となった。この結果を受けて、両市町は22日に協議会廃止案を可決した。それぞれ単独自立でやっていく方針。同町では2月に、合併反対の立場の新町長が無投票当選し、合併推進派が多数を占める町議会と合併についての見解がねじれていた。

 長野・穂高町は豊科町、明科町、三郷村、堀金村との合併の是非を問う住民投票を実施(69.15%)。「賛成」が9129票、「反対」が8775票となり、同町は合併を推進する考えを明確にした。町財政が停滞し、行政サービスの向上や観光産業の充実を図る上で、合併が必要とされたことなどが理由とみられる。2月に結果を公表した住民アンケート(回収率72.6%)では、「賛成」が34.7%、「反対」が46.3%となっており、住民投票では賛否が逆転した。

 岐阜・笠松町は岐阜市との合併の意思を問う住民投票を実施(57.13%)。「反対」が6318票と「賛成」の3355票を上回り、11日には岐阜広域合併協から離脱する意向を表明した。「都市計画税による税負担増」「乳幼児医療費助成のサービス低下」「羽島市の離脱と岐南町議会の離脱方針決定」などが原因とみられる。この結果によって、岐阜市との合併を目指すのは柳津町、北方町のみとなった。

 福岡・大刀洗町は小郡市との合併の是非を問う住民投票を実施(66.95%)。「反対」が5550票と「賛成」2290票を上回り、30日には小郡市との法定協を解散した。

【6月13日実施】
 群馬・邑楽町は千代田町、大泉町との法定協設置の是非を問う住民投票を実施(53.57%)。「賛成」が5844票で「反対」の5721票を上回り、3町による法定協設置が決まった。ごみ処理など生活基盤が一致する3町を優先したとみられる。邑楽町は2003年9月と2月に、3町による法定協設置議案を2度否決していた。

 佐賀・太良町は鹿島市との合併の是非を問う住民投票を実施(77.25%)。「反対」3553票、「賛成」3116票で、「反対」が「賛成」を437票上回った。同町では「住民負担の増加などが心配」と将来を不安視する声が上がっていた。両市町は5日に、合併協定調印式を行ったばかりで、28日に合併関連議案を議決する予定だったが、合併関連議案は提案しないこととなった。

 北海道・標津町は中標津町、羅臼町との合併の是非を問う住民投票を実施(74.59%)。「合併する」が954票、「合併しない」が2547票となり、両町との合併に参加しない方針を示した。これにより、中標津町と羅臼町は境界を接しない飛び地合併を目指して協議を進めることとなった。

【6月20日実施】
 山口・田布施町は合併の枠組みを問う住民投票を実施(69.84%)。「柳井・大畠との1市2町」が4690票、「平生との2町」が4033票、「単独町制」が621票となった。合併後1人当たりの税収は、「1市2町」(人口5万3000人)では年間13万5600円、「2町」(3万人)では8万7500円となり、財政運営の面で「1市2町」での合併のほうが優位になる。同町は6月28日、柳井市、大畠町に合併協議申し入れを行った。同町では3月に、柳井市、大畠町、平生町との1市3町による法定協が休止してから、「1市2町」による合併を望む町長と、「2町」合併をめざす議会の過半数を占める町議が対立。町長による辞表提出や撤回などで混乱したが、議会は一度否決した住民投票条例案を全会一致で可決した。

 長野・丸子町は長門町、武石村、和田村との法定協設置の是非を問う住民投票を実施(61.01%)。「賛成」が7748票で「反対」3988票を上回った。これにより、法定協設置が決まった。一方で、丸子町と武石村は住民投票の3日前の17日に、上田市、真田町との法定協も設置しており、2つの法定協に参加することとなる。また、長門町、和田村も2町村での合併研究を進めている。丸子町長は、両法定協の協議と比較する資料を町民に示してから、再び合併を巡る住民の意思を確認する方針を明らかにした。なお、住民側は6月30日、上田市、真田町、武石村との法定協から離脱するよう町長に申し入れたが、町長は「住民投票の結果が上田市などとの法定協を否定するものではない」として離脱の考えがないことを示した。

 鹿児島・東町は阿久根市、長島町との法定協設置の是非を問う住民投票を実施(83.27%)。「賛成」2306票、「反対」2460票と「反対」が過半数を占め、法定協設置は認められなかった。阿久根市、長島町は1市2町による法定協設置を望んでいたが、この結果を受けて、東町と長島町の2町は7月に、法定協を設置する予定。

【6月27日実施】
 長野・波田町は松本市、奈川村、安曇村、梓川村との合併の是非を問う住民投票を実施(投票率68.82%)。「反対」が4325票と「賛成」の3736票を上回り、同町は28日、5町村による松本西部任意協から離脱し、自立することを表明した。松本市に編入合併されると住民の声が行政に届きづらくなり、きめ細かな行政サービスが難しくなるなどが理由とみられる。松本市は四賀村と法定協を設置しており、任意協も含めた「大松本市」構想は練り直しとなった。

 神奈川・藤野町は相模原市、城山町、津久井町、相模湖町との合併の是非を問う住民投票を実施(65.23%)。「1市4町合併に賛成」が3398票となり、「単独町政継続に賛成」の2045票を上回った。ごみ処理、消防などの広域行政をともに運営してきた他の3町が中核市である相模原市との合併に向かったため、単独での町政継続への不安が町民の間に強まっていた。一方で、城山町では合併慎重派の新町長が誕生し、相模原市への編入合併に慎重な姿勢を示している。藤野町長は「結果を尊重する」としながらも、1市3町による任意協には参加せず、合併協議の行方を見守る考え。(田中潤)