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公営住宅活用への取り組み

2004/06/25

 千葉市は6月23日、市住宅供給公社の特定有料賃貸住宅(特優賃)の一部を市営住宅に転用するため、「市営住宅等設置管理条例」を改正した。全国初の試み。特優賃は、民間の土地所有者が国や自治体の助成を受けて民間賃貸集合住宅を建設して一般に貸し出すというもの。市住宅供給公社は民間賃貸住宅を一括して借り上げて管理している。家賃が年3.5%ずつ上昇するため、古い特優賃は割高になり、全国的に空室が増加している。一括借り上げの場合、空室も含め全戸分の家賃に相当する賃料を支払うため、空室率が2割となっている市住宅供給公社は2002年度末で12億2000万円の累積赤字を抱えている。ところが、公営住宅は平均家賃が2万円台のため、空き室の募集は抽選となることも多かった。

 群馬・昭和村は6月17日、民間の新築賃貸住宅を村が借り上げ、家賃の一部を助成する事業を始めた。民間の個人・法人に1戸建て賃貸住宅(住居専用面積50u以上)を建ててもらい、村は10年間家賃の2割を補助するというもの。2004年度当初予算は6〜8戸の建設を想定し、54万円を計上した。当初は村営住宅の建設を目指していたが、財政を圧迫するために方針を転換した。なお、村営住宅を建設した場合、国の補助金を足しても1億円必要との見込みだった。

 以下、公営住宅などに関する、最近の自治体の取り組みを紹介する。

 札幌市は2003年11月、自殺や火災の発生などで入居希望者の募集を停止していた市営住宅の「事故空き家」の一般公募を行った。市営住宅の入居申込者が多く、倍率が40倍以上となっていたのを受けてのこと。比較的条件の良い10戸程度の事故空き家の入居者を募った。家賃は通常の居室と同額。希望者に事情を説明し、納得してもらったうえで、入居申し込みを受け付けた。

 東京都は2月、事業が破綻して競売などで持ち家を失った事業者向けに、市場価格よりも安い都営住宅を優先的に賃貸する制度を実施した。賃貸期間は5年程度。だが、裁判所の認定を受けることなどが条件のため、該当者はいなかった。

 東京都と23区は2004年度から、ホームレス自立支援のため、住宅を低額で貸し付けた上で職の斡旋や生活相談などを行う支援事業を始めた。2年間で都営住宅や民間アパートなど2000室を確保し、月3000円で貸し付ける。入居期間は原則2年だが、延長も可能。

 地方自治体による住宅整備は、事業費の半分が国から補助される公営住宅のほか、3分の1補助の特定公共賃貸住宅などがあるが、入居に所得制限があるほか、原則として家族での入居に限られている。
 そのため、岩手・住田町は1996年から2003年までに、国などの補助を受けず全額負担で、4軒長屋の木造平屋建てを3棟、計12室を整備した。町内産の杉を地元企業が集成材に加工し、地元の大工集団(気仙大工)が建設。1室当たりの床面積は45u。賃料は1ヵ月2万4400円。2003年に建てた1棟は、建設費3200万円のうち2400万円を過疎債、残りを一般財源で充当。常に満室の場合、耐用年数の30年間の家賃収入で建設費の35%を賄えるほか、過疎債は70%が交付税措置されるとのこと。(田中潤)


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