東京・三鷹市は2005年4月から、ESCO(エネルギー・サービス・カンパニー)事業を拡大する。市は1999年度に@本庁舎、2002年度にはA牟礼コミュニティセンターにESCO事業を導入した。@では契約期間だった1999〜2003年度の5年間で年間使用量を25%削減、Aでは初年度1年間に20%の電力を削減した。両ESCO事業は設計、施行、導入設備の運転、保守などの費用1億2200万円を市の自己負担と国からの補助金で賄い、事業者は省エネ策の提案、効果の保障だけをするギャランティード・セイビングス方式。今回新たに導入するのは、環境センター、東部下水処理場、芸術文化センターの3施設で、年間の電力使用料10〜20%削減が目標。補助金で賄う以外の必要費用全額を受託事業者が支出し、契約期間中に市がこれを分割返済するシェアード・セイビングス方式を採用するので、市は金融負担を負わない。
そのほか、ESCO事業を導入する予定の自治体を紹介する。
東京都は2006年4月から、都立病院など3施設でESCO事業を導入する予定。都は2003年度に、病院、美術館など15施設の省エネ診断を実施し、34億円を投じて15施設すべてで省エネ改修工事を実施すると年間7億円のコストを削減できることが分かった。今回ESCO事業を導入する3施設のほかに、診断済みの12施設、省エネの余地が大きいとみられる研究所、学校校舎など50施設についても順次導入を検討していく。
横浜市は2005年度から、済生会横浜市南部病院を対象にESCO事業を導入する。3月には、委託先を大阪市の総合設備メーカーに決めた。光熱費は年間で2割、CO2排出は4割の削減になる。同病院の年間光熱費は2億5000万円。ESCO運用後は2億円程度に減額される。減額4900万円のうち初期投資などメーカーへの支払いを除いた1200万円が実質の節減効果となる。
札幌市は2005年度から、市営施設でESCO事業を導入する予定。光熱費の2割削減を目指す。
ESCO事業は三重県、神戸市、富山市、東京・江東区、兵庫県、石川県、大阪府、神奈川・小田原市、埼玉県、山口県、東京・板橋区などで導入が先行している。大阪府は2001年に、母子保健総合医療センターでESCO事業を導入し、年3億3000万円かかっていた光熱水費を8000万円削減、23%の省エネ効果を実現した。設備更新に伴う費用は5400万円で、差額の2600万円を浮かせることができた。(田中潤)
※ ESCO事業とは、ビルや工場の省エネ化に必要な設備や資金などを包括的に提供するサービス。効果を事業者側が保障するというもので、エネルギー機器、施設のメーカーや総合電機メーカー、ガス、電力会社などが受託している。
最近、自治体でも導入の動きが出てきており、民間事業者の資金やノウハウで、庁舎など公共施設の光熱水費支出を省エネ設備に切り替えて削減、設備費や金利などの経費を差額で生じた利益で賄う仕組み。設計から施工、維持管理まで包括的なサービスを提供するESCO事業者は、自治体に対して省エネ効果を一定の契約期間内で保証、自治体の利益を達成できなかった場合、事業者が補償する。また、ESCO事業の認定を受けると、国から改修工事費の3分の1が助成される。 |