広瀬・大分県知事は6月15日、合併について、合併協議が難航している地域の首長に対し、リーダーシップを発揮して問題解決に当たるよう求めた。市町村合併特例法で知事権限が強化されることについては、「現時点では調停などの権限を行使する考えはない」としたが、「支援措置が手厚い現行法の適用を受けて合併するのが地域にとってベストの選択」との見解を示した。合併しない自治体に対する支援の有無については、「合併しなくても自立できると判断したのなら県として支援する考えはない」とした。
木村・和歌山県知事は6月14日、市町村合併特例法で知事権限が強化されることについて、今後も県の関与を強めていく基本姿勢を明らかにした。
共同通信の調査(4月)によると、今国会で改正した市町村合併特例法で、勧告を受けた市町村に合併協議会の設置を議会に諮ることを義務付けたが、全国の知事の6割に当たる28人が「行使しない」か「なるべく行使しない」方針とのこと。勧告権を「行使しない」としたのは秋田、群馬、新潟、石川、岐阜、長野、大分の7知事。「なるべく行使しない」は宮城、静岡、大阪、広島など21知事。
そのほかの知事や県の合併に対する最近のスタンスを紹介する。
増田・岩手県知事は4月、合併に関して、県として積極的に関わっていく考えを示した。合併実現へかじを切る地域には真摯に対応する。ただし、県の権限強化については「市町村の自主性が基本である」とした。
また、住民投票については「一律に実施するということではなくて、議会制のルールも尊重する必要がある」「基本的には議会が民意を代表する場であり、住民投票はどうしても決着がつかないときの選択だ」との考えを明らかにした。
高橋・山形県知事は4月、合併成立に向けて県が必要な助言、調整に乗り出す考えを示した。合併は地域の自主性によって進めるべきだとしながらも積極的に関与する姿勢。知事による合併協設置勧告については、「議論が熟していないところに勧告しても無理がある」と、県が主導的立場で関わることは否定した。
また、山形県は2004年度、2005年3月までの合併特例法期限内に合併した新自治体に対し、合併市町村数に5000万円を乗じた額を支援する「地域社会・コミュニティに配慮した合併市町村に対する交付金」制度を創設した。2市町村の1億円が最低額で、4市町村なら2億円。合併した年度とその翌年度に均等に分割した額で交付する。地域間の交流バスの運行、住民参加によるまちづくり、地域審議会・自治組織活動、地区単位の祭りなど地域の特色ある事業の保全、自治会、町内会活動などが対象となる。
橋本・高知県知事は5月、市町村合併について「より強く促すといったアクセルを踏む」と述べ、合併に向けて積極的に関与していく考えを明らかにした。知事はこれまで合併について「あくまで住民が自主的に決めること」「県が介入や押し付けはしない」と消極的だった。今回の発言は合併に対するスタンスを変えたわけではないとしているが、国の三位一体改革で地方財政が一段と厳しさを増すことが予想され、合併を促す方針に事実上、転換した格好。これを受けて、県は三位一体改革の影響による試算を発表。地方交付税などが2004年度の水準を維持したとしても、2006年度には財政調整基金などが底をつき、予算編成が困難になる自治体が53市町村中29市町村に上るとした。県内市町村では6月に、「香南市」「四万十市」となる予定だった野市町、赤岡町、香我美町、夜須町、芸西村、吉川村と中村市、佐賀町、大方町、西土佐村の法定協が、住民投票やアンケートの結果を受けてそれぞれ解散することが決まっている。
真鍋・香川県知事は5月、財政的な優遇措置を受けられる合併特例法の適用期限(2005年3月)が迫るのを受けて、合併の動きがなかったり、枠組みが固まっていない市町を訪れ、合併するかどうかの結論を出すよう要請する考えを明らかにした。合併協設置の意思を示していない坂出市、善通寺市、三木町、宇多津町、多度津町、直島町、法定協を解散した琴南町、満濃町、琴平町、仲南町などを訪ねる。法定協を休止している高瀬町、三野町、詫間町、仁尾町には、新しい枠組みでの合併見通しも尋ねる。
熊本県は5月、合併協を設置していない31市町村の首長に意向調査を実施した。合併に対する認識や取り組み、課題などを把握し、6月中に調査結果をまとめて公表する予定。
個別の合併事例にも知事や県が介入している。
愛媛・加戸知事は4月、宇和島市が津島町の財政問題などを理由に法定協(宇和島市、吉田町、三間町、津島町)から離脱を決めた問題について、「理解できない。財政問題はむしろ宇和島市の方が厳しいのではないか」として、津島町と対話するよう求めた。だが、同法定協は6月に解散、津島町を除いた3市町での合併を検討している。
岡山県は5月、「飛び地」合併を目指す勝央町、英田町が要望していた合併重点支援地域への指定に対して、「現状の枠組みでは指定できない」と回答した。消防・救急、ごみ処理など広域的な行政が多く異なっていることなどが理由。総務省によると、重点支援地域の指定を都道府県が拒むのは「極めて異例」とのこと。英田町は6月、2町での飛び地合併を断念し、勝田町、大原町、美作町、作東町、東粟倉村、西粟倉村で構成する法定協への参加を申し入れた。同法定協は勝央町にも参加を呼び掛けている。
澄田・島根県知事は6月9日、新市名称問題で合併が暗礁に乗り上げている大田市、温泉津町、仁摩町の合併協議について、1市2町の枠組みでの合併の必要性を強調。「石見銀山遺跡の世界遺産登録や維持・整備、保存・活用にも、地元の一体的な取り組みが重要になる」と述べた。(田中潤)
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「市町村合併についての知事のスタンス、さまざま」(2004/01/15) |