群馬県は2004年度から、新規事業として「障害者自立プロジェクト」に取り組む。プロジェクトは、障害者施設、障害者支援のNPO、公共職業安定所、養護学校と県の関係課などで構成。県が発注する事業を障害者施設が受注できるよう、需要発掘のための各種調査の実施、障害者に対する受発注の情報提供システム開発などを行う。障害者施設などが優先的に仕事を受けられる入札の優遇制度も検討する。
山梨県は7月から、障害者を対象に、パソコン事務や販売業務、介護サービスなどに対応する訓練を開く予定。7月から3ヵ月間は「パソコン基礎コース」の実施。NPOなどに委託して、専門の講師がパソコンの基礎知識から文書作成、表計算、インターネットなどの基本操作を講義する。10月から6ヵ月間は小売店などの販売業務に対応する訓練を予定している。
厚労省は5月、企業に義務付けられている障害者雇用の対象に新たに精神障害者を加える方針を決めた。2005年の通常国会に障害者雇用促進法の改正案が提出される見通し。同法は、従業員56人以上の企業に障害者雇用率を1.8%以上とするようと定めている。未達成の場合、企業は不足人数1人当たり毎月5万円の雇用納付金を国に支払わなければならない。だが、2003年6月時点で、障害者雇用率は1.48%となっている。
また、企業が障害者雇用を進めることを容易にする特例子会社制度もある。@親会社からの子会社への役員派遣、従業員の交流が緊密A全従業員のうち障害のある者が全体の20%以上B段差のない構造にするなど、障害者が働きやすい施設に改善するという3点を満たすことが条件。特例子会社で集中雇用した障害者を親会社で雇用したとして、障害者雇用率の向上につなげることができる。2004年4月時点で、全国で特例子会社は142社ある。
以下、自治体が最近実施した障害者雇用に関する施策を紹介する。
熊本県は3月、入札参加業者を格付けする独自の新基準を明らかにした。県の格付けは、全国一律の基準である「経営事項審査」の評点(客観点)と、県独自の技術点(主観点)を合わせた総合点で、業者を業種ごとに3〜6の等級でランク分けしている。法定雇用率1.8%を達成しているか、育児・介護両休業制度を設けているか、2003、2004年のボランティア活動への参加状況、2001年9月〜2004年12月の県発注工事に対する技術提案の採択件数、「舗装施工管理技術者」の数と等級、建設機械の保有状況などをそれぞれチェックし、主観点に加え、2005〜2006年度の格付けに反映させる。
神戸市は2004年度から、市発注工事の入札参加資格に障害者雇用状況を追加し、法定雇用率の達成企業に10点加算する。市は、経営審査や実績などを点数化して入札参加業者を4〜3等級に格付けし、発注金額の目安を設けているが、加算点を設けることで等級間の線上にある業者が1ランク上に格付けされ、障害者雇用の誘導策になるとしている。
三重県は2004年度から、障害者の雇用率が3.6%の企業や授産施設、小規模作業所などに対し、物品関係の契約・入札で優遇する制度を創設した。出納局だけでなく、各部局や県民局を実施対象としたのは全国でも珍しいとのこと。
山形県は2004年度から、障害者を積極的に雇用している企業や障害者授産施設を物品調達で優遇する制度を導入。物品購入の指名競争入札では対象企業を少なくとも1社は指名し、随意契約では見積書の徴収先として優先的に選定する。県内に本店か支店があり、法定雇用率1.8%以上を満たす中小企業と県内の障害者授産施設が対象。
また、山形県庄内総合支庁では4月、「知的障害者就労促進サポート会議」の第1回会議が開催された。庄内総合支庁が2003年度から3ヵ年計画で取り組んでいる「知的障害者就労促進モデル事業」の支援体制を整えるのが狙い。知的障害者による訪問介護員養成研修(3級課程)の受講から職場体験実習、就労先の確保まで、一貫してサポートする。
大分県は4月から、障害者の小規模作業所に対する運営費補助を拡充した。国、県、市町村が助成している1施設当たりの年間運営費(現行330万円)を500万円として、県と市町村が補助金を上乗せする。上乗せ期間は3年間。小規模作業所は在宅障害者の働く場で、利用者は自宅から通い、個人に合った軽作業や生活訓練などに取り組んでいる。定員はおおむね5人以上。平均運営費は年間510万円で、収入の大半を補助金に頼っているのが現状。
徳島県は2004年度から、障害者の職業訓練を行う事業を始めた。求職活動をしている障害者のうち、訓練すれば就職できると判断された人に対し、ハローワークが受講を勧め、委託した機関で原則3ヵ月以内の訓練を受けてもらう。「障害者職業訓練コーディネーター」を置き、訓練内容などの調整に当たる。
鹿児島県は5月、2005年度の公立学校教員選考試験で、実技試験免除を盛り込んだ障害者特別選考を新たに実施することを明らかにした。採用対象は自力で通勤が可能で介助を必要とせず、身体障害者手帳(1〜6級)の交付を受けている人。小中高と盲聾養護学校教諭の採用枠から若干名を採用する。県教委の法定雇用率は2.0%以上だが、実際の障害者雇用率は1.14%と下回っている。
愛知県は5月、県立松山高等技術専門校に職業訓練コース「販売実務科」を開講した。就職に結びつきやすいスーパーの商品包装や陳列、パソコン操作業務などの訓練などを1年間行う。ハローワークなどと連携し、訓練終了後の就職を支援する。
埼玉県は6月、障害者の在宅就労を支援するために、NPOと協働で障害者サポート事業として「首都圏テレワークセンター」を開設した。障害者向けのIT教室を週に数回開き、障害者はインターネットやメールなどから、ビデオ編集、コールセンター業務など付加価値の高い技能を身に付ける。一方で、入会金と年会費を払った会員企業に、技能の高い障害者を紹介するほか、雇用管理方法など在宅就労のノウハウを提供する。
千葉県は6月、2003年12月に開所した「千葉県障害者就業支援キャリアセンター」において、半年間で知的障害者ら17人の就職が決まったことを明らかにした。同センターは、職場に対応できない障害者の再訓練や職場適応を手助けする「ジョブコーチ」を企業へ派遣。ジョブコーチは障害者が職場に慣れるまでサポートするとともに、企業側にも障害者との接し方などをアドアイスし、障害者と企業の両面を支援する。また、ジョブコーチが効率よく働けるように調整するコーディネーターを1人配置している。(田中潤) |