北海道・北見市は6月11日、「性同一性障害」を持つ人の差別禁止を盛り込んだ「男女共同参画を推進するための条例」案を発表した。6月議会に提案し、9月議会での成立を目指す。「男女の性別にかかわらず、性同一性障がいをもつ人その他多様な性をもつ人の人権についても配慮しなければならない」と多様な性や中間的な性にまで言及した。
宮崎・都城市は2003年12月、性的少数者の人権擁護にまで踏み込んだ「男女共同参画社会づくり条例」を制定。「性別または性的指向にかかわらずすべての人の人権を尊重する」と明記した。同性愛者、両性愛者、自己の性別が受忍できない性同一性障害者ら、一般に男性や女性に定義づけられない人々の権利も擁護する。さらに、学校現場などに対し、共同参画の理念に配慮した教育を求めたのも特徴。
なお、大阪・堺市は2002年3月、千葉・市川市は2002年12月に、それぞれ性同一性障害者らに限定した「男女平等社会の形成の推進に関する条例」、「男女平等基本条例」を制定したが、都城市は「性的指向にかかわらず」としたことで、より幅広い人々を含めたとのこと。
福岡・八女市は3月、性同一性障害や同性愛などを理由に差別することを禁止する「男女共同参画のまちづくり条例」を制定した。条文で「すべての人が、性同一性障害を理由とする差別をしてはならない」とした。ただし、原案で「性的指向」と明記されていた文言が、同性、異性、両性のいずれかへの恋愛感情を含む趣旨に市民が反発したため「その他性に関する事項」に置き換えたが、この文言についても議会は「定義が不明瞭」として条文から削除した。
選挙や行政サービスなどでも性同一性障害者に配慮した取り組みが行われている。
横浜市、川崎市は7月の参議院選挙で、投票用紙引換券の男女の表記を削除する。また男女別の用紙の色分けも廃止する。ただし、総務省は男女別の投票結果報告を義務付けているので、入場券の性別欄は削除しても、実際には記号化などで性別確認は実施される。係員が本人確認するための選挙人名簿抄本にも性別の記載は残る。足利市や栃木・小山市でも同様の取り組みを行う。
また、富山・高岡市は6月、選挙の期日前投票の際に記入する宣誓書の性別欄を削除することを決めた。
神奈川・藤沢市は2003年11月の衆院選で、「投票所入場整理券」にあった性別欄の記載を削除した。そのほか、東京・世田谷区、豊島区などでも性別欄を削除した。静岡市では、性別表記を廃止し、選管職員だけが識別できる記号を採用。東京・江東区、墨田区、練馬区、千代田区、新宿区、中野区、千葉・市川市などでは性別を記号化した。
なお、2003年4月の統一地方選では、埼玉・新座市、草加市、東京・小金井市、逗子市などで性別欄を排除した。
神奈川・平塚市は4月から、市立図書館の登録カードや車いす移送車の貸し出し申込書など100件の申請書類の性別記載欄を削除した。また、6月からは、施行規則の改正が必要な市営住宅入居申込書など72件も削除した。
このほか、札幌市、北海道・北広島市、埼玉・久喜市、東京・練馬区、目黒区、府中市、小金井市、国立市、立川市、千歳市、千葉・市川市、秋田市、千葉・八千代市、新潟・長岡市、長野・松本市、兵庫・宝塚市、姫路市などで申請書など公文書の性別欄を削除している。(田中潤) |