福島県は6月7日、県立医大医学部助手を新たに15人採用して、地域医療支援担当教員(支援教員)として、へき地診療所に派遣することを決めた。派遣は7月以降になる見込み。県は2003年12月に、「へき地医療対策アクションプログラム」を策定し、1月には「へき地医療支援機構」を設置。市町村の要請を受け、福島県立医科大などと調整して医師確保に当たるため医師を公募したが、応募者がなかったため、暫定的に支援教員を派遣することにした。
和歌山県は6月19日、2005年春の研修医獲得のため「県医師臨床研修合同説明会」を開く予定。2004年度から、新人医師は専門分野の知識だけではなく、一般的な初期診療の知識も身につけるため、国家試験に合格後、医局には入らず、臨床研修病院で2年間の研修が必修となった。新人医師は、基本的に研修先の病院を自由に選べることができるので、県外に流失して、県内の研修医が不足する恐れが出ていた。都道府県単位での説明会の開催は珍しいとのこと。
そのほか、へき地医療に対する最近の自治体の取り組みを紹介する。
三重県は3月、へき地勤務をすれば貸与した資金の返還を免除する「医師修学資金等返還免除に関する条例」を制定した。大学生には1年目151万円、2年目以降6年目までは122万円を貸与、研修医には150万円を5年間貸与する。貸与期間の1.5倍の期間、県が定めたへき地の公立医療機関に勤務すれば返還を免除される。医師については、これら医療機関への転任時に200万円を貸与し、2年目以上勤務すれば返還を免除する。
岩手県は2004年度、市町村と共同で医師養成を目的とした基金を創設。10人程度の枠を大幅に超える23人の応募があった。基金は総額6億円とし、県と市町村が3億円ずつ負担。医学生を対象に基金から修学資金を貸し付け、卒業後に、県内の公立病院に一定期間の勤務を義務付ける。1人当たりの貸付額は毎月20万円。私立大の医学生には、入学一時金として760万円を上積みする。医師免許取得後は交付期間と同じ年数、県立や市町村立病院などに勤務すれば、返済が免除される。
島根県は2004年度から、大型病院と中小病院で交互に働いて経験を積んでもらう「専門医養成プログラム」を開始。全国から募った医師を県内各病院に配置し、2〜3年ごとに中小病院や診療所と、大病院に交互に配属させる。
宮城県では、東北大からへき地への医師派遣の方策として、東北大に提供する研究費用などの原資となる基金を、県と市町村が合同で設ける構想が浮上している。医師過剰の仙台市を除く市町村が毎年、人口1人当たり100円か200円を拠出し、県が同等額の2〜3億円を加えて基金を創設するというもの。大学側には研究や医師育成の費用として基金から資金が提供される一方、大学には医療法で定められた標準医師数に達しない「標欠病院」の解消に取り組んでもらうのが狙い。だが、地方財政再建促進特別措置法で自治体による国への寄付は原則禁止されている。また、自治体病院を持たない町村もあるため、拠出金の負担の在り方などについて市町村との合意形成も必要で課題は多いとのこと。(田中潤) |