香川・丸亀市は6月定例議会で、「中高層建築物の建築に関する条例」案を提出した。5階以上または高さ15m以上の建築物を建設する場合、「建設敷地内に標識を設置し、住民らに建設計画を周知するとともに市長にも届け出る」「住民に対して説明会を開く」などを明記する。建築主に建設計画を事前に公開してもらい、地元住民との関係を良好に保ち、景観保護にもつなげる。
広島市は5月31日、住民主導による都市計画を作成した。戦前からの閑静な低層住宅街である高須2丁目西地区(180世帯)の4.4haが対象。「ホテルやボウリング場など宿泊・娯楽施設の建設を認めず、飲食店などは2階までに制限」「建物の高さは12m(3〜4階建て程度)以下」「屋外広告は自分の店舗や事業所に限定」などで規制する。1999年に地区内に7階建てマンションの建設計画が持ち上がり、住民が「良い環境を守る会」を結成し、勉強会やアンケートや実施。マンション計画は中止になったが、それ以来、地区計画の作成作業を進めて、素案をまとめた。2002年3月末時点で、全国で3787件の地区計画があるが、高さ制限などを伴う住民主導の計画作成は大分・別府市や川崎市など9件とのこと。
そのほか、高さ制限を実施している自治体を紹介する。
東京都は1月、千代田、中央、港、新宿、渋谷区にまたがる地域(東西が隅田川と山手通りなどに挟まれ、南北は大久保通りと渋谷川などの間の地域)で、一定規模の建築や開発の際に、景観に配慮するよう求め、都への届け出を義務づける方針を決めた。高層ビル群については、まとまりのある輪郭を持つ景観を重視。建築物の配置や高さ、色彩、広告などにも配慮する。民間事業者だけでなく、公共事業にも配慮を求め、届け出の内容が不十分な場合には、指導、助言する。
東京・板橋区は2月、マンションなどビルの高層化により周辺住民と事業者との紛争が増えている状況を受けて、「中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例」を制定した。計画中の建築物が延べ面積1000uを超え、かつ高さが15mを超える場合は、日影の及ぶ範囲を含めた住民への説明会を開くことや、事業者が住民から建築計画などについて協議を求められた場合に、協議会を開くことを義務付ける。これらの説明会、協議会に建築主が原則出席することも義務づけ、建築工事や除却工事の着手前までに住民との工事協定を締結することを努力義務とした。
金沢市は3月、「地区計画等の区域内における建築物等の制限に関する条例」を制定した。建築基準法を根拠とする条例では同法の罰則規定が適用され、指導、是正措置命令のほか、罰金を科すことも可能となる。適用地域は、都市計画法に基づいて地区計画を定めている33区域。地区計画に準じ、住宅、工業用など建物の用途、建築物の高さのほか、道路から建築物の壁面までの距離(セットバック)や外壁、屋根の色などを対象とする。
佐賀・唐津市は2004年度に、城内地区の都市計画上の第1種住居地域(26ha)で建物を建てる場合、原則12mと15mの高さ制限区域を設定(勾配屋根の建物は3m超過可)する方針。城内地区は旧唐津城の武家屋敷があったところで、石垣や土塀などが一部残っている。53.9haのうち、すでに高さ10mの規制がかかっている第1種低層住居専用地域(16.9ha)、商業地域(6.9ha)などを除いた第1種住居地域でマンション計画などが相次いでいた。高さ12mの規制がかかるのは主に地区を東西に走る県道沿いの15haで、城の眺望を保つほか、観光ルートになっている。高さ15mはその南側11haで、商業地域に近いことからやや高くした。
地下室マンションの高さ制限を実施している自治体もある。
神奈川県は2003年9月定例会で、「風致地区条例」を改正。斜面地の建物建築の許可基準として、建物の土台の高低差を原則として6メートル以下と規定した。これまで風致地区では、建築基準法が準用され、それぞれの「地盤面」からの高さを3mごとに区切って規制をかけており、この基準内なら階段状に建物を建築することが可能だった。条例改正により、6m以下の斜面の利用に限られるため、階段状に建物を長く伸ばすのは難しくなり、最高でも建物の高さは19.5mが限度となる。独自の市条例を持つ横浜、川崎市を除き、県条例の対象となる風致地区は、鎌倉など湘南や三浦半島、湯河原など11市町(32地区)、1万1000ha。同様の条例を制定しているのは、静岡県、兵庫県、札幌、神戸市の2県2市。
横浜市は2月、「斜面地における地下室建築物の建築及び開発の制限等に関する条例」を制定した。6月に施行される。地下部分も含めた総階数を数えて、第1種高度地区(高さ10m以下)で5階以下、第2種高度地区(同12m以下)では6階以下しか建てられないようにした。
川崎市は6月定例市議会で、「斜面地建築物の建築の制限等に関する条例」案を提出した。第1種高度地区(高さ制限10m)では地上と地下を合わせた総階数を5階以下、第2種高度地区(同15m)では7階以下に制限するというもの。市長は開発業者に対し、必要に応じて工事を停止するよう命令や勧告を行うことができる。さらに、命令に従わない悪質な業者に対しては、「6月以下の懲役か50万円以下の罰金を科す」との罰則規定を設け、工事を完了した際に虚偽の申請を行った場合などには、「20万円以下の罰金」とする。
神奈川・横須賀市は6月定例市議会で、「斜面地建築物の構造の制限に関する条例」案を提出。第1種、第2種住居専用地域(高さ10m以下)は斜面地の底部から4階以下、第1種高度地区(同15m以下)では6階以下に建築を規制するというもの。違反した場合は、20万円以下の罰金を科す。(田中潤) |