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市町村合併:5月実施の住民投票 小差の結果も

2004/06/01

 秋田・比内町は5月23日、大館市、田代町との合併の是非を問う住民投票を実施(投票率68.23%)。「賛成」が3380票と「反対」の3334票をわずかに上回り、町長は5月28日、大館市、田代町が設置している法定協に参加する方針を示した。同町では2003年に実施したアンケートで「合併反対」が50.14%となり、2003年12月に大館市、田代町、小坂町との任意協から離脱。2004年3月の町長選では、自立に慎重な新町長が誕生した。町長は住民投票前、町主催の金婚式や成人式の廃止まで打ち出した厳しい自立計画を町民に提示。その上で、町民懇談会などを通して合併推進を訴えてきた。

 鹿児島・大崎町は5月16日、「曽於南部地区」(松山町、大崎町、有明町、志布志町)での合併か、町「単独」か、住民の意思を問う住民投票を実施(72.43%)。「単独」が4616票と「曽於南部地区」の4597票を19票上回った。町議会は5月24日、曽於南部法定協から離脱する規約変更議案を可決、6月定例会の本会議でも可決される見通し。同町は1月に、同法定協から離脱を求める住民陳情を受け、協議会からの離脱を表明。住民投票の動きが出てきたため規約改正議案は継続審査となり、正式な離脱には至っていなかった。

 高知・佐賀町は5月16日、中村市、大方町、西土佐村との合併の是非を問う住民投票を実施(73.60%)。「反対」が1272票と「賛成」の1253票を小差で上回った。町長は5月17日、3市町村長に対し合併協定の調印に加わらないことを伝え、中村グループの法定協から事実上離脱。5月29日には、中村市、大方、佐賀町、西土佐村による法定協が解散した。

 鹿児島・祁答院町は5月16日、薩摩郡東部地区(宮之城町、鶴田町、薩摩町、入来町、祁答院町)の法定協設置の是非を問う住民投票を実施(84.25%)。「賛成」1570票、「反対」1590票の結果となった。
 入来町でも同日、同地区の法定協設置の是非を問う住民投票を実施(64.92%)。「賛成」1024票、「反対」2243票となった。
 両町で反対票が有効投票の過半数を占めたため、5町での法定協設置はなくなった。両町は参加している川薩地区法定協(川内市、樋脇町、入来町、東郷町、祁答院町、里村、上甑村、下甑村、鹿島村)で、10月の新市誕生に向けて準備している。

 沖縄・竹富町は5月16日、石垣市、与那国町との合併の賛否を問う住民投票を実施(74.38%)。「合併する」が1132票、「合併しない」が1032票となった。同町は石垣市、与那国町との法定協で合併論議を進めてきたが、町長は合併に反対の姿勢で、町役場移転を最優先し、3月議会で移転予算案を可決していた。町長は当初「結果を尊重する」と表明したが、自らの予想に反した結果に判断を先送りし、8月実施の町長選挙への影響は必死とみられている。また10月には、与那国町の合併の意思を問う住民投票が実施される予定となっている。

 岩手・野田村は5月23日、普代村との合併の賛否を問う住民投票を実施(78.92%)。「反対」が1734票となり「賛成」の1518票を上回った。2003年に実施した住民アンケート調査では合併支持者の47%が普代村を相手に選び、両村は過去6回の任意協で合併形式を「新設」(対等)にするなど主要項目で合意していた。この結果を受けて、両村による任意協は6月上旬に解散する予定。

 5月に実施された住民投票では小差で決まるケースがいくつか見られた。以下、そのほかに実施された住民投票を紹介する。

 千葉・四街道市は5月16日、千葉市への編入合併の賛否を問う住民投票を実施(65.22%)。「反対」が2万3955票と「賛成」の1万9843票を上回った。2003年2月に設置した両市の法定協は解散する見通し。四街道市では2000年10月、千葉市との合併推進を掲げた市長が初当選。2003年2月には、法定協設置の是非を問う住民投票を実施し、「賛成」が多数の結果となった。さらに、2004年2月の市議選で、少数だった賛成派が得票総数で反対派を上回り、議席数でも12人ずつの同数となっていた。

 群馬・吉井町は5月23日、合併の賛否と「多野藤岡地域(藤岡市、鬼石町、吉井町)」か「高崎地域(高崎市、榛名町、箕郷町、群馬町、新町、吉井町、倉渕村)」かの枠組みを問う住民投票を実施(63.96%)。「合併賛成」が8850票、「合併反対」が4017票で、枠組は「高崎地域」が6848票、「多野藤岡地域」が4567票となった。ただし、枠組みの選択で白紙の人が1500人を上回り、「多野藤岡地域」の合計は「高崎地域」と変わらない。同町はもともと、高崎地域任意協と、多野藤岡地域任意協の両方に参加しており、2003年に実施した町民アンケートでは、合併に賛成する住民のうち、高崎市を希望する人が83.5%と圧倒していた。藤岡市側は1月、「対等合併」を打ち出し、つなぎとめに力を注いでいたが、今回の住民投票の結果を受けて、吉井町町は5月24日、3市町で構成してきた多野藤岡任意協から離脱する意向を示した。高崎市など7市町村が合併すれば、人口36万人の大規模市が誕生することになる。
 群馬・新町も同日、高崎地域との合併の賛否を問う住民投票を実施(64.74%)。「賛成」3564票、「反対」2751票となり、町の合併方針が追認された。

 熊本・大津町は5月23日、菊陽町、合志町、西合志町との合併の賛否を問う住民投票を実施(57.66%)。「賛成」が6345票と「反対」の5985票を上回った。4町は2003年8月に、菊池南部4町法定協を設置している。

 長崎・世知原町は5月23日、吉井町との法定協設置の是非を問う住民投票を実施(74.20%)。「賛成」が775票、「反対」が1689票となり、2町による法定協設置はなくなった。2町はすでに佐世保市との法定協を設置しており、6月にも3市町による合併調印式が行われる見通し。

 鳥取・江府町は5月23日、日野町との合併の是非を問う住民投票を実施(82.01%)。「賛成」が643票、「反対」が2017票となった。この結果により、日野町との法定協解散が決まった。江府町は2003年8月、日野町と合併協を設置し、11回の協議を重ねてきたが、2004年3月に、住民団体から住民投票の実施を要望された。

 愛知・渥美町は5月23日、田原市への編入合併を問う住民投票を実施(75.04%)。「賛成」が1万1133票となり、「反対」の1945票を大きく上回った。同町は5月24日、田原市に合併協議を申入れた。田原市は前向きな姿勢をみせている。同町は旧田原町、赤羽根町と対等合併協議を進めていたが、2002年7月に新市名などを巡って決裂。渥美を除く2町は2003年8月に合併し、田原市が誕生している。

 岩手・大野村は5月30日、合併の相手先を問う住民投票を実施(78.14%)。「種市町」2408票「久慈市」1689票となり、同村は種市町と任意協を設置する予定。種市町との任意協を設立するため、村が提出した予算案を議会が否決。それに反対した住民団体が今回、住民投票を求めた。

 長崎・西彼町は5月30日、西彼北部地域(西彼町、西海町、大島町、崎戸町、大瀬戸町)による合併の是非を問う住民投票を実施(71.96%)。「賛成」が3281票、「反対」が2108票となり、2月に実施された町民アンケートに続き、「合併賛成」の民意が示された。ただし、議会は反対派が多数を占めるため、今後の成り行きが注目される。

 議会の解散を問う住民投票も実施されている。山口・周南市は5月16日、住民投票を実施(46.55%)。「賛成」が5万2120票と圧倒的多数で「反対」の5504票を上回り、議会は即日解散した。6月20日に、出直し選挙が実施され、地方自治法に基づく本来の議員定数(34)で行われる。同市は2003年4月に、徳山市、新南陽市、熊毛町、鹿野町が合併して誕生。在任特例で4市町の78議員(現在は64議員)が、そのまま市議となった。報酬は当初、旧市町時代のままだったが、最高の旧徳山市(月額44万5000円)と最低の旧鹿野町(同18万9000円)で格差が2.4倍となっていたため、2003年12月、旧徳山市の水準を10%カットした40万500円の新報酬に統一する案が可決され、2004年4月から実施されている。新報酬に統一することで、年間の報酬総額は合併当初より9000万円増加した。2004年3月には、市議会に自主解散決議案が提出されたが、「賛成」39、「反対」38と「賛成」が5分の4に達せず、不成立となり、賛成議員のうち13人が辞表を提出。2004年4月、住民団体が議会解散を本請求した。(田中潤)