島根・安来市では5月21日、市農業委員会がドジョウ養殖池となっている市内休耕田について、所有者に農地転用の手続きを指導する方針を示した。市は2003年度から、ドジョウ養殖に取り組み、29戸の農家が4.1haの休耕田で養殖しているが、そのうち2haでは野鳥の捕食防止のため、重機を使って水田を浚渫、水深を40cmから60cmにした。島根県は農地法で「重機を使って深く掘った水田は水田の形を変えたことになり、農地と認められない」として、2003年7月から市側に転用手続きを指導。市としては、転用すると農地に戻すことができず、今後水田として活用できなくなるので、「養殖池は養魚水田で、農地だ」と反論していた。
福島・いわき市でも、大規模なガラス温室トマト栽培施設の建設計画をめぐって、福島県が市農業委員会に農地転用を求めており、意見が対立している。市農業委員会は2月、農地のままで賃借を認める農地法3条申請を許可。養液を浸したロックウール(鉱物繊維)を用いて、トマトを生育させる温室栽培を行うもので、「農業の範疇で、用地は農地性がある」とした。だが、県は農地法5条に基づき「盛り土をした上で行われる養液栽培の形式では耕作地といえず転用届け出が必要」として、市農業委員会に再考を求めていたが、市農業委員会は「問題なし」と回答。そのため、県は農地借用許可をいったん取り消し、転用届け出から手続きをやり直すように地方自治法に基づく是正指示を行った。県は5月28日までに、市農業委員会に対して対応方針を求めている。農地転用の手続きは、時間がかかる上、固定資産税など高い税金が課せられるため、地権者は反発している。
なお、山形県は2004年度から、県の事務権限を人口5万人以上の市(山形市、米沢市、鶴岡市、酒田市、天童市)に移譲する「ゆとり都山形分権推進都市」制度を創設。2ha以下の農地転用許可や土地区画整理事業の施行認可など、171の事務権限を5市に移譲する。これにより、農地転用手続きに6週間かかっていたのを最短で3週間に短縮することなどができるようになる。(田中潤) |