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滞納に悩む自治体 徴税強化へ

2004/04/21

 群馬・安中市は5月に、「滞納市税特別徴収」を実施する。助役と収入役が徴収人員に加わり、各部の部課長、税務課職員ら計42人で、滞納者の自宅を訪問する。市の税滞納累積額は3月末時点で、19億8300万円と2004年度一般会計当初予算総額の12.4%となっている。

 高知・宿毛市は4〜5月にかけて、保育所や消防署、一部事務組合などを除く235人の一般職員のうち、在職10年以上の175人でプロジェクトチームを編成して、滞納者を戸別訪問する。市税収納率は2002年度が過去最低の95.2%、累積滞納額は5億3000万円と、収納率は84%となっている。

 三位一体改革や不況などが原因で、多くの自治体では深刻な財政難に陥っており、税金の徴収を強化する対策を実施している。

 高知・須崎市、中土佐町、窪川町、梼原町、大正町、大野見村、東津野村、葉山村、十和村の高幡広域市町村圏事務組合と、佐川町と越知町の11市町村は4月16日、滞納税を自治体に代わって徴収する「租税債権管理機構」を発足した。財産の差し押さえなど主に法的手段を使い、滞納された市町村税などの回収にあたる。11市町村の市町村税と国保税、個人県民税の滞納額は2002年度末で、計13億1000万円で、県、須崎市などの職員5人と弁護士らで組織する。2004年度は、11市町村から滞納者300人分、3億円をめどに受託、その25%の7500万円の徴収を目指す。

 北海道・松前町、福島町、知内町、木古内町、上磯町、大野町、七飯町、鹿部町、砂原町、森町、八雲町、長万部町の渡島管内12町は4月1日、「渡島町税滞納整理機構」を発足した。町単独で処理が難しい滞納案件について、差し押さえ、公売などの強制的徴収に取り組み、徴税率アップを目指す。渡島支庁と各町納税課などから派遣された職員5人が滞納の住民税や固定資産税の回収に当たる。12町が負担金5900万円を分担。初年度は悪質な滞納案件のうち、300件の処理を見込む。

 三重県の全66市町村は4月1日、共同で滞納した地方税回収する「三重地方税管理回収機構」を設立した。市町村単独での徴収が困難な滞納案件を引き受け、催促効果がない場合は滞納者の財産差し押さえなどの措置を取る。都道府県で同様の取り組みを実施しているのは、茨城県のみ。

 福井・美浜町は3月、町税の徴収促進を図るため、滞納者の氏名などの公表制度化を盛り込んだ特別措置の「町税等の滞納に対する特別措置に関する条例」を制定した。行政への不満を理由に納税を拒否したり、職員の訪問を受けても分割納税の誠意を示さないなど、誠実性を欠く滞納者が対象。行政サービスの制限や財産の差し押さえなど強制手続きを行ってもなお、誠意を欠く滞納者を審査会に諮り公表を決定する。4月から4ヵ月間を周知期間とし、8月から実施する。滞納者氏名公表の条例化については、神奈川・小田原市、静岡・島田市、福岡・松岡町に続き4例目。

 横浜市は2004年度から、コンビニでの市税収納を実施。2003年4月に地方自治法施行令が改正され、地方税収納事務の委託が指定金融機関や収納代理金融機関以外に拡大されたのを受けてのこと。取り扱うのは、「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」「固定資産税(償却資産)」「軽自動車税」「市民税・県民税(普通徴収分)」の4種類。2002年度末の市税納付率は94.1%。コンビニ収納の実施で、2006年度末に95.5%を目指す。地方行財政調査会の調査によると、コンビニ納税については、神奈川県、福岡県、北海道・帯広市、埼玉・草加市、川崎市、神奈川・茅ヶ崎市、愛知・知多市、兵庫・寝屋川市が2004年度中に実施を予定しているとのこと。

 神奈川・藤沢市は2004年度から、外国人納税者の滞納徴収対策として、外国人納税相談員を配置する。ポルトガル語やスペイン語などに精通するブラジル人を非常勤職員として雇用。週1回、外国人への納税相談や催促業務を行わせる。2003年7月時点で、外国人の滞納税額は564人で計6400万円となっている。

 また、東京都は4月16日、7月中旬からヤフーのインターネット・オークションを利用して、滞納者から差し押さえた絵画などの動産の公売を実施すると発表した。インターネット公売に参加するには、公売保証金(見積もり価格の10分の1)が必要。2005年度以降、公売対象を不動産に広げることも検討している。(田中潤)


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