長野県は4月8日、県税の1%を納税者の選択によって公益団体の支援に充てる「使途指定制度」の導入について、NPO関係者の意見を聞く懇話会を開いた。NPOなどを県が登録し、納税者が支援したい団体を指定する(指定しないこともできる)。納税された額の1%を県が予算化し、納税者がそれぞれ指定した団体へ支出。団体側は県に支出内容を報告し、県は納税者側に公表するというもの。対象とする県税は、個人県民税(2002年度の税収額は330億円)、自動車税(同376億円)が候補にあがっている。
自治体がNPOを支援する取り組みは多数あるが、最近の取り組みの一部を紹介する。
奈良県は3月、「ボランティア・NPO活動推進基金条例」を制定し、2004年度に、県内のNPO、ボランティア活性化を目指して、行政との協働を推進する「ボランティア・NPO活動推進基金」を設置。基金には5年間で3000万円を計上(初年度分は300万円)。NPOから公募テーマについて提案をしてもらい、県とNPOとの協働による効果が期待できるものに助成する。
香川県は2004年度、個別のNPOの運営を改善指導する@NPOマネジメント強化事業やA県民活動フェスタ開催など実施する。@は中間支援機能をもつNPOを担い手に想定し、指導員の派遣により個々のNPOの運営能力向上を支援する。AはNPOやボランティア団体を一堂に集め、情報交換や交流促進の場とする。
札幌市は2004年度から、中小・零細企業やNPOへの融資が円滑に行われるように、市が金融機関や信用保証協会への損失補償や保証料補給などを行う「元気基金事業」を実施する。初年度事業費は23億円で、これにより初年度分として222億円の融資が可能になるとのこと。事業は、@つなぎ資金を無担保・無保証人で融資する「小規模事業短期資金」A事業の将来性を評価して融資する「経営革新支援資金」B経営再建中の運転資金を融資する「企業再生支援資金」CNPOなどが事業等に必要な融資を円滑に受けられるよう支援する「さっぽろ元気NPOサポ−トローン」Dベンチャー企業を育成するため総合的に支援する「ベンチャー支援事業」など。
富山県は2004年度から、NPOの法人化の手続きについて事前の説明や事務の効率化などで、面倒な申請手続きを短縮して、手続き期間を従来の4ヵ月から3ヵ月以下に短縮、ボランティアグループなどの組織化をバックアップする法人設立の相談窓口を設置するなど、NPOを後押しする。NPOと行政の仲介役となるコーディネーターも育成する。
宮城県は2004年度、NPOの自立的な活動を支援する「みやぎNPO夢ファンド」を創設。資金は2003年度に1500万円、2004〜2010年度に500万円ずつを県から拠出し、県民や企業など民間から寄付金を募る。2004年度から10年間、毎年500万円ずつと寄付分を支出し、事業に充てる。
東京・三鷹市は2004年度、NPOが同市を本拠に事業を展開している多摩中央信用金庫の「NPO事業支援ローン」を利用した場合、利子の一部、0.6%を補給する制度を新設。2004年度予算案に13件分、39万円を計上した。同信金のローンは、NPO法人の運転・設備資金として1法人当たり最長5年間、500万円を限度に融資する。年利は1〜3%。
東京・杉並区は2002年8月から、NPOに個人が寄付しても現行税制のもとでは控除の対象とならないが、区などに寄付すれば控除の対象となることに着目し、NPO支援基金を設置。区に基金を設けてそこへの寄付を募り、それをNPOに流すというもの。寄付に当たりNPOの指定もできる。2002年度は14件で379万9492円、2003年度は18件で222万8204円となった。
横浜市は2000年度から、NPOなどが組織的かつ継続的に活動を行えるよう、事務所経費を助成する市民活動推進助成金制度を実施している。団体の事務所として賃貸借契約をしている場合は事務所借上費(家賃)の一部を、また、自宅の一部を団体の事務スペースとして使用している場合は光熱水費の一部を助成するというもの。2000年度(半年分)は65件で630万6417円。2001年度は63件で1195万6400円。2002年度は69件で1466万7432円。
地域再生計画でNPO支援の提案を行った自治体もある。
札幌市は1月の地域再生計画で、商店街などが発行するプリペイドカードやポイントカードの余りをNPOなどに寄付できるようにする「交流と創造の空間・活動づくり」を提案。@届出・登録義務及び前払保全措置を緩和するA発行者が異なる前払い式証票の互換を可能とするB前払式証票と前払式証票とは異なる販売促進割引ポイントなどの価値バリューとの互換を可能とするCNPOへ寄附した前払式証票や電子マネーの換金」などを求めた。金融庁は、AとBについては現行法で対応可能、@については、「物品・サービス給付者以外の者が発行する第3者発行型前払式証票においては、多数の加盟店を擁する場合など万一不測の事態が生じればその損害は広範にわたる」ため、Cについては、「発行者が一般的な換金に応じるような前払式証票の発行は、預金類似の行為」であるため、対応不可とした。
山形県は1月の地域再生計画で、「やまがたニュービジネス創生」を提案。商店街組合などにしか認められていない空き店舗対策関連の補助金をNPOも受けられるよう求めた。経済産業省は、「コミュニティ施設活用商店街活性化事業によりりNPO法人が補助事業の実施主体となることが可能」とした。
富山県は1月の地域再生計画で、TMOになれる主体としてNPO法人を追加する「とやま産業活性化プロジェクト」を提案。これを受けて、経済産業省は全国的に対応することを決めた。(田中潤)
【関連記事】
「杉並区のNPO支援基金、2団体に交付金」(2002/12/27)
「杉並区のNPO支援基金、予想以上の成績」(2002/12/02)
|