栃木県は4月12日、県内にあるグループホームが4年間で7倍に増加したことを明らかにした。グループホームは、介護保険が導入された2000年度に7ヵ所、2001年度に8ヵ所、2002年度に14ヵ所、2003年度に15ヵ所と年々急増し、これまでに計52ヵ所が指定された。このような急増に対して、県は2003年1月、独自の要綱を策定。市町村が公募し、審査委員会が選んだ事業者だけを県が指定する方式を実施している。
グループホームは全国的に急増している。厚労省によると、2000年末に790ヵ所だったのが、2004年2月末時点で4442ヵ所と5倍以上になっているとのこと。グループホームや有料老人ホームの介護費用は、ホームのある自治体が負担する仕組みとなっており、域外から高齢者が転入し、地元住民の保険料負担が増えることが問題となっている。
東京・稲城市、青梅市、昭島市、町田市、国分寺市、国立市、多摩市、羽村市、瑞穂町、日の出町、奥多摩町、檜原村、神奈川・秦野市、埼玉・戸田市、鶴ヶ島市は12月、構造改革特区の第4次提案で、「介護のまちづくり特区」を提案。グループホームや有料老人ホームなどの指定について、各市町村の介護保険事業計画を上限とし、それを超える場合は、都道府県が指定をしないことを求めた。これに対して厚労省は、「市町村が民間事業者の参入を制限して供給調整を行うことは」「利用者の多様な選択という介護保険の趣旨を損ない」「サービスの質に関する競争を阻害する」として、「制度全般の議論が必要」なため、「C:特区として対応不可」とした。
こうしたなかで、厚労省は3月、グループホームや有料老人ホームの介護費用について、他市町村から転入してきた入居者の費用を元の居住地の市町村が負担する「住所地特例」を、2005年に国会提出予定の介護保険制度改正法案に盛り込む方針を明らかにした。ちなみに、構造改革特区で千葉県と沖縄・名護市が、地域再生計画で熊本県と兵庫県、福島・石川町が住所地特例の適用をそれぞれ提案していた。
グループホーム急増を受けて、規制を実施する自治体もある。
長崎県は4月から、指定申請の前に保険者との事前協議を事業者に義務づける事前協議制度を創設。保険者から異論が出た場合は再協議を指示する。また、県内の全グループホームを実地指導し監視態勢を強化していく。
佐賀市など2市16町村で介護保険を運営する佐賀中部広域連合は2004年度から、グループホームの設置前に審査基準を設けて事前審査を開始。審査基準は、痴呆高齢者への理解や設置場所の地域バランスなどを設ける。事前協議申請を年1回、5月末までに受付け、審査委員会が現地調査、事業者の意欲などをもとに判断する。不適格と判断した場合、県への意見書に反映させる。県は設置要件を満たせば指定する仕組みとなっているが、独自チェックで良質のサービス確保を目指す。
朝日新聞の都道府県・政令指定都市調査によると、3月時点で、青森、栃木、群馬、兵庫、山口、香川、熊本、沖縄の8県と、川崎市、神戸市、福岡市の3政令市でグループホームの整備抑制や地域的な偏りを調整する規制を実施しているとのこと。また、茨城、三重、京都、長崎の4府県と、仙台、京都の2市は規制を検討中。
逆に、用地・建物の確保が難しいため、グループホームが少ない都市部などではグループホーム設置を支援している。
東京都では4月から、グループホームを増やすため、福祉局内に「グループホーム設置促進事業本部」を設置。都ではグループホームの整備が計画通りに進んでおらず、痴呆性高齢者のグループホームは、2003年度中に1800人分の計画に対し、整備されたのは1468人分。知的障害者のグループホームも、2003年度中に1565人分の予定が、1410人分にとどまっている。賃貸料の高さが原因と見られている。本部では、これまで一部の職員のみが行っていた現場での支援、調整を局を挙げて組織的に行う。また、事業者に対する整備費補助制度なども拡充して、整備計画の一部を前倒し。痴ほう性グループホームを2006年度までに4000人分、知的障害者グループホームを2005年度までに2315人分整備する。
長野市は2004年度から、NPOや社会福祉法人が運営するグループホームに知的障害者グループホームに対する支援費に相当する額(1人当たり月13万円)を支給する。また、国の基準に上乗せして介護人や看護師を配置した場合も、人件費の一部を上乗せして補助する。2004年度は4人分を見込んでいる。(田中潤)
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