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自治体が「ひきこもり」対策へ

2004/04/09

 広島県は2004年度から、県内8ヵ所の保健所・分室で、精神科医など専門家が相談に応じるひきこもり専門相談をそれぞれ年6回程度実施する。家族の負担や孤立を軽くするため、問題への対応力を向上させる家族教室や、家庭内暴力など対応が困難なケースについて保健所を中心に自治体、学校、医療機関、警察によるケース検討会も各地域で開く。市町村や地域、各機関を巻き込んだ支援体制を目指す。

 和歌山県は4月から、保健所や精神保健福祉センターなど計9ヵ所に、ひきこもり専門の相談窓口を設置し、NPOと協力して家庭訪問事業、居場所提供などのひきこもり対策に取り組む。ひきこもりの支援活動を行っているNPO2団体を社会参加支援センターに指定し、センターからかつてひきこもりを経験し克服したスタッフらを派遣してもらい、担当職員と一緒に本人や家族の相談を受ける。家庭訪問もスタッフが同行する。また、NPOが持っている作業所で、ひきこもりの人に食品の袋詰めなど軽作業を経験してもらい、社会復帰を手助けする。2004年度当初予算に「引きこもり社会参加促進事業」として650万円を計上した。

 静岡県総合学習センターは2月、インターネットを利用して学習を支援する「あすなろ学習室」を始めた。不登校などの児童・生徒も視野に入れる。自ら学べる学習機会の提供を目標に、学ぶ側の立場に立った内容にしたいとセンター職員らの手作りで運営。基礎から発展的な内容まで盛り込んだ学習教材をインターネットで公開する。教科は英語、算数・数学、理科の3分野。

 このように行政が「ひきこもり」対策を担うケースも出てきたが、構造改革特区で「ひきこもり」「不登校」対策が認定された自治体もある。

 秋田県は3月、「スペース・イオ学習特区」が認定された。不登校の児童生徒は適応指導教室や民間の一部フリースクールの対面型指導に限り学校で出席扱いとなっていたが、自宅でインターネットなどの学習ができたと確認できれば、学校に出席したのと同じ扱いができる「IT等の活用による不登校児童生徒の学習機会の拡大」として規制緩和される。2005年4月開設予定の教育・福祉複合ビルに、「ひきこもり」などを対象とした「スペース・イオ」を設置。専門指導員や臨床心理士等を配置し、相談・指導に当たる。

 奈良・大和郡山市は8月、「不登校児童生徒支援教育特区」が認定され、「IT等の活用による不登校児童生徒の学習機会拡大」に加えて、「不登校児童生徒対象学校設置に係る教育課程弾力化」「市町村負担教職員任用の容認」が認められた。「ひきこもり」の不登校児童生徒を対象とした学科指導教室「ASU(あゆみスクエアユニバース)」を開設するというもので、学生を「学習チューター」として派遣し、学習指導を補助する。奈良教育大学と提携し、教員免許者や教員志望の学生を派遣してもらう。小学校は在籍児童1人につき1人、中学校は各教科1人で10人程度を予定。また、「ASU」にも通学できない「ひきこもり」の児童生徒を対象に、インターネットを活用して同教室に設置されたサーバー内の学習教材で学ぶ「ASU Web School」も開設。臨床心理を学ぶ大学院生が「学びのパートナー」として、家庭を訪問して対面指導や機器操作指導を行う。システムはソフト開発会社が700万円で開発したもので、同市は1年間、無償で借り受ける。

 ほかにも、岐阜・多治見市や福島・会津若松市、岐阜・可児市、大垣市などで「IT等の活用による不登校児童生徒の学習機会拡大」が、東京・八王子、京都市、岐阜市、神奈川・藤野町では、学習指導要領に基づかない授業ができるよう「不登校児童生徒対象学校設置に係る教育課程弾力化」が認められた。(田中潤)