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兵庫県 徴税事務で住基ネット利用へ

2004/03/24

 兵庫県は3月25日、県税徴収で納税者の住所調査に住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)を利用する「本人確認情報の提供、利用等に関する条例」を制定した。7月から施行される。個人事業税や自動車税、不動産取得税の納税者の住居確認、被爆者健康手帳の交付、選挙の立候補届、用地取得時の相手先の確認など31事務で住基ネットを利用するというもの。行政サービスの向上と事務簡素化が目的。転居先不明で返送される課税通知は年間6万件もあるとのことで、これまでは職員が市役所や町役場に出向いて住所を調べていた。

 住基カードを利用する例は増えてきているが、それでも発行枚数は低迷。総務省は2003年12月、2003年7月時点で300万枚を見込んでいた住基カードの発行枚数が、初年度(7ヵ月間)で84万枚程度にとどまることを明らかにした。また、同省は普及を促すため、特別交付税で1枚発行につき1000円を財政支援している。

 さらに、総務省は2004年度から、地域通貨に住基カードを利用できるシステムを開発、実証実験を始める。1月に募集した地域再生構想で、北海道・深川市、千葉・市川市、新潟・新井市、北九州市が住基カードを利用した地域通貨の導入を求め、2月には地域再生本部が「地域通貨モデルシステムの導入」を決めた。このシステムは、1月から開始した住基カードを通じてインターネット上で本人確認ができる公的個人認証サービスを活用。ボランティア活動などで貯めた地域通貨のポイント増減を住基カードに記録し、自治体が利用者数や流通状況を把握しやすい環境を整え、商店街振興や行政サービスの一環として地域通貨を発行しやすくする。2004年度は北九州市や千葉・市川市など約10の自治体から2〜3ヵ所選び、5億円をかけて実験する。2005年度以降は、開発したシステムを自治体に無料開放し、端末導入費用などは特別交付税で支援する予定。

 そのほか、住基カードを利用した自治体の取り組みを紹介する。

 東京・荒川区は2004年度から、住基カードに電子マネーの機能を加え、区立荒川遊園の入園料や乗り物料金、飲食代金を支払えるサービスを導入する予定。カードに現金をチャージできる端末2台を園内に設置する。事業費は2004年度で5000万円。将来は、区内スポーツ施設や商店街での住基カードによる支払いも検討する。

 宮崎市は1月、地域再生構想に「住基カードを利用した電子投票システム構築事業」を提出したが、2月の地域再生本部の決定には「本人確認や二重投票の防止の問題、投票内容の改ざんの恐れもあるので実施は困難」(総務省)として盛り込まれなかった。住基カードを持つ有権者は市内のどの投票所でも住基カードを使って本人確認を受け、電子投票機で投票し、投票データはオンラインで投票所から開票所に転送するというもの。ネットワークによる投票データ送信などを禁じている電磁気記録投票法、投票所での選挙人名簿での本人確認を盛り込んでいる公職選挙法などの法改正が必要とされる。
 2002年4月に電磁気記録投票法が施行され、これまでに岡山・新見市や広島市など8自治体で電子投票を実施。これは、入場券を持ってきた有権者を選挙人名簿で確認し、電子投票機で投票し、投票終了後は投票データを光磁気ディスク(MO)などに保存し、開票所に運んで集計するものであるため、市の構想が実現すれば、データ運搬の時間短縮などメリットが大きいとしていた。(田中潤)


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