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東根市、市役所の窓口業務をNPOに委託へ

2004/01/26

 山形・東根市は1月、2005年度から市役所窓口業務の一部をNPOに委託する方針を固めた。住民票や印鑑証明、戸籍の写しの交付など機械や正職員が押印した書類の交付から始める。納税証明書の発行など税務課の業務委託も検討中。ただし、市長公印の押印など公務員の守秘義務に触れる業務についての民間委託は地方自治法上、認められていない。市は構造改革特区で申請することも検討したが、特区担当者との協議の結果、公印押印は公務員に限定するとの法務省の見解が示されたため断念。法的に可能な業務から民間委託することとなった。今後も、転出入届や死亡届など、住民基本台帳や戸籍の作成など民間委託の難しい業務については規制緩和を働きかけていく方針。

 市役所の窓口業務委託については、愛知・高浜市でも実施されている。同市は1995年に、市の全額出資(5000万円)で、市役所業務のアウトソーシング先として「高浜市総合サービス株式会社」を設立。各部局が毎年予算策定時に委託可能な業務を洗い出し、公務員以外でも対応可能な業務についてはアウトソーシングを積極的に推進。市民、税務、水道の各課の窓口業務や公共施設の管理など44業務を委託している。2003年度委託費は3億6424万円で、人件費だけで3億6800万円節減できたとのこと。このアウトソーシングによって、同じ事業を半額で実現したことになる。同社も正社員は3割でほとんどが臨時社員。地元企業経営者や元市助役が中心の役員は無報酬となっている。

 埼玉・志木市は2003年8月から、「行政パートナー」制度を導入。総合窓口案内や郷土資料館管理運営などが対象業務で、職員に代わって市の業務を担当する有給ボランティアを採用した。

 地域再生構想や構造改革特区でも窓口業務の民間委託に関する提案がなされている。

 茨城・取手市は1月、地域再生構想で「市民とのパートナーシップによる地域協働社会の構築」を提案。「行政パートナーに対して、窓口業務等を広く担わせることを可能とすることで、広く住民が行政に関わり、理解を深めることで地域をともに築く意識を醸成し、さらに、効率的で柔軟な行政への転換を図る」というもの。地方公務員法で任期が1年となっている臨時職員について1年超の任用を求めることや、職員以外でも条例で定めた資格要件を満たすものに対して戸籍事務を取り扱えることなどを提案した。(なお志木市は2003年11月、第3回特区認定で臨時職員の1年超の任用が認められた。)

 東京・三鷹市は、構造改革特区の第2次提案で「情報技術活用・活力創出特区」を提案。本庁舎以外で行っている市民課窓口業務のうち戸籍謄抄本の交付事務を民間委託できるように求めるというもの。法務省は、この提案は「全国的な対応を求められるものであり」「知り得た情報を受託者の他事業の目的に利用しないように、罰則規定を含む規則を定めること」が条件とされるが、「条例による規定を全国一律に義務づけることは困難」であるため、「実現は難しい」とした。

 名古屋・多治見市は、第2、3、4次提案で「郵政官署による市町村事務受託特別区域」を提案。郵政官署で取り扱いのできる事務を、戸籍法に規定のある戸籍届、死産届の受理、埋火葬許可証の交付など57事務に拡大することを求めるというもの。総務省は、プライバシーの保護などについて精査し、「公権力の行使に該当する事務については地方公共団体以外の者に取り扱わせることの是非など多岐にわたる事項を検討する必要があり」、関係省庁や日本郵政公社など「多数にわたる関係者との調整が必要」なため「特区として対応不可」としている。これに対して、市はプライバシー保護について「委託する事務についての事務処理マニュアルを整備して、必要な研修を行う」など反論している。(田中潤)