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地域再生構想、625件の提案集まる

2004/01/19

 政府は1月15日、地域経済の活性化を目指す「地域再生構想」の提案募集を締め切った。金子地域再生担当相は翌16日、約290自治体(民間事業者などを含めると約380)が提出したことを明らかにした。複数提出できるので、合計で625件の構想が寄せられたとのこと。地域再生構想は、構造改革特区の考え方を発展したもので、規制緩和だけでなく、権限委譲や補助金要件の緩和、各省庁による支援施策の連携・集中などを求めることができる。ただし、新たな財政措置はない。「地方軽視」と批判されている小泉政権の苦肉の策といわれているが、地域間競争により地方活性化を図る第1歩ともいえる。(その後19日の政府発表によると、28道府県を含む299自治体や、企業などの民間93主体が提出した地域再生構想は計673に達したとのこと。)

 以下、地方紙に掲載された構想を紹介する。

【青森県】
*「国際線を核とした地域活性化構想」
 青森空港の税関・出入国管理・検疫を県職員が応援できるようにすることや、韓国人観光客のビザ免除などを求める。

*「環境・エネルギー産業フロンティア構想」
 バイオマスを使った整備事業の補助対象実施主体を民間企業にまで拡大すること、電力の特定供給に係る許可権限の都道府県への移譲などを求める。

*「次世代OSを活用した地域産業の振興」
 企業の技術信頼度を認定する制度を設けることを求める。

【栃木県】
*「県経済新生構想」
 制度融資の条件緩和や、企業支援に伴う税法上の優遇措置などを求める。

【栃木・藤原町、日光市、那須町、塩原町】
*「『日光国立公園』観光新生プロジェクト」
 国の外国人観光客来訪促進キャンペーンで本県観光地を積極的に取り上げることや、ホテル・旅館業者の固定資産税の軽減とそれに伴う財源補填措置などを求める。

【栃木・大平町】
*「農業・商業・住居が融合するまちづくり」
 特定地域での農地転用許可権の国から県への移譲、一元化を求める。

【山梨市】
*「市営住宅再生構想」
 公営住宅法で定める取り壊し基準となる耐用年数の短縮や、50歳以上となっている単身者の入居条件の緩和を求める。

*「合併市町村まちづくり再生構想」
 市町村合併の際に、政令市以外認められていない「区」を旧市名の字として使用できるよう求める。

【富山県】
*「富山型地域福祉の推進構想」
 法律的な位置付けのない富山型デイケアを社会福祉法上の社会福祉事業とし、施設整備費の補助要件緩和や税制面で優遇措置を求める。

*「とやま産業活性化プロジェクト構想」
 NPO法人を中小企業とし、国の補助金や資金借り入れに伴う信用保証協会の保証対象となるよう求める。

*「キャリアアップ教育推進構想」
 公立高校職業科の生徒の就業体験期間を、10日間から1ヵ月に延長するよう求める。

【静岡県】
*「静岡政令県構想」
 政令市の都道府県版で、一定以上の規模、能力を備えた府県に対し、二重行政と批判がある国の出先機関の事務・財源を移譲するというもの。乗り合いバス事業の許認可や農地転用許可など各省出先機関の事務計92件の移譲を求める。

*「奥大井・南アルプスマウンテンパーク構想」
 ガイドによる登山客輸送の有償化、南アルプス国立公園区域の拡大など8件の規制緩和、制度確立を求める。

【静岡市】
*「学校統合により廃止となる学校施設、用地を活用したまちづくり」
 教育とは別目的の公共施設整備による補助金返還、市債の繰り上げ償還の免除を求める。

【静岡・浜松市】
*「世界都市浜松・外国人との地域共生構想」
 外国人学校の設立許可権限の県からの移譲を求める。

*「中心市街地活性化構想」
 中心市街地の歩道などを、イベントや商業活動に使えるよう求める。

【岐阜県】
*「美濃ミュージアム街道」
 高速料金体系に途中下車制度を設けることや、海外誘客の国事業ビジットジャパンキャンペーンとの連携、ハイウエーオアシス駐車場の利用開放の支援策を求める。

*「いきいき福祉のまちづくり構想(ケア付き住宅モデル事業)」
 社会福祉法人にフロアを賃貸する建物所有者へ補助する福祉施設整備補助の弾力的運用を求める。

*「公共バス優先市街地活性化対策(コミバス作戦)」
 自主運行バス、幹線バス、福祉バス、スクールバスなどの各種バスの国庫補助の統合や充実、要件緩和などの支援措置を求める。

【京都府】
*「観光都市kyotoケータイサポート構想」
 国内に持ち込まれた外国製携帯電話の日本国内での使用を可能にしたり、実証実験に必要な電波法上の免許付与などの支援措置を求める。

*「障害者雇用の促進による社会福祉事業の活性化構想」
 社会福祉施設などで職業訓練を受けた障害者をその施設で雇用することを求める。雇用した障害者にはほかの障害者の指導を任せる。

*「京都の農村まるごと観光構想」
 山村振興などを目的とした補助事業で整備された施設の目的外使用を求める。

*「京の芸術家支援事業(文化ニューディール事業)」
 芸術系大学の卒業生らの雇用確保に活用できるよう国の緊急雇用創出特別基金事業の要件緩和などを求める。

【和歌山県】
*「高野熊野世界遺産活用地域再生構想」
 町民福祉限定の町営コミュニティーバスを、高野熊野の見学者から運賃を徴収して運営したり、通訳案内業免許がなくとも英語の語り部ガイドをして賃金が得られるよう求める。また、参詣道沿いの案内板標識について、3省庁(環境省、国交省、文化庁)でそれぞればらばらに立てられているものを、基準を統一して設置することも盛り込んだ。

【岡山県】
*「岡山グリーンバイオ・プロジェクト」
 「原料に用いる輸入コーンスターチの関税条件の撤廃」「原料の調査研究への補助金」「製品の行政機関による優先的調達」「バイオマスプラスチック食品容器について容器包装法に基づく再商品化義務の適用除外」など13支援措置を求める。

【徳島県】
*「バイオマス燃料を活用した製材業・木工業の再生」
 製材・木工業の生産工程で出る木くずなどをボイラー燃料に使えるようにすることを求める。2002年12月の廃棄物処理法改正で、ダイオキシン濃度規制が強化され、製材業や木工業の生産工程で出る木くずやおがくずなどのバイオマス燃料がボイラーの燃料として使えなくなった。

【香川県】
*「さぬき瀬戸内再生構想」
 水産庁の補助金要件や海上輸送法の緩和などを求め、瀬戸内の振興を目指す。

*「かがわ地域産業振興構想」
 県内企業で働く外国人技能実習生の在留期間の引き伸ばしや外国人研究者の受け入れを求める。

*「かがわにぎわい創出構想」
 瀬戸大橋の通行料金の引き下げや観光バスの料金設定車種区分の見直しなどを求める。

【山口県】
*「コンビナートにおける水の協働構想」
 工業用水道事業を営む県の判断で、別の水系から工業用水を確保することができるよう求める。

【福岡県、福岡市、前原市、志摩町、二丈町】
*「九州大学術研究都市構想」
 統合移転される九州大学に企業や研究機関の集積を図る計画で、土地利用を弾力的に行うための権限移譲、進出企業に対する税制上の優遇措置などを求める。

【福岡県、田川市、香春町、添田町、金田町、糸田町、川崎町、赤池町、方城町、大任町、赤村】
*「田川地域産業再生構想」
 セメント製造施設の環境・リサイクル施設への転用などを進めるために、規制や認可要件の緩和を求める。

*「アジアのIT(情報技術)ビジネス交流拠点構築」
 インターネット接続拠点を設けるための補助制度の創設などを求める。

*「青少年科学技術立県運動」
 小中高生が国立大の施設を校外学習で使用するための要件緩和や、啓発活動に対する補助金創設などを求める

*「高齢者住み替え支援」
 中古住宅取得時の課税上の特例などを求める。

【熊本市】
*「水前寺江津湖公園活性化構想」
 動植物園が飼育するカバを園内の池で放し飼いにしたり、動物のふんや湖から撤去する水草を燃料とする「バイオマス発電」施設を園内に設置し、電力を電飾に利用することなどを求める。全国的に飼育が少ないカバの繁殖基地化を目指し、観光の目玉にするのが狙い。(田中潤)