| |||
政府は1月13日、2005年3月が期限の市町村合併特例法に代わる新法案の概要を明らかにした。現行の特例法で定めている財政上の優遇措置は打ち切るが、知事への勧告権限付与など、新たな合併促進策を盛り込んでいる。知事の協議会設置勧告には強制力はなく、勧告を受けた市町村長は議会に付議するか、住民投票を実施して、設置の是非を判断する。なお2003年11月に、首相の諮問機関「地方制度調査会」の答申で、「おおむね1万人未満」の市町村の合併を進める原則を明記したが、多くの市町村から「強制合併」との反対もあり、新法案では見送った。 市町村合併についてのスタンスは各都道府県知事によって異なっている。 高知県の橋本知事は2003年12月、人口を目安に合併勧告することについて、強制合併ととられかねず、対等協力という県と市町村の関係からみても疑問である考えを明らかにした。また、単独自治体について、財政支援を将来にわたり続けるのは難しいとする一方で、合併とは別の問題として、まちづくりということで必要な支援はあり得るとしている。 岩手県の増田知事は2003年11月、知事の勧告権限について、地域事情と住民意識を重視して、自主合併をベースに一律の合併勧告は行わない考えを示した。市町村規模の目安となる人口1万人についても必ずしもとらわれないことを強調した。 福島県の佐藤知事は2003年11月、「人口で市町村をくくる手法は現在、世界のどこを見ても取り入れていない」と地制調の答申を批判した。また、財政面だけで合併を推進することについても反対の認識を示した。 鳥取県の片山知事は2003年11月、合併を推進する政府の方針について「いっぱいおまけ(合併特例債)を付けても買ってくれない。今度はとうとう強制的に買わせるような仕組みを作ろうとする。そういう商品(合併)は魅力がない」と厳しく批判した。 一方で、倉吉市の長谷川市長は10月、合併に一貫して否定の姿勢を示す知事に対して、「行財政改革を進めてもサービスや住民生活を低下させず、中央に依存しないで済む地域づくりのため、これまでのやり方では大きく踏み出せないので行政基盤を見直して調整するのが合併だ」として、「知事は現場の苦労を承知していない」と批判している。 愛媛県の加戸知事は1月9日、任意協を設置した伊予市、双海町、中山町に対して、松前町が取り残される形となったことについて再考を求めたが、3市町は拒否した。 2003年11月には、松野町が広見町、日吉村との法定協から離脱の意向を表明したことについて、松野町が単独で残った場合、県の行う事業について「松野町への目配りに差がでる」と合併協への復帰を促した。だが、同町は12月に離脱し、広見町、日吉村は2町村で法定協を設置した。 徳島県の飯泉知事は2003年11月、2005年度以降は、合併しない市町村の住民が被害を受けることもあるため、議決を経て都道府県に合併申請をしている自治体を除いて、小規模町村には合併勧告を出さざるを得ないとの意向を明らかにし、強制的な合併に含みを持たせた。 また同月には、川島町、山川町、美郷村との合併承認を求める議案が否決された鴨島町に対して、知事は合併推進を呼びかけ、合併賛成派の町長も反対派を説得し、12月の同町臨時議会で再提案されて可決となった。 奈良県の柿本知事は2003年11月、地制調が知事主導で合併を促進することを柱とした答申を受け、市町村の自主性を重んじる従来の立場から、積極的に合併を支援する方針に方向転換した。 岡山県の石井知事は11月、県内市町村に対し、住民投票の実施や時期について慎重を期すよう求める通知を出した。同県では住民投票により合併が暗礁に乗り上げる事態が起きているのを受けてのもの。一部市町村からは、このような県の介入に批判の声もあがっている。知事は「合併について地域全体で考えて欲しいという思いで通知した」とのこと。 長崎県の金子知事は2003年10月、東彼杵町、波佐見町との法定協から離脱の意向を表明した川棚町に対して、合併に向けて再考を促したが、同町はこれを拒否し、現在にまで至っている。川棚町が離脱する場合、残る2町は飛び地合併となる。 石川県の谷本知事は1月5日、合併後の自治体のまちづくり支援を積極的に行うための新組織を庁内に設ける方針を示した。専任スタッフが市町村と連携しながら、地域振興策を検討する。 宮城県の浅野知事と副知事は11月、合併の態度が明らかでない県内17市町村を訪問し、合併についての意向を明らかにするよう促した。その結果、多くの自治体で法定協を設置するかどうかを早急に判断するとの意向が表明。川崎町のみが住民の意向を踏まえて、合併特例法の期限内には合併しない方針を明らかにした。 秋田県の寺田知事は2003年12月、単独自治体について最大限サポートはするものの、財政的な特例措置は基本的にはしないことを示している。 なお、1月5日には、県独自の合併支援策として市町村に交付予定の合併特例交付金(1市町村当たり上限2億円)について、男女共同参画計画の策定を条件とする考えを示した。市町村からは「男女共同参画は合併の本筋の問題ではなく筋違いだ」など疑問の声もあがっている。1999年制定の男女共同参画社会基本法は、市町村の共同参画計画策定を努力義務としている。これに基づき、県は2002年度に、「男女共同参画推進条例」(愛称「あきたハーモニー条例」)を制定した。だが、2003年4月時点で、県内で策定している市町村は5市町(7.2%)と全国平均(28.8%)を大きく下回っている。(田中潤) |