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豊島区が「放置自転車等対策推進税条例」を制定

2003/12/15

 東京・豊島区は12月9日、「放置自転車等対策推進税条例」案を可決、総務省の同意が得られれば2004年4月に施行する方針。放置自転車の撤去や駐輪場など、区の負担する対策費の一部を鉄道事業者に肩代わりさせるというもの。課税対象はJR東日本など区内に駅のある5鉄道事業者(JR東日本、東武鉄道、西武鉄道、営団地下鉄、東京都交通局)。課税基準は駅の前年度乗車人員とし、税率は1000人あたり740円。徴収は2004年度乗車人員をもとに、2005年度から開始する。税収は年間2億1000万円の見込み。それに対し、5鉄道事業者は同日に記者会見を行い、「対策を話し合う協議会も設けず、まず課税ありきはおかしい」「実施されれば裁判に訴えるのも選択肢のひとつ」などの考えを示した。
 なお、同日には、ワンルームマンションの建設抑制のために建築事業者に1戸あたり50万円を課税する「狭小住戸集合住宅税条例」も制定した。

 放置自転車は全国的な問題となっている。内閣府は2002年8月、2001年度の「駅周辺における放置自転車等の実態調査の集計結果」を公表。1日あたりに放置自転車の多い駅は、天神駅(福岡市)4530台、新浦安駅(千葉・浦安市)3710台、蒲田駅(東京・大田区)3280台、名古屋駅(名古屋市)3140台、岡山駅(岡山市)2980台、赤羽駅(東京・北区)2940台、大宮駅(さいたま市)2530台、新宿駅(東京・新宿区、渋谷区)2510台、南行徳駅(千葉・市川市)2470台、池袋駅(東京・豊島区)2440台の順となっている。ちなみに、放置自転車の台数が100台以上ある駅は1294駅。
 自転車等駐車対策関係についての条例を制定している自治体は、2001年6月30日現在で676自治体。そのうち、放置自転車等の撤去、移動等に関する「放置規制条例」数は497。百貨店、スーパーマーケット、銀行、遊技場等、自転車等の大量な駐車需要を発生させる施設に対する自転車等駐車場の設置の義務付けに関する「附置義務条例」数は97。自転車等駐車場の管理に関する「自転車等駐車場管理条例」数は536。

 放置自転車全国ワースト1の福岡市は11月15日から1月24日までの3ヵ月間、市営「天神自転車駐車場」の駐輪料金を実験的に3時間以内無料として、利用率や路上での放置状況の変化を調べている。効果が見込める場合は、2004年度以降の本格的な短時間無料化も検討する。

 神戸市は2004年1月から2005年3月まで、市営駐車場5ヵ所を無料開放する。対象は、神戸高速・西代前、神鉄・山の街駅前など計1251台分。ほかの市営立体駐輪場でも3階の駐輪を割引する制度も導入する。利用の増減などを検証して、本格導入する方針。

 駐輪場の無料化以外にも放置自転車対策に取り組んでいる自治体もある。

 東京・荒川区は10月、自転車200台を自由に、誰でも区内に好きなところまで乗って、どこでも「乗り捨て」できる「フリーサイクル」制度を始めた。自宅前でも道路の傍らでも乗り捨てでき、その自転車を見つけた人も、自分の目的地まで乗っていけるというもの。新たな自転車放置につながるおそれもあるため、2003年度を実験期間とする。予算は、用意する自転車も含めて300万円。

 千葉・市川市では2002年4月から、放置自転車を「共有自転車」として再利用する試みを行っている。運営は市のNPO「青少年地域ネット21」がボランティアで実施。放置自転車を同市から譲り受けて600台を「共有自転車」にリサイクルした。それらの駐輪場は、交番前のほか、公園や公民館など市内40カ所に指定されている。駐輪場は同市が提供。

 台東区は2002年11月から1ヵ月間、国土交通省と協力して、駅周辺などの放置自転車削減を目指して、1台の自転車を複数で共同利用する「コミュニティサイクル・システム」の社会実験を実施した。モニター登録した住民が参加、JR上野駅東側の半径1キロの範囲内に設置した12ヵ所の専用サイクルポート(駐車場)で自転車を借りて、どのサイクルポートでも返却できるというもの。2004年3月にこの結果についての報告を行い、本格実施に移すかの判断を決める。

 富山市は2002年7月から、放置自転車を再利用した自転車の無料レンタル事業を始めているが、自転車を借りたまま、返却せずに放置する例も多い。自転車をレンタルするには、2003年3月までは氏名と住所、電話番号の申告が必要だったが、4月からは、受付に声をかけるだけで借りられるようになったのが原因とみられている。市は新たにレンタル用自転車5台の補充を決めたが、「作業費やステッカー代、保険料などで、1台あたり1万円の費用がかかる」とのこと。

 自転車だけでなく自動二輪車の放置対策として大阪・高槻市は11月28日、構造改革特区の第4次提案で、路上放置された自動二輪車を市が強制的に撤去することができる「放置自転車対策特区」を提案した。同市では、条例に基づき放置禁止区域内の自転車と原動機付き自転車を撤去しているが、自動二輪車は警察の違法駐車取り締まり対象のため撤去できない。提案では「自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的促進に関する法律」の定義に自動二輪車を付け加えるよう求めている。