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京都府が硫酸ピッチで時限条例制定へ 全国初

2003/12/08

 京都府は12月5日、軽油の密造過程でできる有害な硫酸ピッチの生成、保管を禁止する全国初の条例案を府議会に提案した。硫酸ピッチの生成や保管の疑いがある場合、対象者に報告を義務づけた上で、府の立ち入り検査権を認め、知事が生成の中止や撤去を命令できるというもの。命令の違反者には2年以下の懲役、または100万円以下の罰金、虚偽報告や検査に従わなかった者には3ヵ月以下の懲役、または50万円以下の罰金を科す。国の法整備をにらみ3年間の時限条例とする。

 硫酸ピッチは、重油と灯油を混ぜて作る不正軽油から、硫酸を使って不純物を除去する過程で発生するもので、違法業者が各地で放置を繰り返している。自治体は処理の代執行を強いられ、環境省の外郭団体「産業廃棄物処理事業振興財団」が管理する基金から費用の4分の3を支援している。それでも、費用支援は1999年度〜2001年度に年間1〜3件程度だったのが、2002年度は7件に急増。撤去量は計2019トン、処理総額は2億1700万円(基金からの支援は1億4900万円)に達した。2003年度も青森県、静岡県、兵庫県、福岡市などへの支援が決まっており、件数、額ともに2002年度を上回るのは確実となっている。

 石川県も2004年3月に制定を目指している「環境総合条例」で、硫酸ピッチなどの産業廃棄物の不法投棄対策として、県の立ち入りや搬入停止命令に従わない者の氏名の公表や罰金などの罰則を検討している。

 そのほか、自治体が共同で硫酸ピッチ不法投棄対策に動いている。

 京都府は11月5日、大阪府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県、福井県、三重県、徳島県、神戸市と合同で、「硫酸ピッチ」の不法投棄に関する緊急要望を環境省、総務省、厚生労働省、経済産業省、警察庁に提出。不正軽油の製造・販売を禁止する新法の制定、パトロールなど取り締まりの強化、不法投棄現場の原状回復に対する国の財政支援などを求めた。

 関東甲信越や福島、静岡エリアの都、県、政令市の27自治体は不適正処理防止広域連絡協議会(産廃スクラム27)を設置しているが、新たに硫酸ピッチ不法投棄問題連絡会議を設置、8月にはその初会合を開催した。出席した25自治体で硫酸ピッチ入りドラム缶1万5000本(3000kl)が不法投棄され、半数の7600本(1520kl)が現在も放置されていることが判明。悪質業者について情報の共有化などを進めることなどで意見が一致した。

 国も硫酸ピッチ不法投棄対策に動いている。

 環境省は8月、総務省、警察庁、資源エネルギー庁と合同の連絡会議を設置、不正軽油製造の取り締まり強化に強めた。

 総務省は12月、有害物質の硫酸ピッチの不法投棄を税制面から抑制するため、軽油引取税(都道府県税)の罰則を強化する方針を固めた。現行は、不正軽油の製造工場などへの立ち入り検査拒否は罰金20万円以下、都道府県知事の許可を受けずに灯油と重油を混ぜた場合は懲役1年以下または罰金50万円以下、軽油引取税の脱税は懲役5年以下または罰金200万円以下の罰則となっているが、それぞれ引き上げを検討。さらに、購入者への罰則を新たに設ける考え。(田中潤)