11月、市町村合併についての住民投票は15件実施された。そのうち、法定協への加入の是非や合併についての賛否を問うものは14件、合併の枠組みを問うものは1件。是非や賛否を問うもののうち、合併に賛成の結果となったのは9件、合併に反対、単独自立の結果となったのは5件。以下、実施された住民投票について、個別に報告する。
【11月2日実施】
長崎・三和町は長崎市への編入合併の是非を問う住民投票を実施(投票率71.16%)。「賛成」3691票、「反対」3285票と賛成多数となった。今後は、現在加入している長崎地域法定協(長崎市、野母崎町、香焼町、伊王島町、高島町、外海町)の枠組みで2005年1月の合併を目指す。同町は4月、野母崎町との法定協設置の是非を問う住民投票が実施され、反対多数で設置見送りとなったが、同日行われた町議選で、「長崎市との合併派」「野母崎町との2町合併派」が同数となり、「2町合併派」は単独での存続を主張し、対立が続いていた。
【11月9日実施】(この日に実施された住民投票は、衆院選とのダブル選)
長野・箕輪町は上伊那北部6市町村(伊那市、高遠町、辰野町、南箕輪村、長谷村)での合併の是非を問う住民投票を実施(投票率74.89%)。「反対」9693票、「賛成」4994票となり、「反対」が大きく上回る結果となった。これを受けて同町は、13日の町議会全員協議会で、6市町村による任意協から離脱し、当面は自立していく考えを表明した。また、辰野町も10月、合併せずに自立の意向を明らかにしていた。
兵庫・南光町は佐用町、上月町、三日月町との合併の意思を問う住民投票を実施(81.86%)。「合併する」が1975票、「合併しない」が1102票。6月に4町で法定協を設置していたが、合併に慎重な町長が同月、住民投票条例案を可決させ、今回の住民投票となった。同町長は住民説明会などで「結果を尊重する」と述べていた。
香川・牟礼町は高松市との合併の賛否を問う住民投票を実施(64.31%)。「賛成」4970票、「反対」4902票と、「賛成」が過半数を占めた。同町長は「結果を尊重して12月議会に法定協設置案を上程したい」と述べた。
【11月16日実施】
滋賀・朽木村は高島郡5町(マキノ町、今津町、安曇川町、高島町、新旭町)との合併の是非を問う住民投票を実施。「賛成」が1303票、「反対」が394票となった(投票率82.36%)。2002年6月に前町長と議会は合併協への不参加を表明したが、4月に合併推進派の村長が当選。10月に法定協への参加を議会に要請したが、議会は住民投票を実施して、その結果で決めることとなった。
長崎・田平町は北松浦1市5町(松浦市、福島町、鷹島町、江迎町、鹿町町)での合併の是非を問う住民投票を実施(投票率74.68%)。「賛成」1562票、「反対」2973票となった。同町は19日、北松浦1市5町法定協からの脱退案を可決した。
また、松浦市は20日、23日実施予定の北松浦1市5町による合併の是非を問う住民投票の中止を決めた。田平町が法定協からの離脱を決定し、「1市5町合併の枠組みが現実的でなくなった」ことを受けてのもの。
【11月30日実施】
群馬・笠懸町は、桐生競艇事業から撤退し、東毛地域法定協(桐生市、太田市、尾島町、新田町)への加入の是非を問う住民投票を実施(投票率52.84%)。「反対」5860票、「賛成」5073票となった。
だが、今回の住民投票は告示後に「状況が急変」。
@競艇存続を求める住民が毎回説明会に出席して説明会を紛糾させ、連日深夜まで及んでしまったため、当初10ヵ所で予定していた説明会を3ヵ所で実施しただけで中止を決め、同町長は責任を取って一時辞意を表明(結局、議会の説得で撤回)
A東毛地域法定協は中核市を目指しているが、合併の枠組みを巡って意見が対立。桐生市は新里村、黒保根村、勢多東村、薮塚本町、笠懸町、大間々町も加えた2市5町3村、太田市、尾島町、新田町は2市2町を基本に、桐生競艇事業からの撤退に伴う補償問題解決などの条件付きで、薮塚本町を加えた2市3町を望んでいる。桐生市は24日、競艇事業撤退に伴う補償金問題を懸念している太田市など1市2町に配慮。桐生、太田両広域圏がそれぞれ別に合併して、その後2007年をめどに、新市同士が合併する二段階合併案を提示
B阿左美水園競艇組合(笠懸町、大間々町、藪塚本町)が2004年度に限って、競艇事業の継続を決定
このような状況下、「反対」の結果となった笠懸町は、太田市側との合併は難しくなったと認識し、「桐生広域圏内で競艇を続けられる新しい枠組みを模索していきたい」としている。
また、大間々町も同日に住民投票を実施する予定だったが、先に述べた「状況の急変」を受けて、24日の臨時議会で中止を決めた。
長野・大岡村は長野市、戸隠村、鬼無里村との合併の賛否を問う住民投票を実施(投票率88.28%)。「賛成」731票、「反対」465票となり、同村は長野市との合併を望む豊野町を含めた5市町村による法定協設置を目指す意向。
新潟・小国町は長岡地域6市町村(長岡市、栃尾市、中之島町、越路町、三島町、山古志村)との合併の是非を問う住民投票を実施(投票率83.37%)。「賛成」3073票、「反対」1966票となり、長岡地域法定協への参加することがほぼ確実となった。
また、見附町も同日に、長岡市など8市町村による合併の可否を問う住民投票を予定していたが、先立って実施された市民アンケートの結果で合併反対が6割となったこと受けて自立を表明、18日に住民投票条例廃止案を可決した。
山梨・中道町は合併の枠組みを問う住民投票を実施(投票率85.15%)。「東八代地域(春日居町、石和町、御坂町、一宮町、八代町、境川村)と合併」が2128票、「甲府市などと合併」が1718票となり、甲府市、芦川村、上九一色村との法定協から離脱する意向を示した。
鳥取・日吉津村は米子市・淀江町との合併か単独存続かを問う住民投票を実施(投票率78.32%)。「単独存続」1283票、「米子市・淀江町と合併する」717票となり、同村は結果を尊重するとしている。
高知・春野町は高知市、鏡村、土佐山村との合併の是非を問う住民投票を実施(投票率76.64%)。「合併する」5702票、「合併しない」4191票となったが、3市村の法定協は2005年1月の合併を目指し、協議が最終段階に至っており、同町が同時合併に参加できるかどうかは微妙な情勢。同町は2002年12月、3市村との法定協設置案を否決したが、2月に合併論議継続派の町長が当選し、今回の住民投票となった。
鹿児島・与論町は和泊町、知名町との合併の是非を問う住民投票を実施(投票率83.47%)。「賛成」535票、「反対」3549票となった。同町は法定協から離脱する意向。
鹿児島・串良町は合併の是非を問う住民投票を実施(投票率65.43%)。「単独」1700票、「大隅中央(鹿屋市、垂水市、輝北町、吾平町)」5499票となり、同町は「結果を受け止める」としている。
鹿児島・串木野市は市来町と1市1町での法定協設置の是非を問う住民投票を実施(投票率68.76%)。「賛成」9081票、「反対」5254票となり、同市は「年内の法定協設置を目指す」とした。同市は7月に住民アンケートの結果を受けて、川西薩地区法定協(川内市、樋脇町、入来町、東郷町、祁答院町、里村、上甑村、鹿島村)から離脱を宣言。10月には市議会が住民発議に基づく1市1町での法定協設置案を否決したため、同市長は合併特例法に基づき住民投票の実施を請求、実施となった。また、市民団体から請求し、同市議会が可決、条例が制定された3択の住民投票(@串木野市、川内市など2市4町4村A市来町との1市1町B合併しない)については、市長が特例法による住民投票で過半数の賛成となれば、実施しない方針を明らかにしている。(田中潤) |