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構造改革特区第4次提案の募集締め切る

2003/12/01

 政府は11月30日で、構造改革特区の第4次提案の募集を締め切った。現在の時点では、その結果についての発表はなされていないが、地方紙などで特区提案すると報道された特区について紹介する。

【教育】
*埼玉・志木市「ハタザクラ・ぷらす・プラン」
 県教委の同意なしで市が独自に学級編成できるというもの。公立小中学校の学級編成については、公立義務教育校の職員定数などを決めた「標準法」の第4・5条で、都道府県教委が定めた基準に従い、事前の協議と同意を得なければならないとされており、基準に従うことの「適用除外」と、同意の代わりに「届け出ることをもって可能とする」ことを提案している。

*秋田県「日本国籍を有しない者の期限付き英語教諭任用特区」
 英語圏出身の外国人を教諭として採用、高校の授業やALT(外国語指導助手)対象の研修、小学校の英会話活動のカリキュラム開発などを担当してもらい、児童生徒の英語力向上を目指すというもの。

*北九州市「公立専修各種学校活性化特区」
 民間で公立学校を管理・運営するというもの。現行の学校教育法では、設置者が公立学校を管理・運営するよう規定されている。

【自治制度】
*鳥取県、倉吉市「住民に身近な市町村議会特区」
 「市町村長選、市町村議選の選挙権を18歳にまで引き下げる」「市町村議会の定例会回数を年4回に限定せず、市町村が独自に条例で決める」というもの。県は6月に県内市町村にこの特区の参加を呼びかけ、倉吉市がそれに応えて共同提案した。
 また、同市は11月25日、選挙権年齢を現在の20歳から18歳以上に引き下げる法律の改正案も「全国規模での規制改革要望」として内閣府に提出した。改革要望の対象となるのは、衆参両院の国政選挙と知事、県議会、市町村長、同議会を含むすべての選挙で、全国展開を図る。

【福祉】
*東京・稲城市、青梅市、昭島市、町田市、国分寺市、国立市、多摩市、羽村市、瑞穂町、日の出町、奥多摩町、檜原村、神奈川・秦野市、埼玉・戸田市、鶴ヶ島市「介護のまちづくり特区」
 グループホームなどの入居型施設について、(1)各市町村で定める介護保険事業計画を上限とし、それを超える場合は(都道府県は)認めない、市町村が希望する場合に(2)施設の認可権限を現行の都道府県知事から市町村長へ移譲する(3)国の介護報酬額を上限に、自治体が事情に応じて設定できるというもの。特区推進室によると、都道府県を越え、これだけの自治体が共通問題で共同提案するのは極めて珍しいとのこと。この特区については、稲城市が同市のホームページ上で共同提案する自治体を呼びかけていた。

【景観維持】
*大阪・高槻市「放置自転車対策特区」
 路上に放置された自動二輪車を、市が強制的に撤去できるというもの。自動二輪車は警察の違法駐車の取り締まり対象となっているため、「自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的促進に関する法律」の定義に自動二輪車を付け加えるよう求めている。

【観光】
*香川県、岡山県「瀬戸内海しまタク特区」
 バスやタクシーがない離島で、観光施設や旅館などが自家用車で旅客を運送できるというもの。香川県は6月にも、同様の特区を提案したが、安全性の問題や、旅客運送に2種免許が必要なことなどで認められなかった。今回は、交通安全を確保するため、関係者による運営協議会を設け、車両保険の加入などの管理を充実させる内容を盛り込み、岡山県にも呼びかけて共同歩調を取った。

*秋田・阿仁町「マタギ特区」
 国が現在規制しているカモシカの狩猟やどぶろくの製造販売の許可、古民家への宿泊を認め、観光客が野生動物を食べられるようにするというもの。

*秋田・藤里町「白神山地の郷 自然・農林業体験特区」
 廃校となった旧坊中小学校の木造校舎を宿泊施設にするというもの。世界遺産・白神山地のネームバリューも生かしたエコツーリズムの拠点化を目指す。

*秋田・西木村「感動創造博物館特区」
 民宿としての基準を満たさない農家でも宿泊客を受け入れるようにするというもの。旅館業法、食品衛生法、建築基準法、消防法など関係法令の規制緩和を求める。

*群馬・神流町「かんな田舎交流体験特区」
 一般住宅を民宿に利用して都会の人を受け入れるというもの。(1)旅館業法の設備基準を除外し、住民が副業で民宿業を営む(2)塩素消毒していないわき水を宿泊施設で提供(3)農地法の規制緩和による都市住民との交流農園開設などを求めている。

【ビザ】
*福岡県、福岡市「福岡アジアビジネス特区」
 「県や市などが外国企業の身元を保証することで、一定期間中に何度でも出入国できるビザ(数次査証)の発給を迅速化する」「会社設立後に必要な国内居住の常勤職員を2人から1人に減らす」というもの。この特区はすでに14項目の特例措置が認められており、今回新たに3項目を追加提案した格好。

【交通】
*群馬・太田市「陸運特区」
 前橋市にある関東運輸局群馬運輸支局の「派出所」として、市と自動車メーカー、修理業者などが第3セクター方式で、「太田自動車登録検査事務所」(仮称)を太田市内に設立。同支局から3人程度の登録官と検査官を派遣してもらい、独自の自動車ナンバーの交付や車検業務などを行うというもの。現状では月3回の出張検査が行われているだけで、埼玉・熊谷市や栃木・佐野市で車検を受けるケースが多い。

*愛知県、名古屋市、春日井市「開国!国際ビジネス機特区」
 2005年2月の中部国際空港開港後に小型機専用の県営空港となる名古屋空港を、外国のビジネス機の受け入れ拠点とするというもの。「年間100回程度の国際ビジネス機の離着陸が見込まれる場合は、事前許可がいらない指定飛行場とする」「CIQ業務を簡略化して機内で行えるようにする」など、航空法、CIQ関連法の緩和を求めている。

【産業】
*山口県、下関市「下関地区水産業活性化特区」
 地方自治法で民間への貸し付けが禁止されている「行政財産」である県の漁港施設を長期間、無償か低料金で貸し、民間事業者が自由に施設整備ができるように規制緩和するというもの。市内の3水産物市場の活性化を図るのが狙い。

*大分県「ハウスワイン特区」
 農家民泊の客を自家製ワインでもてなせるようにするというもの。安心院町が対象。酒税法上の免許取得条件(ワイン製造免許は年間製造見込み量が6キロリットル以上でなければ取得できない)の緩和、酒税申告手続きの簡素化を求める。

【農業】
*大分県「田園暮らし応援特区」
 「就農希望者が体験販売を含む研修訓練の場として市民農園を活用できるようにする」「新規就農者が農地の維持管理のため、農地内の希望する場所に住宅を建てられるようにする」というもの。市民農園整備促進法上の市民農園の定義や農地法の転用許可基準の緩和を求める。

*大分市「田舎くらし応援特区」
 高齢者などの農業愛好者が小規模農地を取得できるようにするというもの。農地法で定められている農地取得の下限面積(現行40アール)を10〜15アールに緩和することを求めている。新規就農者の遊休農地への定住を促すのが狙い。(田中潤)