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市町村合併:法定協から離脱する自治体増える

2003/10/24

 佐賀・鳥栖市は10月21日、佐賀東部合併協(北茂安町、中原町、三根町)から離脱した。同市は、3町すべてを個人の住宅建設などが制限される市街化調整区域とする新市の都市計画案を提案していたが、3町は「一方的な押し付けだ」として猛反発したことが原因。3町は合併協議を継続し、上峰町にも法定協への参加を要請する模様。

 長崎・川棚町は10月21日、東彼杵郡3町合併協(東彼杵町、波佐見町)からの離脱を表明した。11月13日に開催する法定協で正式表明する。離脱理由として、「合併後の新しい町づくりに期待が持てない」「この法定協は合併の是非を判断する場であり、協議を進めてきて総合的に判断した」などをあげている。今後は、単独でやっていく方針。東彼杵町は「寝耳に水」と困惑、波佐見町は「直接聞いていないためノーコメント」とした。

 熊本・竜北町と宮原町は10月20日の両議会で、八代地域市町村合併協議会(八代市、坂本村、千丁町、鏡町、東陽村、泉村)からの離脱案をそれぞれ可決した。両町は2町での合併協議を進め、住民から要望の多い「小さな合併」を目指す。これを受けて、郡市一体合併を望む両町民が10月21日、「2町合併」か「郡市一体合併」かの枠組みを問う住民投票条例制定の請求代表者証明書交付を申請した。

 このように法定協から離脱する動きが全国で広がってきている。10月3日付の日本経済新聞によると、2003年度に法定協が正式に解散されたところだけでも11件に上っているとのこと。以下、最近になって法定協が解散した、あるいは法定協から離脱する動きを紹介する。

 鹿児島・市来町は10月14日、日置合併協(東市来町、伊集院町、日吉町、吹上町、金峰町)から離脱した。住民アンケートで、串木野市、東市来町との1市2町での合併が76.74%、協議を進めていた日置合併協での合併が20.25%だったのを受けてのこと。日置合併協は今後、残り5町で合併協議を進める。なお、串木野市は住民投票を実施する予定で、「川西薩地区10市町村で合併」(川内市、樋脇町、入来町、東郷町、祁答院町、里村、上甑村、鹿島村、下甑村)「市来町と合併」「合併しない」から選択する。

 高知・葉山村、東津野村、梼原町で構成する合併協は9月30日で解散した。新町の本庁舎位置をめぐって対立したのが原因。東津野村、葉山村は10月30日に、2村による法定協を設置する予定。

 熊本・天草合併協(本渡市、牛深市、有明町、御所浦町、倉岳町、栖本町、新和町、五和町、天草町、河浦町)では9月以降、同協議会からの離脱決議が相次いでいる。有明町が9月4日、栖本町が9月8日、新和町が9月18日、五和町が9月26日に、それぞれ離脱を表明した。4町が正式に離脱するのは12月になる模様。一部自治体が駆け込みの大型投資事業を実施することが明らかになり、信頼関係が崩れたのが大きな理由。新和町長、五和町長は「合併推進」を公約として無投票再選したが、「まずい合併を進めるわけにはいかない」などと釈明している。また、栖本町が離脱すると、隣接する倉岳町、御所浦町が「飛び地」になり、残った2市4町にとっては合併への障害となる。

 鹿児島・隼人町は9月25日の町議会で、姶良中央地区合併協(国分市、溝辺町、横川町、牧園町、霧島町、福山町)から離脱する決議案を可決した。議員発議で「同協議会はひたすら既設のレールを走っており、理念なき合併だ」としている。だが、決議案には拘束力はなく、同町長は離脱の意思がないことを強調しており、町長と議会との間にねじれが生じている。同町は12月に住民投票を実施し、離脱の是非を民意にゆだねる意向。

 島根・津和野町、日原町、六日市町は9月24日の町議会で、柿木村を含めた鹿足郡4町村合併協の解散議案を可決。柿木村は同日の村議会で否決したので法定協は解散に至らないが、4町村での合併協議は事実上終結した。新町名称・庁舎位置について対立したことが原因。

 鳥取・三朝町は9月18日、天神川流域合併協(倉吉市、関金町、北条町、大栄町)から離脱し、単独でやっていくこと意向を明らかにした。「合併協議を通じて、負担は安く、サービスは高くという合併目標が達成できないことが明らかになった」のを受けてのこと。決断に賛同する町民と、急に方針転換したことに戸惑う町民とに二分している。同町が離脱すると、同合併協は鳥取県内随一の観光地である三朝温泉を失い、合併協の行方は不透明となる。

 秋田・象潟町は9月14日、仁賀保町・金浦町・象潟町合併協から離脱する方針を明らかにした。町民アンケートで、単独立町支持が67.74%、合併推進は32.26%という結果になったのを受けてのこと。

 熊本・玉名市は9月12日、玉名郡市合併協(岱明町、横島町、天水町、玉東町、菊水町、三加和町、南関町、長洲町)からの離脱決議案を可決した。議員発議で「合併協に対する不信感があり、新しい枠組みを模索するべき」としている。また、合併による転入、転出や課税手続きなどに使う電子計算処理システム事業に関する議案についても否決された。市長は玉名郡市合併協での合併を推進しており、9月28日告示の市長選では無投票再選が決まっており、今後の成り行きが注目される。(田中潤)