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構造改革特区第3回申請は95件 新規は73件

2003/10/16

 政府は10月15日、構造改革特区の第3回の申請内容を発表した(詳しくは、内閣府構造改革特区担当室の「構造改革特別区域計画の第3回認定申請受付の結果について」を参照)。件数は95件だが、そのうち新規での申請は73件、残り22件は既に特区を認められた自治体が規制緩和措置など内容の追加や変更を行ったもの。10月15日付日本経済新聞によると、11月上旬にも全件が認められるとのこと。

 都道府県別の申請状況は、岐阜県が8件と最も多く、岡山県の6件、北海道、神奈川県の5件が続く。申請なしは10県。
 複数県が共同で申請したのは、茨城県、栃木県、群馬県の「広域連携物流特区」のみ。この特区は、物品の流通拠点となる保税蔵置場について、管轄する税関から25キロ以内とした設置要件を、100キロ以内に拡大するというもの。また、港湾で陸揚げされた外国車を駐車場まで移動する際の仮ナンバープレート表示が簡単な方法になる。だが、3県で検討していた海上コンテナの陸上輸送を推進する規制緩和策は見送られた。

 産業に関わるものは、三重・津市、河芸町「複合型産業集積特区」、神奈川県、川崎市「国際環境特区」、岡山県「水島港国際物流・産業特区」、北九州市「国際物流特区」、福岡県、福岡市「福岡アジアビジネス特区」など。

 ビザの緩和などを求めるものは、北海道・稚内市「国際交流特区」、香川県「瀬戸内海国際観光特区」、長崎県「しま交流人口拡大特区」など。
 「瀬戸内海国際観光特区」は、韓国の修学旅行生が瀬戸内の島々を訪れる場合、学校側の証明があれば、ビザ申請に必要な住民登録証明書が不要になるというもので、団体観光客についても、在職証明書などの代わりに旅行業者の誓約書で足りるとしている。
 「しま交流人口拡大特区」は、短期滞在ビザの発給で必要な提出書類を削減するというもの。そのほか、県立対馬高の「離島留学制度・国際文化交流コース」の「韓国学」の卒業必要単位を現行の20単位から25単位に設定することで「韓国学」の授業を増やし、生徒が韓国について深く学べるようにする。
 留学生に関しては、大分・別府市「留学生特区」がある。「低所得者で同居親族がいること」とした公営住宅法の入居制限要件を緩和し、公営住宅に留学生が入居できるようになる。

 外国語教育に関するものは、岐阜市「岐阜発『英語でふるさと自慢』特区」や高知市「国際理解教育推進特区」など。
 「岐阜発『英語でふるさと自慢』特区」は、小学校の教育課程に外国語を加え、3年生以上の総合的学習のうち年間35時間を充てるというもの。
 「国際理解教育推進特区」は市内4小学校、4小中学校を対象に、それぞれ英語、中国語を教育課程の中に教科として位置付けて学習するもの。市単独予算でALT(外国語指導助手)を配置するほか、中学校との連携も計画している。

 不登校に関するものは、岐阜市「不登校生徒を対象とした『ぎふ・学びの部屋』特区」や京都市「不登校生徒学習支援特区」など。
 「不登校生徒を対象とした『ぎふ・学びの部屋』特区」は、不登校の生徒に合わせて教育課程を弾力的に編成、実施するというもの。週に半分学校に行っているが勉強が遅れがちな生徒などを対象に、青少年会館など学校以外の場に当面1ヵ所設け、常勤講師を市費で採用し、補充学習を行う。
 「不登校生徒学習支援特区」は、中京区の「市教育相談総合センター」内に、不登校生徒対象の中学校を新設するというもの。学習指導要領で定められている1年間980時間の総授業時間数を、770時間に削減。不登校の生徒がカウンセリングなどを受けやすくする。

 学校設立に関するものは、東京・千代田区「キャリア教育推進特区」、大阪市「ビジネス人材育成特区」、岡山・御津町「教育特区」など。前2者が株式会社による大学と大学院、後者は株式会社の中学校を設置するというもの。

 幼保一元化などに関するものは、北海道・東川町「幼保一元化特区」、秋田・千畑町「幼保一体的運営特区」、静岡・掛川市「保育一元・幼保一元特区」徳島・池田町「小豆島こどもセンター運営特区」など。幼稚園の入園年齢を緩和するものは、北海道・北広島市「幼児教育特区」、北海道・恵庭市「幼児教育特区」、長崎県「ながさき幼稚園早期入園特区」など。

 福祉に関するものは、岐阜市「福祉サービスの向上特区」、岩手・一戸町「小規模多機能福祉施設特区」、長崎県「ながさきデイサービス特区」、富山県、富山市、滑川市、砺波市、大山町、福野町「富山型デイサービス推進特区」、熊本・玉名市「福祉輸送特区」、愛知・豊根村「とよねがんばらマイカー特区」など。
 「福祉サービスの向上特区」は、給食の外部委託ができる障害児通園施設に難聴幼児通園施設みやこ園を追加、知的障害児の短期入所を社会福祉法人の生活支援センターで行うことができるというもの。
 「とよねがんばらマイカー特区」は、ボランティアの運転手が自家用車を使って、高齢者らを有償で送迎するというもの。

 病院に関するものは、公立病院における医師の臨時的任用期間を延長して、優秀な医師の要請を推進する神奈川・小田原市「医師臨床研修推進特区」がある。

 まちづくりに関するものは、奈良県「ふるさと『なら』屋外広告物美観維持特区」、奈良市「屋外広告景観維持特区」、岐阜県「美しいひだ・みの景観特区」、岐阜市「きれい・すっきり簡易除去モデル特区」、岐阜市「中心商店街再生特区」、岐阜市「駐車場運営特区」、岡山・倉敷市「くらしき広告景観特区」、など。
 「ふるさと『なら』屋外広告物美観維持特区」は、張り紙や張り札、立て看板に限定されていた簡易除去の対象を、道路上に掲出されているほとんどの違法広告物に範囲拡大するというもの。認定されれば、事務処理特例条例により、2004年4月1日から市町村に権限を移譲する。それに合わせて、奈良市も「屋外広告景観維持特区」を申請した。

 農業に関するものは、大分・安心院町「安心の里農業特区」、富山・八尾町「越中八尾スロータウン特区」、千葉県、千葉・山武町「有機農業特区」、香川県「さぬき農村ふれあい特区」、石川県「河北潟干拓地農業活性化特区」、北海道・千歳市「農村再生特区」、高知県「農の担い手育成特区」、神奈川・相模原市「新都市農業創出特区」など。
 「安心の里農業特区」は、株式会社など農業生産法人以外でも農地が利用できるよう農地法を緩和し、農地取得の下限面積(50アール)を10アールまで引き下げるというもの。遊休農地の解消と新規就農者の定住を促すのが目的。
 「農の担い手育成特区」は、農業大学は農業者の養成を目的にしているため、他大学のように就職あっせん活動が認められていないが、県立農業大学校が学生に就職あっせん活動をできるようにするというもの。

 農家や民宿での「どぶろく」製造などを緩和するものは、岩手・安代町「あしろふるさと再生特区」、岩手・遠野市「日本のふるさと再生特区」、岩手・浄法寺町「浄法寺ふるさと再生特区」など。

 市役所の短期臨時職員の任用期間延長に関するものは、大阪・堺市「バリュアブル・スタッフ特区」、埼玉・川口市「臨時的任用職員延長特区」、埼玉・志木市「地方自立特区」など。

 そのほかに、センター内で人工衛星の機能を確認する際に必要な電波法に伴う免許の免除や有効期間延長する鹿児島県「宇宙開発特区」、ロボットを道交法に基づく道路使用許可対象に加え、実験できるようにする福岡県、北九州市、福岡市「ロボット開発・実証実験特区」などが申請された。(田中潤)