住基ネットが8月25日から本格稼動して1ヵ月が過ぎた。総務省によると、発行数の全国数値はまだ集約していないとのことだが、住基カードの申請件数を個別に明らかにしている自治体もある。
岩手県の住基カード交付数は2万1915件の見込みだが、9月12日時点で1838人。そのうち7割の1252件(9月24日時点の住基カード発行申請数は1424件)が水沢市に集中。同市は、市立病院の再来予約など8項目の付加機能を定めた住基カードを発行しており、年末までは住基カードを無料交付する予定、年度内に7000枚の発行を見込んでいる。
その一方で、住田町、軽米町、一戸町、室根村、山形村、川崎村の6町村ではカード発行はゼロ。発行数1桁台は37市町村、2桁台は13市町村となっている。
兵庫県では9月24日午後5時時点で、カード交付申請は3764件。郡部では66町のうち54町が10件以下。神戸市では1413件、姫路市では209件、西宮市では329件、豊岡市では35件、洲本市では11件、篠山市では8件と、いずれも人口の0.1%に満たない。
但東町では郡部で2番目に多い18件の申請があったが、そのうち一般町民の申請は2件。残り16件は町長以下の町職員だった。ゼロの自治体はないが、1件のみが8町。さらに、丹波地方のある町では町職員が唯一の申請で、10件未満だった西播磨のある町では担当課長が自ら申請している。
長崎県内8市では9月24日時点で発行数は605件。各市のカード発行状況は、長崎市416件、佐世保市80件、諫早市32件、大村市29件、島原市19件、平戸市22件、松浦市4件、福江市3件。長崎市は全国の中核市の平均(207件)を上回る416件だが、2004年3月末までの見込み(5000件)達成は厳しい状況。ほかの七市はいずれも低迷している。
宮崎県内では、宮崎市が9月24日時点で、申請9404件、交付3151件と、全国でもトップレベルの申請・交付数(自治行政局市町村課)となっている。そのほか、延岡市が申請82件、交付78件、都城市は申請75件、交付70件。九州では9月22日時点で、福岡市で申請、交付ともに743件、長崎市が申請397件、交付349件となっている。
長野県内では9月24日時点で、真田町、大岡村、開田村、北相木村で交付数がゼロ。町村部は1桁台の自治体が多い。長野市は2000枚分を予算計上しているが、24日時点で132枚。
横浜市は9月24日時点で、交付数は2947件。同市は市民による選択制を採用しており、250万人以上がネット参加を選択しているが、普及率は1%にも満たない。
北海道内34市では9月19日時点で発行数は3030枚。2003年度のカード発行枚数は総人口の1.7%(10万枚)を見込んでいるが、町村分を加えたとしても下回るのは濃厚。札幌市は2003年度に人口の3%(5万4000枚)を予定しているが、1373枚の発行で、今のペースでは1万枚程度となる。同市のほか、旭川市、函館市、小樽市、江別市の5市のみがカードを100枚以上交付。歌志内市、留萌市、芦別市の3市では発行枚数が1桁、追分町ではゼロだった。
岡山・新見市は9月13日時点で、発行数は25件。同市は、住民票・印鑑証明の自動交付、市民体育館などの公共施設予約、市が実施した健康診断結果の確認といった独自サービスを盛り込んでいるが、発行数が伸び悩んでいる。
名古屋市は9月12日時点で、発行数は1200件。同市は2003年度補正予算で4万枚のカード発行を予定、4200万円の補正予算を計上している。
島根・出雲市では9月25日、同市内の出雲郵便局ロビーに設置した住民票の写しと印鑑登録証明書を交付する自動交付機での発行が2件だったことが明らかとなった。住基カードを使う証明書交付機の郵便局内設置は同市が全国初。総務省の外郭団体である地方自治情報センター(LASDEC)の補助金など6200万円をかけ、システムを整備した。発行手数料は200円かかる。10月1日には、同市役所内にも同様の自動交付機1台が導入される予定。年間の維持経費は700万円。
このように各自治体の状況をみると、全国的には住基カードの申請数は低迷気味となっている。
住基ネットについては、情報管理の不安から参加していない自治体(東京・杉並区、国立市、国分寺市、横浜市、福島・矢祭町)もあり、長野県の田中知事は8月15日の知事会見で、住基ネットのセキュリティ対策に関する今後の方針ついて述べ、インターネット接続団体における侵入実験を行う考えを明らかにした。同県は9月22日に、阿智村で住基ネットの安全性を検証する侵入実験を始めた。庁内LANから直接、村の住基ネットのサーバーに侵入を試みるなど、庁内LANそのものの安全性を検証する。そのほか、住基ネットがインターネットと接続している中信地区の1自治体と、接続していない下諏訪町の計3町村で順次実験を行う方針。実験の費用は業者への委託費など300万円。
田中知事は8月の知事会見の際に、「住基ネットは国、都道府県、市町村がピラミッド型に結ばれ、国に情報が一元管理されているといわれているが、実際には国の下に47都道府県と3181市町村が並列的にぶら下がり、市町村同士も横並びにダイレクトにつながっている構図で、そのうち800近い自治体がインターネットに接続している。国と県の部分についてはLASDECが常時監視し、安全確認を行うが、LASDECの監視外である市町村間で情報漏えいが発生した場合、国ではなく市町村が損害賠償の対象となる」と批判した。
また、「住基ネットワークのコストは、県が既に投資した構築費用等が21億4300万円(全国で804億9400万円)、今後必要とされる維持費用は年間5億3300万円(同190億3600万円)かかる」と指摘した。
それでも、麻生総務相は9月24日、毎日新聞など数社のインタビューで、長野県が住基ネットから離脱し、独自の情報管理を検討していることについて、「独自の情報管理の方が費用がかかり、安全の保証もないので、住基ネットの実態がある程度理解されれば、離脱は止めることになるのではないか」と述べている。(田中潤) |