青森・六戸町は9月11日の町議会で、「六戸町議会の議員及び六戸町長の選挙における電磁的記録式投票機による投票に関する条例」案と、電子投票機を40台設置するためのレンタル料など400万円の予算案を可決、12月1日から施行されることとなった。
これまでに実施された電子投票は、岡山・新見市長選・市議選(2002年6月)、広島市長選の一部選挙区(2003年2月)、宮城・白石市議選(2003年4月)、福井・鯖江市議選(2003年7月)、岐阜・可児市議選(2003年7月)、福島・大玉村議選(2003年8月)の計6件。ただし、この6自治体で実施された電子投票は、不在者投票については対象外だったため、例えば新見市では、電子投票の開票自体は20分で終了したのにも関わらず、不在者投票の開票に2時間を要した。
従来の不在者投票では選挙の当日に有権者を確定するため、不在者投票後に死亡した場合、票の抜き取りが必要だった。このような作業が電子投票では難しく対象外となっていたが、12月施行の改正公職選挙法で、手続きを大幅に簡素化するとともに、期日前投票の時点で投票が完了するとみなし、抜き取りを不要とする期日前投票制度が設けられた。六戸町では、2004年1月18日の町長選から、不在者投票も含めた「フル電子投票」が全国で初めて実施される。
神奈川・海老名市は11月9日に実施予定の市長選・市議選で、電子投票を導入する方針。ただし、今秋にも取りざたされている衆院の解散・総選挙の日程と重なる可能性もあり、その場合は2つの投票方式を併用する。2002年2月施行の特例法により、電子投票は地方選に限られているので、小選挙区と比例代表、国民審査は投票用紙を用いた従来方式、市長・市議選はタッチパネルを使う新方式となる。
ちなみに、岡山・新見市は6月、国政選挙でも同市に限って電子投票ができる「国政選挙電子投票特区」を提案している。認められれば、2004年夏の参院選で実施したい意向だが、現在まで総務省は「特区として対応不可」としている。
電子投票導入に取り組んでいる自治体は以下の通り。
京都市は9月2日の市議会で、「京都市長の選挙に係る電磁的記録式投票機を用いて行う投票に関する条例」案を提案した。2004年2月に実施される京都市長選から、電子投票を一部選挙区に導入する方針。投票機器をはじめ電子投票導入に掛かる費用は2000万円。市は財政難のため、有権者が3万6000人と市内で最も少なく、投票所も少ない東山区に導入する。実施されれば、政令指定都市では広島市に次いで2例目となる。
松江市は9月10日の市議会で、2004年6月予定の市長選で導入する電子投票の費用や効果などを明らかにした。選挙費は前回より1400万円増の7800万円になるとのこと。効果としては「疑問、無効票の激減で有権者の投票意思が正確に反映される」「電算集計で選挙結果が迅速に公表できる」「開票事務の省力化で人件費の縮減が図れる」などをあげた。
2002年4月に、地方選で電子投票を可能とする「地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に係る電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律」(「電子投票特例法」)が成立して、1年半が経過したが、電子投票が実施されたケースはわずか6件。機器のレンタル代などコストが割高となるため、福岡・八女市では2002年12月、大分・中津市では2002年9月に、財政事情を理由に、電子投票条例案が議会で否決されている。
「電子投票特例法」には、国が自治体に対して電子投票機の購入費用の半額を上限に補助することが定められている。それでも、国の補助が足りないという自治体は多い。東京都も2002年8月、「電子投票補助金交付要綱」を定め、国の半額補助に加えて都が4分の1負担する制度を導入。市区町村は4分の1の費用で済むことになったが、現在までに利用例はない。(田中潤) |