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山形県、競馬経営不振の上山市に財政支援へ

2003/07/18

 山形県では7月14日、存廃問題が持ち上がっている「かみのやま競馬」を運営する上山市に対して、知事が財政支援を行う意向を表明した。施設整備などのハード事業を対象に県が市町村に融資する市町村振興資金で対応する模様。競馬特別会計の赤字補填には直接投入できないが、市の一般財政への支援で上山市の財政再建団体化を回避したい考え。財政再建団体化で、現在進めている山形市など2市2町での合併論議を損なう恐れもあるため、県は財政支援に動いたとのこと。
 地方財政再建特別措置法では、単年度の実質収支の赤字額が標準財政規模の20%を超えた自治体は「財政再建団体」に転落する。上山市の標準財政規模は80億円。算定では特別会計も含むので、2003年度は競馬特別会計の赤字額が3億円を超えると、さまざまな措置をとっても転落ラインを突破する見通し。

 そのため、上山市は2003年度の赤字額が3億円に達した時点で、同競馬を廃止にする方針を打ち出しているが、6月9日の市議会本会議で、市長が「売上げ減のなか、15回(75日間)開催は困難な状況」と開催途中での休止もあり得るとの見解を示した。第5回開催(6月8日〜6月17日)終了時点での赤字額は1億4700億円で、上限とした3億円の半分に達している。

 なお、かみのやま競馬の赤字削減については、市と調教師会との間では話し合いが続いている。
 7月1日、上山市と関係団体が意見を交換する懇談会で、市は現状のままだと赤字限度額3億円以内の開催は9月2日の10回開催が限度とし、賞金・手当を削減する「協力要請案」を示した。だがこの案によって、最低賞金は3万4000円(現行17万円)、最高賞金は11万円(55万円)、出走手当は2万4000円(6万5000円)と現実離れした金額となるため、関係団体は拒否。
 7月5日には、市と調教師会の会合が開かれ、調教師会は1回開催を5日間から4日間に短縮する開催経費削減と赤字の圧縮を図る独自の修正案を提示。市は修正案に即して検討することを約束した。

 このように地方競馬の存廃問題が持ち上がっているのは「かみのやま競馬」だけではない。

 北海道では7月中に、地方競馬主催の全国9県とともに、国に対し、「競馬運営改善基金」の創設を要請する。北海道案では、この基金の主な財源はJRAの国庫納付金(売上げの10%で1997年をピークに2002年度は3000億円)として、5年間の時限制度で、農水省が所管する。地方競馬の主催者が地方競馬全国協会に納める売上金の一部も財源の視野に入れる。基金からの資金貸し付けについては、第3者機関がそれぞれ競馬主催者の運営改善計画を審査、毎年の経営状態と照らし合わせて、補助や融資が適切かどうかを判断する。

 岩手県では7月15日、「岩手競馬のあり方懇談会」の第2回会合が行われ、「競馬の今日的意義は、実質的になくなっているのではないか」などの意見が出た。10月中旬に岩手競馬の存廃も含めて、県への報告書を提出する予定。

 群馬・高崎市では7月中に、国と県に対する2004年度の施策要望書を地元選出国会議員や知事、県議会議長に提出する。この要望書には、県の要望で存廃問題が取りざたされている高崎競馬について、早期廃止を求めることを明記した。県が設置した高崎競馬検討懇談会で、今後2年間で経営改善されない場合、速やかに廃止を決断する必要性などの提言を受けてのこと。

 高知県では、6月23日、高知競馬の第4回開催(6月7日〜6月22日)分の収支が1068万円の赤字で、第5回開催も含めた第1四半期(7月6日まで)の収支予測は2700万円の赤字の見通しとなることが明らかとなった。
 当初、県は2003年度から、四半期ごとに収支を公表して、赤字ならその時点で廃止する方針だったが、6月24日に、経営存続の可否を判断する高知競馬事業運営協議会が開かれ、経費を削減して今後も競馬を継続することを決めた。レース賞金など「賞典奨励費」の2003年度当初比38%減、県競馬組合職員の給与の10%減、県市職員も含めた同職員の管理職手当の50%減、当面の馬場改修費用など予算執行の凍結などを実施して、第2四半期(10月13日まで)が終了した時点で260万円の累積黒字を見込む。(田中潤)