5月15日、大阪府教育委員会は2004年度の教員採用試験で、他都道府県の現職教員100人の採用枠(その内訳は小中学校約80人、高校約10人、養護学校など約10人、養護教諭など若干名)を設けると発表した。筆記試験や実技テストも免除する。府教委によると、他に現職教員の受験者に特別措置を講じている自治体は、福島県・東京都・福井県・徳島県・香川県・横浜市・福岡市・北九州市の5都県・3政令市。ただし、現職教員対象に採用枠を設けるのは大阪府が初めてとのこと。
これに対して、和歌山県教育委員会は翌16日、現職教員の流出を懸念し、府教委に採用枠の白紙撤回を求める抗議文を郵送した。県教委は20日にも、「他県で特別な措置を行っている場合の事例や大阪府との違い」「『大阪府出身者を対象にする』ことの受験案内での明示」「和歌山県の教員を想定していないことの保証」などの質問状を府教委に提出した。 府教委は26日、県教委に対して「すでに発表したとおり実施したい」と回答し、採用枠撤回の考えがないことを示した。 29日、近隣1府4県(三重県、滋賀県、京都府、奈良県、和歌山県)の教委が「特別枠による他府県の現職職員の採用について」という要望書を大阪府教委に提出。「このような教員採用の方策は、(略)将来に禍根を残すことになりかねない」として中止を含めて再考するよう求めた。 これまで近畿2府4県は、受験者が重複しないよう試験日を同じにするなど協力しあっていた。
都市部では、地価下落によって住民の都心回帰が進み、「団塊世代」の孫が学齢期を迎えている。そのため、児童数の増加に伴い教職員を増やす傾向にある。大阪府の2004年度採用枠は約1480人と、過去15年で最高だった2003年度からさらに225人増やす予定。
どこの教委も有能な現職教員ならば引き抜いてでも採用したいというのが本音だろう。このような「教員特需」のなか、教委が他の都道府県に出掛けて教員採用説明会を開くケースも出てきた。大阪府教委が5月17日に広島市で、東京都教委が5月1日に仙台市、2日に大阪市で、広島県教委と市教委が5月14日に神戸市、21日に福岡市、27日に広島市で教員採用説明会を実施した。
先生を取り合う「仁義なき抗争」はしばらく続きそうだ。(田中潤)
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