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一番茶市場、産地表示の影響はほとんどなし

2003/05/27

 5月23日、静岡県茶市場の一番茶取引がほぼ終了した。開幕直前まで産地銘柄表示問題が市場の波乱要因になると予想されたが、大きな影響もなく業者は冷静に対応した模様。降雨などで前年より減産したが、茶況が高値で推移し約5%の増収となった。
 ただし、製茶問屋に仕上げ茶を販売する再製加工卸業者は、小売店の要請を受けて県内産に限る問屋が増えているため、県内産を重視する方向とのこと。今年の売れ行きによっては、来年以降の茶市場に大きな影響を与えそうだ。

 5月16日には、鹿児島県茶市場の一番茶取引がほぼ終了。鹿児島茶は知名度が低いため産地表示問題で不利とされたが、県主産地の知覧茶を売る小売店が増えるなど、前年比で取扱数量は9%増、平均単価はほぼ同じとなった。

 このように産地表示基準の影響はほとんどみられなかったようだ。
 そもそもお茶は加工品であり、JAS法に基づく国内の産地表示義務は定められていない。だが、牛肉などの産地偽造問題で産地表示を求める世論に押され、茶業界にも産地表示問題が飛び火した格好。
 日本茶業中央会は昨年12月にお茶の産地銘柄表示基準を「産地の荒茶比率が50%以上」と決めた。これを受けて、静岡県茶業会議所も静岡茶の基準を検討したが、80%以上の基準を求める生産者側と50%以上の基準を求める茶業者側が対立。結局3月17日に、間を取って70%以上の表示基準とすることを決定した。
 他には、宇治茶の地元である京都府で、「府内産50%以上、ブレンドは滋賀・奈良・三重の近隣3県の荒茶に限る」という基準が定められた。

 静岡茶は従来、県内産以外の荒茶が大部分でも仕上げ加工が県内ならば静岡茶と表示されていた。だが、新たに表示基準が定められることで、県産以外の荒茶の売り上げに大きな打撃となることが懸念された。
 また、茶業界では、複数産地の荒茶を混ぜて一定の品質の商品に仕上げる独特のブレンド加工技術のことを「合組(ごうぐみ)」と呼んでいるが、産地を表示することでこの秘伝の技が盗まれるとの声もある。

 5月26日、静岡県消費者団体連盟が実施した緑茶についてのアンケート調査で、「静岡茶」と産地表示する商品は100%県内生産茶であるべきだとする消費者が75%を占め、消費者と茶業界内の常識にズレが生じていることが明らかとなった。
 お茶には以前からブレンド技術という文化があったが、消費者は「100%なら100%」「ブレンドならブレンド」と明確に産地表示することを望んでいるようだ。(田中潤)