5月22日、仙台市では「くりでん運行対策検討協議会」の役員会が開かれ、第3セクター・くりはら田園鉄道の存廃問題について協議された。 同協議会によれば、沿線5町(石越、若柳、金成、栗駒、鶯沢)の人口は2000年に4万6868人だったのが2020年には3万5311人に減少。さらに、少子化による通学定期券の利用減も重なり、運賃収入が2000年の約6180万円から、2020年には約3685万円と半減するとのこと。 また、鉄道運行を継続した場合と宮交栗原バスに委託運行した場合の経費を比較した調査結果も報告。鉄道運行を継続した場合は年間経費が約1億4000万円かかるのに対して、委託運行した場合は初年度にバス購入などで約2億円必要だが、2年目以降は年間約8000万円となり、経費削減となる見込み。 2003年度は、県が3800万円、5町が1900万円の補助金を負担。県は2003年度で補助を打ち切る方針で、役員会は7月中に同鉄道の存廃を決める模様。
昨年の12月に開業した第3セクターの青い森鉄道は3月19日、2003年度の事業収支予算を承認。2003年度の旅客収入は2億6760万円と、2002年3月の鉄道事業許可申請時の計画額よりも1100万円減となった。また、開業後の定期・定期外収入実績は、12月分が4562万円、1月分が2817万6000万円で、申請時計画額よりもやや低くなっている。 12月の開業時には大きな話題となった同鉄道も収益は予想を下回るものとなった。
3セクの経営する鉄道は、冒頭で記したくりはら田園鉄道のように経営難で苦しんでいるところが多い。帝国データバンクによれば、「鉄道・その他運輸業」を行う3セク128社のうち、2001年度には23社が債務超過、52社が債務超過懸念となった。
昨年7月には国土交通省がもと国鉄特定地方交通線や公団建設線37社の2001年度の経常利益などを発表。黒字となったのは、北越急行(約9億9000万円)・鹿島臨海鉄道(約4400万円)・伊勢鉄道(約1000万円)・智頭急行(約5億4000万円)の4社のみで、残りは南阿蘇鉄道が収支ゼロだったのを除いて全てが赤字となった。 全体の赤字額は約20億円と前年度よりも約3億円減少。赤字が最も大きいのは北近畿タンゴ鉄道の5.5億円。北海道ちほく高原鉄道が3.8億円と続く。
5月10日付日本経済新聞によれば、3セクが経営する都市鉄道も苦戦していることが報じられている。東京都が146億円を補助する東京臨海高速鉄道(2002年度赤字見込み:62億5000万円)、埼玉県と川口市など沿線3市が360億円出資する埼玉高速鉄道(同90億円)、その他に広島市などが出資する広島高速鉄道(同6億円)、東京都などが出資する多摩都市モノレール(2001年度赤字実績:29億7000万円)、千葉県や千葉市などが出資する千葉都市モノレール(同9億7800万円)、横浜市などが出資する横浜新都市交通(同4億2600万円)、愛知県や小牧市などが出資する桃花台新交通(同2億5400万円)、大阪市などが出資する大阪港トランスポートシステム(11億7700万円)が「経営状態の厳しい主な都市部交通第3セクター」として紹介されている。
そんななか、第3セクター・しなの鉄道は4月30日に2002年度決算を了承。減価償却前利益が9480万円となり、3月の決算見込み段階での6200万円を上回り、1997年に開業して以来、償却前損益が初の黒字となった。また、旅客数は減少率0.9%(以前までは前年比2〜4%で推移)にとどめた。 杉野正氏が社長として就任した昨年6月の時点で、同鉄道の累積赤字は約24億円と惨憺たる経営状態。だが、JRからの出向社員の削減などリストラ策で支出を抑え、イベント列車などでイメージアップを図り、旅客収入の落ち込みを減らすなど、3年で償却前損益を黒字にするという目標を1年で達成した。 ただし、5億円近い減価償却費により、経常損益は約3億9000万円の赤字、累積赤字は約27億2900万円となった。(田中潤)
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