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長野県が合併せず単独自立を目指す自治体支援へ

2003/05/23

 5月13日、田中康夫長野県知事が合併しない自治体への財政支援策として、県独自の財政支援制度の具体的な内容を夏までにまとめることを明らかにした。田中知事は、国の合併推進策について「合併を選択せず努力していく方々の税金も使って合併特例債が構成されており、公正さを欠く」と批判。県独自の財政支援制度として、各町村の医療、福祉、地理条件などの事情を反映する仕組みを目指す考えを説明した。

 寺田典城秋田知事は5月12日、単独自立を目指している自治体に対して、独自で運営できる財政的根拠の提示を求める考えを示した。寺田知事は合併しない自治体に対しては県が財政支援するという考えだが(2003/04/01の記事を参照)、自立を選択する自治体に対して、実際に財政運営できるのかどうか懸念している。
 また、知事は合併に対する考えとして「合併を強制するつもりはない。あくまでも地域が自立するための合併であるべきだ。市町村のいろいろな事情をわきまえた上で進めていきたい」と述べている。

 総務省によれば、2003年5月20日現在で法定協議会に参加している自治体数は1283。全自治体数3190のうち約40%が合併に向けて動いていることが分かる。全体的には合併への流れが激しくなっているなか、合併せずに単独自立を選択する自治体もわずかながらいくつかある。冒頭で述べたように、県がそのような単独自治体に対してバックアップしようとする動きも出てきた。

 統一地方選で合併が争点となったが、いくつかの自治体では、合併反対派が勝利して新首長が単独自立を宣言した。

 群馬・玉村町では5月7日、渡辺孝宏新町長が、オブザーバーとして参加していた伊勢崎、赤堀、佐波東、境の4市町村でつくる伊勢崎佐波広域市町村任意合併協議会から離脱する意向を表明。当分は単独自立路線を進めていく方針。それでも、将来的には前橋市や高崎市を中心とした政令指定都市構想への参加に含みを持たせた。

 吉岡町では、統一地方戦から2日後の4月29日、小林稔彦新町長が「合併しない宣言」をすることを明かした。統一地方選で同町長は合併について「原則として自立、理想は自立」としていた。

 長崎・小値賀町では5月13日、山田憲道新町長が佐世保市と宇久町に対して、佐世保・宇久・小値賀任意合併協議会から離脱する方針を伝えていたことが明らかとなった。宇久町の田中稔町長は「小値賀町が脱退しても、佐世保市との合併を進める」と述べている。

 熊本・城南町では、5月2日の熊本日日新聞紙上で小林佳之新町長が、「当面は町単独で運営し、合併しなかった町も含め近隣の市町の状況を見極めてから判断したい」とコメント。選挙戦で同町長は熊本市との飛び地合併に反対を掲げていた。

 4月以降に、単独自立で自治体運営を行っていく意向の自治体もいくつか出てきた。

 岩手・陸前高田市では5月15日、市議会全員協議会で、広域行政の基本方向として「当面は単独でやっていくことが最善の道」とする方針を示した。中里長門市長も「報告を基本的に尊重する。合併については最終的に市民が判断する」としている。

 秋田・藤里町では4月26日、町議会全員協議会で、石岡錬一郎町長が「合併せず、単独で進むことを決意した」とし、近く能代山本8市町村でつくる能代山本地域市町村合併任意協議会から離脱することを表明。議会側も町長に賛成し、2005年3月の合併特例法の期限内には合併しない方針を確認した。

 山形・鮭川村では4月19日、「市町村合併を考える会」で、小屋豊孝村長が「合併は時期尚早」と、最上8市町村による広域合併には参加しない方針を明らかにした。また、「合併すると議員の数も減る。今は村民が決定権を持っているが、要求しても通らないことが出てくる」との懸念を示した一方、「住民の意見を聞いて、賛成が総意ならば従う」とも述べた。

 三重・紀伊長島町では5月12日、臨時課長会議と議員懇談会で、奥山始郎町長が「合併せず、自立の道を歩む」と表明。「住民との距離が遠のく」「合併しても、財政の厳しさは変わらない」などを理由とし、スケールメリットや合併特例債の効果についても、懐疑的な考えを示した。

 広島・神辺町では5月17日、町文化会館で行われた合併問題講演会で、佐藤秀毅町長は「神辺町には財政的な余裕があるので当面は単町でいきたい」と町長としての見解を明らかにした。それでも、会場に詰め掛けた町民の中には、合併の是非云々よりも、合併に関する情報が不足していることを不満としている者もいた。(田中潤)