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埼玉・幸手市と茨城・五霞町との県境合併、暗雲漂う

2003/05/19

 4月27日に実施された幸手市議会では、合併が大きな争点となった。2005年3月の合併特例法の期限までに五霞町との合併を目指す市長派と、期限にこだわらず久喜市・鷲宮町との合併推進を目指す反市長派が対立。市議選の結果、市長派が改革(3人)、新幸会(3人)、共産(2人)、社民(1人)、無所属(3人)の計12人、反市長派が「市民クラブ」(9人)、公明(4人)の計13人となり、反市長派が市長派を逆転、勢力地図が塗り替えられた。これで、6月議会では合併問題を巡って激しく争われることになりそうだ。

 五霞町は茨城県内で唯一利根川の南にある自治体。元々利根川は現在よりも南側に位置していたが、江戸時代に数回の流路変更を行い現在の位置になった。
 このような地理的な理由に加えて、ヤクルトやキューピーなど優良企業約70社が進出している工業団地や圏央道のインターチェンジができるなど五霞町の財政面でも魅力を感じ、増田実幸手市長は県境合併に動き、8月には五霞町と研究会を発足した。
 12月11日には、10〜11月に実施した五霞町のアンケート結果で、合併相手として幸手市が44.1%でトップとなったことを受けて、幸手市は五霞町の合併を推進する方針を決めた。

 だが、幸手市が7〜8月に実施したアンケート調査では、合併の相手先として久喜市がトップで80.6%、杉戸町が68.3%、鷲宮町は53.5%と続き、五霞町は23.7%で6番目。
 さらに、合併を推進する幸手市に対して、市民グループが約6000人の署名を集め(法定数は905人)、合併特例法に基づく住民発議(久喜市、鷲宮町との2市1町の法定合併協議会設置請求)を提出。3月18日の市議会で、「幸手市の合併について意思を問う住民投票条例案」は賛成11人、反対13人で否決された。
 4月1日には、県境合併としては岐阜・中津川市と長野・山口村に次いで全国2例目の法定協が設置された。

 それでも、幸手市長は久喜市などとの合併を求める声の大きさに配慮したのか、「広報さって」4月号に、1月27日に田中暄二久喜市長と面談した際、幸手市が五霞町と、久喜市が鷲宮町とそれぞれ別で法定協議会を設置して期限内の合併を実現後、さらに両市が合併して中核市の実現に向かうことに合意したという「合意メモ」の原文を全文紹介。
 久喜市長はメモの存在は認めたものの、「その後幸手側で久喜優先を求める住民発議が行われ、状況が一変した。幸手市長は自分の都合のいいようにメモを利用している」として文書で厳重抗議。このような「合意メモ」を相手に事前連絡せずに暴露したのも異例なら、文書を巡って相手から抗議を受けるのも異例の事態となった。

 このような動きのなか、4月27日の幸手市議選は反市長派が勝利し、一気に形成は逆転。それでも、5月14日の臨時議会で、正副議長は市長派から選出された。反市長派の公明党(4人)が白票を投じたためだが、公明党市議団は「白票にしたのは苦渋の選択だが、久喜との合併を推進する公明のスタンスは変わらない」としている。同日、市長派からも久喜・鷲宮との合併推進協議会を立ち上げようという動きも表面化。幸手市と五霞町との合併は混沌としてきた。

 五霞町にとっては、自分ではどうしようもできないのが現実。町民の生活圏は幸手市などの埼玉県だけに、どうにか埼玉県に入れてやってほしいものだ。(田中潤)