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市町村合併を巡り中学生も住民投票 全国初

2003/05/13

 5月11日、長野・平谷村では合併の是非を巡って中学生以上の村民を対象とする住民投票が実施された。中学生に投票資格が与えられたのは全国初のこと。
 当日の有権者数は530人でそのうち中学生は25人。投票者数は469人(投票率88.49%)で中学生は24人となった。「合併する」が341票(74.29%)、「合併しない」が118票(25.71%)となり、「合併する」が「合併しない」を上回る結果となった(無投票は10票)。
 同村長は「結果を尊重し、村民に最良の合併を考えたい」とコメントしたが、相手先が決まっていない段階での住民投票に村民からは疑問の声も上がっている。

 義務教育も終えていない中学生に合併の是非を判断するのは難しいという意見もあるが、将来の村の担い手となる中学生に自分たちの村について考えてもらうのは貴重な機会でもある。

 なお4月7日に、佐賀・三瀬村議会では合併の是非を問う住民投票条例制定案が可決。15歳(中学3年生)以上を対象として、若者の意見を反映させられるようにした。総務省によれば、住民投票で中学生まで対象にしているのは、平谷村に次いで2例目となる。

 5月11日の同日、鹿児島・下甑(しもこしき)村でも、合併反対派の村議7人の解職の是非を問う住民投票が実施された。合併賛成派の村長が2月、川内市など川西薩地区との合併関連費を一般会計補正予算案に計上したが、7議員が「合併すると住民サービスが低下する」として予算案を否決。それを受けて住民グループが「合併しなければ、村は財政的に生き残れない」として、7人の解職を請求していた。
 翌12日に開票され、7議員全員の解職賛成票が反対票を上回り、全員失職となった(投票率86.36%)。失職議員が定数の6分の1を超えたために、50日以内に村議会の補欠選挙が行われることとなった。村長は「民意は広域合併を選択した」として川西薩地区との合併に向けて、動いていく意向を示した。

 5月に住民投票が実施される自治体は他にもいくつかある。

 5月18日、大分・朝地町では「大野郡5町2町での合併」か「竹田市、直入郡3町との合併」、犬飼町では「大野郡5町2町での合併」か「大分市との合併」のどちらかを選択する住民投票が実施される。

 5月25日、岐阜・岐南町では「岐阜市など2市3町と合併」「各務原市など1市1町と合併」「合併しない」を問う住民投票が実施される。

 同日、岡山・久米南町では、「津山市を中心とした合併」「建部町と合併」「久米郡で合併」「合併しない」を問う住民投票が実施される。

 同日、奈良・東吉野町では、合併協議の相手に「宇陀郡」「吉野郡」のどちらかを選択する住民投票が実施される。

 4月28日の統一地方選と同日に実施された住民投票の結果は以下の通り。

 大阪・堺市との合併を巡って高石市では、住民投票と市長選、市議選とトリプル選となった。住民投票では合併反対が全体の7割。市長選では、合併反対を訴えていた新人の阪口伸六氏が2万2559票で当選。現職の寺田為三氏は堺市との合併で政令市を目指していたが、住民投票で「合併に賛成」「合併はやむを得ない」「合併に反対」の3選択肢のうち2つが合併に賛成と受け取れるため批判を集め、反対派が阪口氏に投票した模様。

 法定協設置を巡って長崎・三和町と野母崎町では住民投票が行われた。三和町では「賛成」3364票、「反対」4186票、野母崎町では「賛成」1270票、「反対」3988票となり、両町とも反対多数で、2町の法定協設置は見送りに。
 三和町では同日、町議選も行われダブル選、野母崎町では町長選、町議選が行われトリプル選に。野母崎町長選は、新人同士の争いとなった。熊孝美氏は「住民投票の結果で合併先を決める」とし、本田勝憲氏は長崎市との合併推進を訴えていた。本田氏が3991票を集め当選。熊氏は1305票止まりだった。

 合併の是非と枠組みを巡って埼玉・菖蒲町では、町議選と同日に住民投票が実施された。「久喜市と鷲宮町との合併」が42.9%、「蓮田市と白岡町との合併」が43.1%、「合併しない」が14.0%となり、18票差で「蓮田市と白岡町との合併」が上回った。同町長は「蓮田・白岡両市町と、なるべく早く法定協を立ち上げ、法定期限内の合併実現に最善を尽くす」とコメントした。(田中潤)