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首長選は無投票当選が減少:合併問題が原因か

2003/05/07

 4月21日付読売新聞によれば、統一地方選で実施される市長選は123市あり、無当選投票となるのは14市だという。1991年は40市、1995年は31市、1999年は24市と無当選投票は比較的減少傾向にあったものの、今回は1999年より10市減少となり、さらに減少傾向に拍車がかかっている。

 合併の是非や相手自治体の選択など争点が明確となっており、現職の方針に反対する人が立候補しやすいようだ。

 4月18日付毎日新聞によれば、27日に実施される統一地方選で首長選のある市町村は658、そのうち88市町村で合併が争点になっていないという。

 合併が争点となっている例をいくつか紹介する。

 広島・湯来町では、現職とその長女が合併を巡って町長選に立候補し、母娘対決として注目を浴びている。現職は、広島市との合併を進めるためごみ処分場の誘致を主張。それに対して長女は「処分場誘致は町の環境破壊につながる。合併問題についても改めて町民の意見を問いたい」と反対している。

 岐阜・安八町では、48年振りに選挙戦となり話題を呼んでいる。大垣市が進めている西濃圏域での大合併について、当初明確な態度を示してこなかった現職に対して、合併推進派の新人は「合併研究会を途中退席したり、町議会一般質問で他の合併の枠組みも選択肢にするなどと答弁し、迷走した」と現職を批判。それに対して、現職は「現在は大垣市との法定協に参加し、合併に向かっている」と主張している。

 茨城・新治村では20年振りの選挙戦。土浦市、霞ヶ浦町、千代田町との4市町村合併を訴える現職は「合併を実現しないと、村が孤立し、取り残される」と主張。それに対して、新人は「住民の意見を吸い上げて、合併という難業に立ち向かいたい」「住民の思いを一度も聞かないまま、合併を進めていいのか」などと訴えている

 県境合併で注目となっている長野・山口村でも、改めて合併を巡り激戦となっている。合併の旗振り役である現職は「合併しないと村が孤立しかねない」と述べている。それに対して合併に慎重姿勢をとっている新人は「信州の山口村か、岐阜県の山口村かを問う選挙だ」と反対している。

 宮城・色麻町では、合併協議からの離脱を巡って町長選が繰り広げられている。4月1日に県北西部の加美郡3町(中新田町、小野田町、宮崎町)が合併して人口2万8000人の加美町が誕生。その際、特例市の要件である人口3万人を割り込み、市に昇格できなった。その原因は人口8100人の色麻町が合併協議から離脱したことにある。

 現職は「町民に合併は性急との意見が多い」として、合併協から離脱。それに対して、「小さな町のままでは生き残れない」と反発し、前町議が「1年以内の合併」を公約に立候補。「加美町と一緒になるのが使命。1年限りの町長で構わない」と述べている。

 「福祉の先進地」として知られている秋田・鷹巣町では、「福祉維持か合併か」を巡って町長選となった。新人が「日本一の福祉は日本一お金がかかる。現町政は福祉偏重で、町の経済は衰退する」と主張しているのに対して、現職は「合併すると福祉水準が周辺町村並みに下がってしまう」と合併に消極的。

 静岡・浜松市では、合併の是非や枠組みが争点となり市長選となっている。浜名湖周辺の14市町村での合併構想を進める現職に対して、新人は別の枠組みや合併の是非そのものを疑問視。

 浜名湖周辺14市町村が合併すれば、人口は80万人を超えて、4月1日に誕生した新静岡市を抜いて県内最大の都市となる。

 それに対して、元市議は「経済での結びつきが強い磐田市、浜北市との組み合わせ」を主張。共産党推薦候補は「まず住民投票で市民の意思を問うべき」と合併自体に疑問を呈している。

 なお読売新聞によると、市長選の無投票当選が減少したのに対して、市議選では無当選投票の277人となり、前回1999年の43人を大きく上回り、1991年の239人を超えて過去最高となっている。市議選では、合併問題ではなく、もっと身近な地域の問題に住民の関心が向けられているということだろうか。(田中潤)