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「統一地方選と合併」総括(総括表

2003/05/07

 4月28日に実施された統一地方選後半戦は、2005年3月の合併特例法の期限が迫っており、合併問題が争点となることが推測された。

果たして合併問題は争点だったのか

 だが、4月18日付毎日新聞によると、今回の首長選は658市町村で行われ、そのうち法定あるいは任意協議会に参加しているのが433市町村、研究会に参加したり、合併拒否など何らかの形で合併問題を抱えているのが125市町村と558市町村が合併問題に直面しているとのこと。その中で無投票当選が261市町村あったので、残り297市町村で首長選が行われ、そのうち合併が争点となったのは88市町村。つまり、合併問題に直面している市町村のうち15.8%が、法定・任意協に参加している市町村のうち20.3%が首長選で合併が争点となったことになる。この数字は決して高いものとはいえず、約8割の自治体では、これまでの合併への取り組みについて(暗黙のうちに)是認したことになる。

各紙の報道では若干「合併反対」が優勢

 4月28日の首長選を終えて、各紙の報道ぶりをいくつか見てみると、4月28日付朝日新聞では、「推進23、慎重14」「合併 割れた選択」と合併を巡って「勝敗はまだら模様となった」としている。4月28日付産経新聞では、「合併慎重派の当選相次ぐ」と合併に反対・慎重派の当選が多かったように記している。4月29日付毎日新聞では、「合併にNO!」との見出しで、合併反対・慎重派が優勢のように受け取れる。4月29日付読売新聞では、「「合併」に民意は様々」と合併推進派と反対・慎重派がせめぎあったとしている。4月29日付東京新聞では、「平成大合併ブレーキ」「慎重派の当選続出」などの見出しで、合併反対・慎重派の誕生が相次いだと報道している。

 一方、政府では「今回の選挙結果は6対4で推進派が勝った感じがする」(上野公成官房副長官)との見方である。

合併問題が争点になったのは81市町村、そのうち合併反対・慎重派は19市町村

 こちらの調べでは、統一地方選で合併についての是非や相手先など合併問題が争点として取り上げられているケースは81あった(全市町村名はこちらを参照)。そのうち、合併推進派は36市町村、合併反対・慎重派は19市町村が当選。残り26市町村は合併の相手先が争点となった。

 合併の相手先が争点となった26市町村は、合併するという前提で合併の枠組みが争点となった。そう考えると、合併推進派36市町村と合わせて62市町村が合併する方針となり、反対・慎重派19市町村と比べると、合併に向けて推進していく市町村が多いように受け取れる。

 合併賛成派が当選した36ケースの中で、現職が当選したケースが22、新人が5、現職が立候補せず新人同士で争われたケースが9。合併反対・慎重派が当選した19ケースのうち、現職が当選したのは4、新人は10、新人同士で争われたケースは5であった。

合併反対派の当選は合併協に参加している自治体のうち、たった1% 

 朝日新聞では約70、毎日新聞では約90の市町村で合併が争点となっていることを記しているが、こちらの調べが81市町村と統計の取り方に若干のブレはあるものの、ほぼ近い数字といえるだろう。

 冒頭に取り上げた毎日新聞のデータで合併問題に直面する558市町村のうち3.4%、法定・任意協に参加している433市町村のうち4.4%の19市町村で合併反対・慎重派が当選している。

 さらにいえば、1月1日時点で法定協に参加しているのが791市町村、任意協に参加しているのが827市町村と合計1618市町村。このうち合併反対・慎重派の当選は19市町村なので、合併協に参加している市町村のうち、わずか1.2%しか反対・慎重派は当選しなかったことになる。

 以上を総括していえば、今回の首長選では、合併問題は必ずしも大きな争点になったとはいえず、また、争点になったところでも、合併推進という方針を再確認したケースが多いということになる。
 これまでは、合併推進は上からの押し付けであるとの反論もできた。しかし、こうした選挙を経た今となっては、そうした反論はできないことを選挙民は肝に銘ずべきだろう。


【具体的ないくつかの例】

・合併賛成の現職が当選した例

 母娘の対決で話題となった広島・湯来町は、ごみ処分場誘致と引き換えに広島市との合併を訴えていた現職の中島正子氏が1884票で再選。その娘の箕浦和子氏は230票で候補者4人の中で最下位。箕浦氏は「母娘対決だけが注目され、本当の争点がぼやけてしまった」とコメント。話題になったほど、票集めにはつながらなかった。

 岐阜・中津川市との県境合併を進めている長野・山口村は、合併推進派で現職の加藤出氏が885票で三選。山口村は既に中津川市と法定協を設置しており、これまでの加藤氏の合併方針に住民が賛成するという判断を下した。ただし、合併反対派の可知和人氏が635票と、加藤氏の得票数の約7割を集めたことから、加藤氏は「合併は信任されたが、まだ理解してもらっていない層が多くいることも分かった。選挙結果をしっかり念頭に置き、住民に説明していく」と述べた。

・合併反対の現職が当選した例

 宮城県加美郡からの合併協議離脱を巡って争われた色麻町は、現職の伊藤拓哉氏が2921票で三選。伊藤氏は住民意向調査での住民の意見を参考にして、加美郡合併から離脱。それに対して、2591票集めた新人の相原昌昭氏は加美町との1年以内の合併を公約にしていた。

・合併賛成の新人が当選した例

 「福祉か合併か」を巡って争点となっていた秋田・鷹巣町は、新人の岸部陞氏が9294票を集めて当選。現職の岩川徹氏は同町の「福祉レベルの維持」を唱えて、北秋田郡4市町村との合併に否定。それに対して岸部氏は「合併を進めて、地方分権に耐えられる体力を作る」ことを公約としていた。

・合併反対の新人が当選した例

 20年ぶりの選挙戦となった茨城・新治村は、合併について住民投票を実施するなど住民の意思を確認することを訴えていた新人の完賀浩光氏が3096票で初当選。土浦市など4市町村での合併を推進していた現職の御田寺義也氏を74票差で競り落とした。

・合併の枠組みを巡って争われた例

 静岡・浜名湖周辺14市町村との合併を巡って争われていた浜松市では、合併構想を進めてきた現職の北脇保之氏が14万7104票を集めて二選。磐田市など別の枠組みでの合併を主張していた大岡敏孝氏は7万9426票で大差となった。(田中潤)