4月1日に、全国10県の33市町村が合併して7市4町が誕生した。これによって、全国の市町村数は3212から22減って3190となった。合併で10以上の自治体が一度に誕生したのは、1950年代から60年代にかけての「昭和の大合併」以来となる。
そのうち、広島・呉市と愛媛・新居浜市は編入合併、その他の9市は対等合併。また静岡市は、福島・いわき市を抜いて、全国で最も面積の広い市となった。
こうした合併推進のために、国が用意した「アメ」が合併特例債である。特例債は、まちづくり建設事業として、公共施設や土木建設事業などを中心に、地方自治体に起債を認めているもの。特例法の期限(2005年3月)までに合併した自治体に対して、10年間は事業費のうち5%を元手に起債が認められており、それら償還金の70%を国が交付税で措置してくれる。経済同友会の試算によれば、特例債は10年間で最大20兆円に及ぶという。
そこで、4月1日に誕生した11市町に認められる合併特例債の額を、総務省のホームページ(http://www.soumu.go.jp/cyukaku/gappei/)から算出。他の自治体と比べると静岡市(504.5億円)が最も多く、南アルプス市(434.6億円)、宗像市(183.4億円)、東かがわ市(178.6億円)と続く。一人当たりの額を比較すると、神流町(120.6万円)、あさぎり町(77.5万円)、大崎上島市(76.3万円)と続き、人口の少ない自治体に厚い配分がなされている。
静岡市では合併特例債を見込んで、バーチャル水族館やオペラハウス、新庁舎などの新市建設計画を策定している。
だが、4月6日に告示される静岡市長選の争点として、建設費25億円の新庁舎建設がひとつの争点となった。新庁舎は、旧静岡市と旧清水市の境に近い東静岡地区での建設が予定されている。
このことについて、小嶋善吉・現静岡市長は「合併協で約束したことを守らないのは、合併そのものの精神が崩れてしまう」として新庁舎建設推進を主張。それに対して、他の候補者である天野進吾・元静岡市長や共産党推薦の小沢猛男氏らは、「新庁舎は無駄なハコモノであり、それらの建設費を福祉などにまわすべきだ」と論争を繰り広げている。
新庁舎建設計画は特例法の財政優遇措置から出たもの。だが、特例債は対象事業が限定されているので、結局はハコモノ行政となってしまう。
一方、使途が限定されない地方交付税に関しては、合併後10年間は、合併前市町村の交付税の合算額を下回らないように算定するが、その後、5年間で段階的に減額されることになっている。
ハコモノ行政を助長する特例債の増額は認めているが、自治体が自由に使うことのできる交付税は最終的に減額する。このようなやり方で、果たしてどれくらいの自治体が独自の行政を行い、自立することができるというのだろうか。(田中潤) |