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合併せず自立する自治体の思惑と現状

2003/04/01

 3月4日、秋田県の寺田知事が2月定例県議会で、合併しない自治体の財政運営がうまくいかなかった場合、県が財政支援する考えを明らかにした。ただし、県の支援はあくまでも緊急避難的なもので、県の支援があれば合併しなくてもいいというわけではないことを強調した。

 3月11日には、上小阿仁村の北村村長が寺田知事と懇談。村長は知事に対して、合併の態度はまだ決めていないが、単独自立を目指す考えがあることを明らかにした。これを受けて知事は、合併しない場合は村の行財政改革計画を提出するよう求め、慎重な検討を要請した。

 ちなみに秋田県内において、単独自立で存続する意思のある自治体をいくつか紹介する。

 3月12日、東成瀬村の佐々木村長が、合併特例法の期限内の合併はできないと、当面は自立の道を模索することを示した。

 2月20日、羽後町の佐藤町長は知事に対して、合併しないことを正式に宣言した。特例法期限内の合併見送りを決めたのは、羽後町が県内初となった。

 このように合併せずに自立して自治体運営を目指すような例は、全国3000くらいある自治体の中でもわずかだ。1月以降に単独自立の方針や意思が明らかになった例は30件もない。

 3月12日、群馬・上野村の3月定例議会で、議員発議の「健全な自治存続に関する決議」を全員一致で採択、議会として合併しない意思が明らかになった。決議には「国が進める合併政策は小規模自治体切り捨てとも思える主張が加速しており、強制合併的な色彩を強めて」おり、「合併は自主的判断で行われるべき」だという考えを示した。

 3月5日、富山・氷見市の3月定例市議会で、堂故市長は特例法の期限までには合併せず、行財政改革を着実に実行していくことを表明した。

 3月5日、福井・勝山市の定例市議会では、山崎市長が2005年3月末までの合併は見送り、単独自立の方針を明らかにした。

 こうした議会や自治体首長が単独自立を明らかにする例は、岐阜・美濃市、香川・坂出市、香川・直島市、岩手・住田町、岩手・山田町、鳥取・日南町、青森・平内町、長野・松川村、静岡・東伊豆町、高知・馬路村などいくつかある。

 なかには、苦渋の選択で単独自治を余儀なくされる例もある。

 2月27日、秋田・大東町議会の市町村合併に関する調査特別委員会で、小原町長は一関地方任意合併協議会への参加を断念すると表明。9月定例議会で可決した協議会の負担金186万4000円を2002年度内に執行できないことから、一関市の浅井市長から大東町を協議会に加えられないと説明されたのを受けて、合併を望みながらも、結果的には門前払いを食ってしまった格好。委員会において、町長は悔し涙で声を詰まらせていた。

 3月7日、青森県では名川町、南部町、田子町を含む8市町村議会が八戸地域の法定協議会設置を決議。これを受けて、三戸町は合併問題で孤立する恐れも出てきた。三戸町はこれら3町または名川町を除く2町との三戸地域合併を模索しており、八戸地域の法定協移行により三戸地域での合併は不可能になった。

 首長と議会の意思が捩れている例もある。

 3月6日、富山・滑川市議会では、中屋市長が当面合併しない方針を表明。単独行政に向けて財政改革の方針を示した。だが、市議会は「17年3月をめどにした合併」について「11対8」で可決。それでも、合併の相手が富山広域圏と魚津市に分かれているのが現状で、合併の枠組みがまとまらない限りは、市長は単独の方針を貫くとみられている。

 3月10日、高知・日高村議会で、中野村長は単独自立を表明。だが12日、村長の判断に対して村議会から反発の声があがり、村長に方針撤回を求めて、議会は空転した。

 首長が単独自立を表明していたのに、突然、その方針を変更した例もある。

 1月29日、熊本・高森町の今村町長らは久木野村、長陽村を訪れ、白水村も加えた南阿蘇3村任意合併協への加入を口頭で申し入れた。高森町は元々、3村に蘇陽町を加えた南阿蘇5町村での合併を目指していたが、昨年10月に久木野村、長陽村、白水村が3村で任意協設置。これを受けて、高森町は単独路線を表明していた。

 その後、蘇陽町は矢部町、清和村との合併に向けて動いていたが、高森町との合併を望む住民発議を受けて、1月21日に高森町に対して法定協設置を議会付議するか意見照会。これに対して、「真摯に受け止め、議会合併特別委とも十分協議したい」と今村町長は答えていただけに、蘇陽町側もこの高森町の独自の行動には反発。久木野村、長陽村もまもなく法定協に移行しようとしていただけに、困惑している。(田中潤)