埼玉・岩槻市はさいたま市に対して合併協議を申し入れた(2月5日)。住民投票(1月26日)の結果、合併の相手先として「さいたま市」が過半数となったのを受けてのこと。岩槻市は「編入合併」と議員の定数が大幅に減る「定数特例」を提案。議員定数を減らしてでも、さいたま市と合併したいという積極的な姿勢を見せた。
これを受けてさいたま市議会は岩槻市との任意協設置案を可決(2月11日)、4月に行われる、さいたま市、岩槻市の両議会選挙後に、任意協が設置される見通しになった。
このように、合併のひとつの争点として議員定数の問題がある。地方自治法では人口によって議員定数が決められているので、合併で人口が増加しても全員が議員のままでいられるわけではない。となれば、規模の小さな自治体の議員にとっては、合併に消極的にならざるをえない。そこで、議員を合併に誘導するための制度として、合併特例法で「在任特例」と「定数特例」などの議員特例が認められている。
在任特例とは、合併後2年以内は選挙なしで新市町村の議員のままでいることができるというもの。
たとえば、静岡市と清水市は4月に合併するが、静岡市の議員45人、清水市の議員33人の合計78人は、2005年3月までそのまま議員の任期を延長することができる。2005年3月の選挙の際、地方自治法によって、議員定数が56人となる。
ちなみに、議員報酬に関しては、静岡市の議員の年収が1350万円、清水市の議員年収は981万円と、約300万円ほど報酬に差がある。合併で発足する新市町村の議員報酬は、高い方に合わせるという動きが全国的には多い。そんななか、3月3日の清水市特別職報酬等審議会で、清水市の議員報酬をそのまま変えずに「1市2制度」とする方向で話がまとまった模様。
もうひとつの定数特例とは、新設合併に伴い議員の選挙を行う場合、合併後1期4年に限り、法定数の2倍以内の議員定数で選挙を行うことできるというもの。また編入合併の場合は、編入する市町村の人口に対する議員の割合で、編入される側の人口から増員数を割り出し、議員を増員することができる。
2月3日、広島県の内海町と新市町は福山市に編入合併された。その後2月23日に編入された2町で定数特例による増員選挙が実施。福山市の人口は約38万人、議員数は38人なので、議員は1万人に1人という計算となる。内海町(人口約3400人)からは1人、新市町(人口約2万1000人)からは2人の議員が増員され、福山市の議員定数は41人となった。とはいえ、内海町には12人、新市町には18人の議員がいたので、そのほとんどが議員でなくなったことになる。冒頭に挙げた岩槻市が定数特例を提案したということは、27人の議員が7人に減っても合併したいと申し入れたわけだ。
その他、呉市・川尻町合併協(広島県)や呉市・下蒲刈町合併協(広島県)、東宇和・三瓶町合併協(愛媛県)などが定数特例を適用することを決めている。
定数特例だと法定数の2倍以内の議員定数での選挙が認められるのは、新設合併の場合だけで、編入合併の場合は福山市のケースのように大幅に議員は削減される。だが、在任特例ならば、新設合併の場合、合併後2年間(編入合併の場合は編入先の残任期間)は選挙なしで議員の身分を確保できるので、議員の側からすればまだ抵抗感が少ない。そのため、合併する自治体のほとんどが在任特例を適用している。
だがこうした特例自体、「議員の保身のための制度」「予算の無駄遣い」など批判の声も多い。そんななか、特例を適用せずに自治法の決まり通りの議員定数とする自治体も全体からみればごくわずかだが、以下のようにいくつか出てきている。
上島合併協(愛媛県)、峰山町・大宮町・網野町・丹後町・弥栄町・久美浜町合併協(京都府)、天草合併協(熊本県)、飛騨4町村合併協(岐阜県)、御前崎町・浜岡町合併協(静岡県)、観音寺市・山本町・大野原町・豊中町・豊浜町・財田町合併協(香川県)、杵島6町合併協議会(佐賀県)、柏原町・氷上町・青垣町・春日町・山南町・市島町合併協(兵庫県)、益田郡合併協(岐阜県)、西伯町・会見町合併協(鳥取県)、高島地域合併協(滋賀県)、南部町・南部川村合併協(和歌山県)。
恵那市・恵南町村合併協(岐阜県)、丹生郡町村合併協(福井県)では継続審議中である。(田中潤) |