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申し込み順から緊急度順へ、特養の入所

2003/03/14

 和歌山県は3月7日、特別養護老人ホーム入所指針を発表した。各施設は合議制の検討委員会を月1回開催し、要介護度や痴呆の程度、介護者の有無、在宅サービスの利用率を基本的評価基準として点数化し、さらにそれに性別や居住地、経済的事情など個別的評価事項を加味して総合判断し、上位の順から入所選考者名簿を作成し、入所順位を決定する。名簿は検討委員会の開催ごとに改められることになる。指針の実施は4月からで、実際の入所は7月ごろからの予定。

 佐賀県は、3月10日、特別養護老人ホーム入所の優先順位を決めるための「入所指針」をまとめた。入所希望者の要介護度や介護する家族の状況、痴呆性老人の場合は日常生活自立度を調査し点数化して、それぞれの施設に設けられた検討委員会が入所の緊急度を判断し、緊急度の高い人から入所させる。運用は4月から。

 静岡県も1月23日、優先入所指針を策定し、4月から運用する。また、福島県も3月中に指針を策定し、6月頃から運用を開始する準備を進めており、香川県も4月からの導入を目指して関係先と協議中である。

 このように各地で特養老人ホームの入所基準を策定しだしたのは、介護保険導入によりだれもが特養に入所できる権利を与えられ、入所希望者が急増したためである。特養の入所は、厚労省の省令(運営基準)により、申し込み順と決められていた。こうなれば、差し迫った必要性はなくとも、念のため申し込んでおくというケースが急増するのは当然である。その結果、本当に入所が必要な人が入所できないという問題点が指摘されていた。

 東京・品川区では、2000年4月の介護保険制度導入と同時に、区に地域医療関係者、福祉関係者、特養代表、在宅介護支援センター代表、行政関係者による「特養ホーム入所調整会議」を設け、点数制を導入しながら入所の順位を判断し、区内外のホームに紹介する制度を始めた。

 神奈川・相模原市では、2001年4月から、各施設ごとに検討委員会を設け、点数制による入所順位を決定する制度の運用を始めた。その後こうした点数制による入所基準は、2002年4月に川崎市や神戸市、福島市、8月には岐阜県でも導入され、さらに、9月には神奈川県、10月には北九州市と兵庫県、12月には横浜市と同様の指針の策定が相次いでいる。

 こうした自治体の取り組みに押されるように、厚労省は2002年8月に運営基準の改正を行い、「施設は、必要性が高いと認められる入所申込者を優先的に入所させるように努めなければならない」との条項を付け加えた。各地で指針の策定が盛んになったのはこのためである。

 神奈川県の場合、介護保険導入時の2000年4月には特養ホームの入所待機者は6300人であったものが、2002年10月には1万2576人に倍増。そのうちの4割が、「すぐに入所は希望しないが、将来に備えて申し込んだ」ものであった。神戸市では、2001年12月には4200人いた待機者が、新指針導入後の2002年5月には1300人に激減した。申し込み順位300番だった人が1番に入所した例も出てきた。品川区では、6ヶ月待てば必ず入所できるという安心感が区民の間に生まれているという。(並河信乃)