3月30日、京都府精華町西木津地区に「私のしごと館」がプレオープンする。修学旅行や総合学習の際に、仕事を体験したり学習するための施設とされている。
産経新聞社「ZAKZAK」によると、8.3ヘクタールの施設内に地上3階建てで、延べ床面積3万5000平方メートルの前面ガラス張りの巨大建物だという。総工費は約581億円。初年度の運営費は約25億円と見積もっている。
だが収入は、小学生200円から一般700円までの入場料と300円の体験料のみ。1年間に40万人の来場で1億5000万円前後の売り上げ見込み。それでも開館前から20億円以上の赤字計算となっている。
1月の完全失業率は5.5%、失業者数は375万人。失業者の雇用をどうするかが問題視されているなかで、仕事「体験」を目的とした巨大ハコモノが誕生する。
この「私のしごと館」を建設しているのが、厚生労働省と特殊法人の雇用・能力開発機構。施設を投げ売りしている「あの」雇用・能力開発機構がである(地域ー2002/02/25ー「労働者に赤字を回す保養施設の投売り」参照)。「私のしごと館」も初年度から赤字見込みで、結局は施設の投げ売りという結果になってしまわないか懸念される。
雇用・能力開発機構の施設の投げ売りは、全国各地で依然として相次いでいる。追加的に調べたいくつかの県での叩き売り状況をみると、
青森県には、全52施設のうち、2施設が取り壊し、47施設が譲渡済、あるいは価格提示されている。約1000万円が1件、約170万円が1件、約80万円が3件、約10万円が10件、約1万円が32件。
秋田県には、全78施設のうち75施設が2005年度末までに譲渡予定。70施設が価格提示済、そのうち50施設については自治体が買い取り意向を示している。既に譲渡されている5施設のうち、2施設ずつが1万500円、10万5000円で譲渡されている。
和歌山県には、全26施設のうち21施設が1万円から10万円程度で譲渡されている。
佐賀県では、1万500円から42万円で20施設の売買契約が成立している。
このほか譲渡金額は不明だが、岡山県では、全50施設のうち3施設が取り壊し、44施設が譲渡済、あるいは自治体から受諾回答を得ている。
約1万円、約10万円で施設を譲渡する予定、あるいは譲渡した自治体をいくつか紹介する。(建設費が明らかになっているものについてはカッコ内に表示)
・約1万円……秋田・仁賀保町の青少年プール、佐賀・多久市の体育センター、青森・十和田市の勤労者体育施設(約2億円)、広島・戸河内町の体育センタープール(約1億2500万円)、岩手・花巻市の勤労者野外活動施設(約1億1700万円)・共同福祉施設(約9800万円)・市民プール(約1億2900万円)、和歌山・田辺市の勤労体育センター(約1億9800万円)・テニスコート(約485万円)・「もりいこいの広場」(約1億3000万円)、和歌山・上富田町の勤労者体育施設(約3900万円)
・約10万円……岡山市の勤労身体障害者体育センター(約1億6567億円)、秋田・雄和町の勤労者体育センター(約1億7000万円)、神奈川・横須賀の勤労者福祉施設「サンライフ横須賀」、前橋市の勤労身体障害者教養文化体育施設「サン・アビリティーズ」(約2億8200万円)、佐賀・太良町の勤労者体育センター(約10万5000円)、青森市の共同福祉施設「はまなす会館」、和歌山・中辺路町の勤労者体育センター(約6800万円)
これ以上の金額で譲渡予定、あるいは譲渡した施設は、約20万円で秋田・象潟町の建設労働者研修福祉センター「サン・ねむの木」、約80万円で青森・弘前市の共同福祉施設「ワーク・トーク弘前」、約100万円で広島・戸河内町の勤労者野外活動施設「いこいの村ひろしま」(約9億円)や和歌山・すさみ町「いこいの村わかやま」、約170万円で青森・五所川原市の勤労者総合スポーツ施設、約770万円で岡山・邑久町の「いこいの村」(約17億3000万円)、約980万円で青森・八戸市の勤労総合福祉センター「はちのへハイツ」、約1700万円で石川・志賀町のリゾート施設「いこいの村能登半島」(約3億円)、約1980万円で岡山・倉敷市の「山陽ハイツ」(約8億3000万円)、約2100万円で香川・高松市の勤労者総合福祉センター「高松テルサ」、約3300万円で岡山・早島町の「岡山テルサ」(約99億4000万円)など。
今後もますます「施設投げ売り」が増えていくことが予想される。だが兵庫県・高砂市では、雇用・能力開発機構から10万5000円で勤労者体育センターの売却を持ち掛けられたが、「管理運営費や改修費が必要」「近くに総合体育館もある」とのことで、議会は、14対13で購入しないことを決めた。確かに、格安で施設を入手できるのは自治体にとっては魅力的だろうが、購入後に管理運営費や改修費などさまざまな経費が掛かることを念頭において、高砂市のように施設購入の是非を決めるべきだ。
ところで、「私のしごと館」の行く末は一体どうなるのだろうか。こんな無駄遣いはやめたらいい。各地から声を上げるべきではないか。(田中潤) |