記事一覧に戻る TOPに戻る 


「子ほめ条例」フォーラム、村長逮捕の逆風払い

2003/03/12

 3月8・9日に、第1回全国子どもをほめよう研究大会(子ほめフォーラムin前津江村)が開催された。

 大分・前津江村では、2000年10月に「児童生徒表彰に関する条例(子ほめ条例)」を施行した。条例制定の発端は子どもの書いた作文が村のシンボルにもなった二基の風車設置につながったこと。原田実・前村長が子供の意見、アイディアに感銘、子どものいいところを見つけてほめようという動きになった。青少年犯罪事件が多発する社会状況に対しても、子どもをほめることが効果がありそうだという狙いもあった。

 条例は、学校内だけでなく学校外でも、良い行いをした子どもたちに対して、先生や地域住民が表彰しようというもの。校長や地域住民が子供の善行を教育委員会に推薦、最終的には村長が年度末に子どもたちに賞状やメダルを手渡す。表彰回数の限度は、卒業するまでに小学生は1人3回、中学生は1回と定められている。

 賞の種類は全部で12種類。たとえば、落し物を拾い無事持ち主に戻ったことで親切賞、友達にたくさんの知識情報を広めたとして情報賞、消防詰め所付近の掃除をした奉仕賞などがある。

 中津江村では3年間で小中学校生186人が表彰。そのうちの半分は地域住民からの推薦で表彰された。

 子ほめ条例は、1985年に栃木・国分寺町が全国で初めて施行した。その後、山口・錦町、鹿児島・東町、志布志町、岡山・鏡町、大分・朝地町などに広まった。ほめる側の評価システムとしては、国分寺町や錦町のように学校内だけで実施している自治体と前津江村や東町のように地域全体で実施している自治体とがある。

 子ほめ条例を施行した前津江村に、青少年の健全育成や家庭教育に関する問い合わせが150件ほどあり、今回の子ほめフォーラムin前津江村が開催されることになった。19都道府県から300人、村内から200人が参加した。「キラッと光る小さな芽、みんなでさがして育てよう」を主題に、前津江村の児童たちの表彰式や児童たちによる合唱などの活動発表、その他教育問題についてのシンポジウムなどが行われた。

 子どもの教育にほめることは確かに大切だろう。しかし、こうした条例に基づく表彰といった行政措置ではなく、日常生活の中でさりげなくほめることの方がいいのではないかという意見があることも確かだ。

 なお、このフォーラムは昨年9月に行われる予定だったが、前村長が贈収賄罪で逮捕され、辞職するという思わぬ事件があった。「ほめる大人が悪いことをやっている」ことが問題視され、開催自体が危ぶまれたが、長谷部公明・新村長がイベントを引き継ぎ、半年遅れの開催となった。(田中潤)