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合併から仲間外れにされる弱小自治体

2003/02/14

 「かっこええことばかり言っていたら、合併なんてできませんよ」
 「来るとこ全部どうぞというんですか。門戸を広げるもんで、ややこしくなるんでしょ」
 「伊勢市長が門戸を広げとくでと言うで、ややこしくなるんじゃないんですか」

 昨年12月25日、三重・伊勢市(約10万人)、二見町(約9000人)、小俣町(約2万人)、御薗村(約9000人)の任意合併協議会での一場面。二見町長が「南勢町(約1万人)も将来、合併の枠組みに入れてはどうか」と述べた際、小俣町長が強い口調でこれに抗議した。
 これを受けて、二見町長が「年配の方には敬意を表して発言していただきたい」「そんなに大きな声で話す必要ないじゃないですか」と小俣町長をたしなめ、「ちょっと前途多難じゃないか」と合併の先行きについて不安視した。(2002年12月26日付「伊勢新聞」より)

 南勢町のように人口規模が小さく、財政状況も厳しい弱小自治体が、大きな自治体や広域合併を進めている自治体から、爪弾きにあっている。確かに、弱小自治体を合併の枠組みに入れたところで、受け入れる側にとってみれば大したメリットはない。むしろ逆に、面倒を見なければならない羽目になるのかもしれない。だが、そうでもしないとこれから生き残っていけない弱小自治体にとっては、財政状況の安定した自治体に入ることに必死にならざるを得ないのが現状だろう。

 そこで今回は、弱小自治体が大きな自治体から除け者にされている例をいくつか紹介する。

★2月6日、大分・津久見市(約2万4000人)では、市長が会見で「臼杵市(約3万5000人)が相手をしてくれないので仕方がない」として、臼杵市、野津町(約1万人)との合併を断念する方針を明らかにした。
 臼杵市、野津町は昨年7月から任意協を設置しており2町での合併に向けて動いている。津久見市は9月末、臼杵市との任意協設立を呼び掛け、12月になって初めて2市1町の枠組みを提示。だが、野津町に対しては、いまだ具体的な行動を起こしていない。
 臼杵市と野津町は3月に法定協設置を予定。臼杵市としても、残り短い期間で2市1町での合併進めても、住民の合意を得ることは難しいため、12月の臼津合併研究協で津久見市に対して協議凍結を伝えている。
 今のところ津久見市には、新たな合併相手はいないが、近隣自治体次第で合併協が可能な自治体があれば、飛び地合併もいとわず、特例法期限までの実現を目指す模様。

★2月5日、埼玉・岩槻市(約11万人)は、さいたま市(約100万人)に対して合併協議を申し入れた。1月26日の岩槻市の住民投票で、さいたま市との合併が約52%だったことを受けてのこと。「編入合併」や議員定数が大幅に減ることになる「定数特例の採用」を申し入れるなど、合併に積極的だ。だが、さいたま市側はさまざまな障害を乗り越えて、ようやく市実現まで漕ぎ着けたということもあり冷めた反応。市議会とよく相談の上、検討すると答えた。

★今年1月31日、北海道・小樽市(約15万人))は、住民発議で要請を受けた法定協設置議案を市議会に提出しないと赤井川村(約1300人)に回答した。赤井川村の合併論議には、小樽市との合併、余市など北後志四町との合併、合併しないという3つの選択肢があり、協議がまとまっていない段階での協議会設置は時期尚早という。ただし、赤井川村との合併は道の示したパターンでもあるので、合併については今後も検討はするとのこと。

★1月15日、和歌山・上富田町(約1万5000人)は合併についての町民説明会で、田辺広域8市町村(上富田町含約11万人)からの離脱の可能性を明らかにした。公営企業の赤字経営などが原因。2001年度決算で、水道事業の赤字額が2億8000万円、宅地造成事業の赤字額が6億2000万円となり、「一般・特別会計の赤字を新市に持ち込まない」という合併協の方針を守ることができないため。
 町長は、「解決は困難だ。8市町村での合併に努力するが、『解決できなければ参加はだめ』と言われればどうしようもない」と述べた。

★1月14日、青森・岩崎村(約3000人)では、村長が秋田・能代市長を訪問して、8市町村が2月上旬設置予定の能代山本地域合併任意協議会(約10万人)に参加しない意向を示した。もうすでに西海岸三町村の任意合併協議会を発足させているので、別の協議会にも参加することは好ましくないことや、「能代市長は岩崎村の参加に積極的だが、他の町村は各首長の新年あいさつなどを総合すると、岩崎村を除いた合併を望んでいることがはっきりした」ことが理由。青森県と秋田県をはさんだ県境合併は実現しないこととなった。

★1月9日、島根・頓原町(約3000人)は、出雲市・平田市・斐川町・大社町・湖陵町・多伎町・佐田町での2市5町(約17万人)との合併を断念、隣接する赤来町との2町合併を目指すことを明らかにした。出雲地域ではもうすでに7市町で法定協が発足していて、同町が遅れて参入するのは難しいと判断した。

★昨年12月28日、山梨・御坂町、一宮町は芦川村(約700人)に対して、東八代郡を軸とした6町村(御坂町・一宮町含約7万人)との法定協設置を各議会が諮るかどうかの返答。「これまで6町村の合併で進めており、合併の枠組みを7町村に変えて、新たに住民に理解を求めると、特例法の期限内の合併が困難になる」などの理由で「法定協設置について議会に諮らない」とした。

★12月12日、秋田市(約30万人)は協和町(約9000人)に対して、「合併は難しい」と電話で報告。これを受けて17日に、協和町は任意の合併協を設置している大曲市側との合併を選択した。
 秋田市は雄和町、河辺町からも合併の申し入れを受けている。この協和町からの唐突な申し入れは議会で説明できず、「協和町から正式な申し入れがあってから断ると、失礼になる」として、正式な合併申し込みのない段階で、協和町に連絡した模様。また、ごみ処理を共同実施する秋田市、雄和町、河辺町とは異なるので、協和町との合併は難しいとしている。
 昨年7月下旬に協和町では住民アンケートが行われ、秋田市との合併を望む声が6割だったが、協和町は「議会で議決しても受け入れられない」「秋田市の冷淡な態度を説明すれば、町民も納得するだろう」と述べている。(田中潤)