構造改革特区2次募集に対して各地から申請のあった地域通貨について、国は拒否回答をした。北海道・留辺蘂町、東京・世田谷区、財団法人2005年日本国際博覧会協会の申請とそれに対する回答を紹介する。
★留辺蕊町では地域通貨特区を申請、商品券の複数回流通を求めた。
通常、商品券は一度限りの使用しか認められておらず、消費者の使用した商品券を登録事業者が裏書きして、銀行で換金する。それを登録事業者間においては、複数回利用できるようにしようとするもの。
金融庁は現行の規定で問題なしとの回答。だが、商品券の複数回流通は紙幣と類似の作用があるため、財務省は特区として対応不可とした。
具体的に事業者間同士で商品券の利用を考えた際にも疑問が残る。事業者と消費者をどのようにして区別するのか。留辺蘂町は事業者間同士で生活必需品などを購入することも検討に入れているようだが、それでは個人の消費者とどう違うのか説明がつかない。
留辺蘂町としては、町の約4割の購買が隣接する北見市に流れているため、これを地域内で循環させたいとの意図があった。2006年度までに2000万円の商品券の発行が予定されており、事業者間の複数回流通を認めて、それらを10回使用すれば、2億円の経済効果になると見込んでいる。
★世田谷区と財団法人2005年日本国際博覧会協会は協力して共に地域通貨特区を申請。地域通貨を広く流通させることを念頭に、前払式証票に必要な保証金の規制緩和、未使用分の地域通貨の換金、銀行が地域通貨を預金として受け入れ、換金できるようにすることなどを求めた。
世田谷区では、烏山(からすやま)が「スタンプ共和国」と呼ばれ、銀行もスタンプによる地域通貨を支援している。買い物やボランティア活動などの際にスタンプをもらい、それを銀行に持っていくと、烏山駅前通り商店街が所有している預金口座からスタンプ所有者の預金口座に振り替えてもらえるというもの。この場合、銀行ではなく商店街がスタンプを現金に換金することになる。つまり、ある商品を預金口座から振り替えで購入する際の預金口座間の移動と同じであるから、問題なしとされている。
また世田谷区内では、烏山以外にも玉川田園調布の「DEN」や世田谷区役所内の「がや」など、いくつかのコミュニティが地域通貨活動を行っている。それぞれのコミュニティで流通している地域通貨を各自のコミュニティ以外でも使用できるようにと、世田谷区は支援しており、特区申請に至ったようだ。
日本国際博覧会協会は、2005年3月から9月まで開催される愛知万博の際、ICチップに地域通貨(エコマネー)を累積ポイント(エコポイント)として貯めて、それを銀行で換金できる入場券の販売を検討。世田谷区にも協力を呼びかけ、今回、共に特区申請する運びとなった。
だが、世田谷区にせよ日本国際博覧会協会にせよ、いつ、どんな形で実際に銀行が地域通貨を預金として受け入れ、換金できるようにするのか、具体的な考えがまとまっているわけでもない。このような段階で特区申請しても、当然特区として対応可能なのかどうかを判断することはできない。結局、どちらの提案も金融庁、法務省は地域通貨が換金性を持つ場合に、区域内で悪質な銀行などの出現を懸念し、反対の見解を示した。(田中潤)
〈注〉地域通貨とは、限定された地域で使うことのできるお金のこと。ボランティア活動などの対価として支払われ、地域住民間のコミュニケーションや地域振興が期待されている。
また、地域通貨には換金性はない。それに対して、商品券やプリペイドカードなど前払式証票は貨幣で購入するもの。ただし、前払式証票の発行者が自治体でなく民間業者だった場合、購入者などの利益が保証されない恐れがあるため、保証金を供託しなければならないことになっている。 |
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