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手作り商品の会社を経営しよう<三鷹市立第四小学校のユニークな授業>

2003/02/07

 「2日間の売上目標は〜、経費が〜で、利益は〜となります」
 「でも、経費が少し高いのでは?」

 この会話をしているのはなんと(!)小学5年生だ。
 以前からも、地域の教育ボランティアを募集するなど、学校と地域との連携を図りながら、児童が地域の人とさまざまな体験を積み、主体的に学習や活動を展開していけるような環境作りに励んできた三鷹市立第四小学校(貝ノ瀬滋校長)。

 今回は、チャレンジ精神や創造性、意志決定力などを児童に身につけさせようと、四小カンパニーなる手作り商品の3会社を設立。
 冒頭の会話は、2月6日に行われた授業での児童たちの声だ。各社の商品販売の方針を検討するのに、ボランティアで参加している地域のコミュニティ・ティーチャーが経営コンサルタントとして、児童の販売方針についてアドバイスする。



アンケート結果を報告して、商品の値段を決める商品開発部の児童たち
 この販売方針を検討するに至るまでに、児童たちはさまざまな準備をしてきた。
 まずは、元手を作るため11月に、校庭のイチョウの木の銀杏を集め、袋詰めにして保護者や地域の人に販売、1万円を稼いだ。売り値も相場を調べ、一番安い農家の庭先渡しの価格とした。
 次に、お客さんが買いたくなるような商品を決め、そのアイディアを検討。紙・工作・布で作る商品に分類し、3つの会社を設立した。
 会社を作るからにはお金が必要。そこで、銀杏で稼いだ資金で小学校が設立した四小バンクに、各社が借用書を作成、融資を受けた。
 「商品開発部」「宣伝部」「営業部」「経理部」など担当を決め、「新工作カンパニー」「ハッピーハッピーカンパニー」「スマイルカンパニー」という社名や社章(マーク)も作成。
 商品開発研修会でボランティアが商品プランナーとなり、さまざまな手作り商品の例を紹介。それらを参考にして、児童たちが自分で作りたい商品を決定した。
 だが、商品を売るためには、ただ作るだけでは駄目。売るためには調査をして類似商品や材料費や販売場所など調べるため、街に出て調査。
 それから、商品の企画書を作成し、試作品を作る。

 Mネット(イントラネット)という学校・家庭・地域が連携した地域限定の会員による登録制インターネットの掲示板などで、各社が商品についての意見やアンケートを実施し、集計。それらを図式化して、商品の販売方針を検討した。
 そうは言っても小学5年生、まだまだ理解できていないことも多々ある。同じ商品のはずなのに部門ごとに異なる商品名でプレゼンしていたり、人件費を考慮せずに利益を計算していたりなど。だが、「じゃあどうすればいいのか」を自分で考えさせ、それをみんなに発表することでディベート能力を鍛えるのだ。

 今後は、いよいよ材料を調達して商品を生産、販売場所の近隣に挨拶、ポスター・チラシを配布して、商品を販売。そして、3月には決算報告をする。

 もしかすると3社全てが収益を出すことはできないかもしれない。それでも、「なぜ収益を出せなかったのか」と児童たちが自分で考える力をつけさせることが重要。収益を出して成功するのもいいが、失敗体験というのも児童たちにとっては貴重なものだろう。
 小学生に企業活動を体験させるという大学生ですらなかなか体験できない、この大胆な四小の取り組みは、来年度以降も是非継続して実施してもらいたい。(田中潤)