地元でとれた農産物は地元で消費しようとする、「地産地消」の動きが全国各地で活発だ。「地産地消」とは「地元生産−地元消費」の略で、消費者の食の安全志向などの高まりを背景に、消費者と生産者との相互理解を深めようとする取り組みだ。
「地産地消」には地域における交流のみならず、地域経済の復興にもつながる面があるなど、さまざまなメリットがある。
「地産地消」の具体的な取り組みとしては、新鮮・安全・安心な地元農産物の良さを住民に知ってもらう朝市や直販所、消費者と生産者との交流を兼ねたイベントを開いたり、地元のコメや野菜を学校給食に導入するなど実に多様な形で行われている。
そこで、ここ2、3ヵ月に全国各地で行われている「地産地消」の動きをフォローしてみる。
秋田県では2月から、県内の全公立小中学校の給食に100%県内産の小麦と県総合食品研究所開発の独自酵母を用いたパンを導入する。食の大切さや郷土愛をはぐくんでもらうのが狙いで、小麦、酵母とも完全県内産の給食用パンは全国初の試み。
神奈川県小田原市では1月末に、同市桑原周辺で収穫されたコメ100%のご飯が市内小中学校の給食に登場。この地域はメダカが生息するほどの自然豊かな水田であり、ぜひ学校給食に使って欲しいという要望も多かった。とりあえず「全国学校給食週間」の1月24日から30日までに2回行われた。
岩手県水沢市では1月25日、「胆江地域食文化サミット」が開かれ、副知事や市長などが、食の大切さや食育、地域の食文化伝承の重要性など地産地消運動について語った。
長崎県上五島町では1月25日、「上五島の『地産地消』を考える−もっと食べよう地元の農産物」をテーマに五島地域農業活性化大会が開かれ、パネルディスカッションなどが行われた。
静岡県天竜市では1月25日、地産地消の考えに基づき、地域の特産品を生かし独自のメニューを開発しようと「天竜版新しい食メニュー開発研究会」が開かれ、そばと雑穀を使ったメニュー「粒そば雑炊」「粒そばとキノコの当座漬け」「きび、そば、ささみのサラダ」などが提案された。
鹿児島県では1月24日から30日にかけて、「全国学校給食週間」に合わせ、県内の公立学校で県内産食材を使った「鹿児島をまるごと味わう学校給食」が実施された。
鹿屋市の菅原小学校では24日、牛乳以外の食材を100%校区内から調達した「菅原をまるごと味わう学校給食」があった。29日には、学校の周辺に自生するモンキーバナナなどが「100%校区給食」のメニューに。
1月21日、佐賀県多久市の多久シティホテル松屋は、多久の農産物だけを使った和食コース「ふるさと御膳」をメニューに加えた、1、2月の献立はスッポン鍋、焼きナス、女山ダイコンのサラダなど、14品で3000円。
宮城県気仙沼市では1月16日、全国初の「スローフード都市宣言」に向け、漁協や農協などと市民代表でつくる起草委員会の初会合が行われた。宣言後に、地場食材を利用した学校給食の充実や郷土食の継承など「地産地消」を基本とした事業を展開し、気仙沼の「食」を全国に発信する考え。
宮崎県西都市では1月16日、三納中の学校給食に「ピーマンドリア」と「ニラのスープ」が献立に入った。同市は今後、毎週木曜日に1校ずつ市内全中学校を対象に実施する予定。
宮崎県日南市では1月15日、市内小中学校で地元産野菜を利用した給食メニューが登場。品目は2月はピーマンと水田ゴボウ、3月はツワブキ、来月は児童が生産現場を訪れ、農産物について学ぶ食農教育なども始まる。
佐賀県唐津市では1月9日、唐津・東松浦地区の農産物加工品を集めた「農村レストラン」が店開き。500円の食べ放題で、ご飯から総菜、漬物、デザートまで24品が並び、バイキング形式で地域の味をPRした。
静岡県下田市では1月から、学校給食に漁師料理「いけんだ煮みそ」が登場。今後、富士宮市では地元の農畜産物による巻き狩り鍋作戦を展開し、手軽さを売りに浸透を図るレトルトの開発を始め、清水市では地域の特産物の新しい流通体制づくりを検討する模様。
鹿児島県では12月10日、かごしまの“食”交流推進協議会が料理コンテストを開催。1市6町1村の19人が「キビナゴ焼きサンド」「ちくりん漬け」「ゴボウとチーズの春巻き」など22点を出品した。
三重県四日市市では12月5日、地元の産品を地元で消費する「地産地消体験バスツアー」が実施され、トマト団地や茶農協、和牛牧場など7ヵ所をバスで巡り、施設を見学したり、試食などが行われた。
三重県松阪市など8市町村では12月3日、農水産業の生産者と、販売店の担当者らが一堂に会し、地域の食材の消費拡大を目指す初の試み「地産と地消を結ぶ出会い会議」が開かれた。シイタケや伊勢イモ、ヒジキ、みそなど70品目を前に、50人の生産者と、量販店やレストランなど20社の食品担当者らが質疑応答を交わし、中には商談が成立するところも。
新潟県新津市では12月1日、「にいつ農産物地産地消夢ひろば」が行われ、地元産の新鮮野菜や農産加工品を求める買い物客で賑わった。消費者と農家が直接向き合うことで、地場産農産物の消費拡大を目指す。市内の直売所など8団体が出店、大根やキャベツ、白菜などの朝取り野菜やリンゴ、ナシなどの果物が並び、農家手作りの漬物や煮豆といった加工品も人気だった。
香川県さぬき市では11月30日、さぬき市立津田小学校の児童と保護者33人が同市津田町の農家を訪問。ミニトマトやネギを収穫し、その後ネギの出荷までの過程を観察、うどん作りに挑戦するなど、地産地消を体験した。
福島県郡山市では11月29日から12月1日にかけて、「いいもの発見うつくしまフェア」が開催。「地産地消」の推進がテーマで多種多彩な県産品に多数の入場者が駆けつけた。
岩手県藤沢町では11月27日、「ふじさわ産直交流センター」が設立され、藤沢町内で産地直送の活動に取り組む団体と生産者が連携を深め、「地産地消」の農業振興などを目指す。2002年度の活動方針では町内の学校給食センター、国保藤沢町民病院、老健ふじさわ、特別養護老人ホーム・光栄荘などに食材を提供し、地元農産物の生産振興を図る。
岡山県岡山市では11月27日、地域の生産物を地域で消費する「地産地消」運動を盛り上げるための「食農フォーラム」が行われた。参加者は、炒り大豆ともち米を蒸した「まめじゃ」(岡山市)や「たかきびの団子汁」(高梁市)など11料理を試食した。
埼玉県本庄市では11月26日、「農とくらしの会」が発足。同日、地元産の花を使った寄せ植え教室を開催。地元の花農家が生産した寄せ植えの花やポインセチアの即売も実施し約21万円の売上となった。
熊本県波野村では11月24日、料理教室が開かれ、波野小中学校の児童とその父母ら67人が参加。フランス料理研究家夫妻から特産のソバなど地元の食材を取り入れたフランス料理など3つのメニューを学び、親子で作って楽しんだ。
宮崎県都城市では11月23日、JA都城が地産地消イベントを開き、マイタケや白菜、ネギ、シイタケなど、さまざまな農産物を買い物客にPRした。
兵庫県豊岡市では11月16日から17日にかけて、北但馬東部にある農産物直売所が連携、直売所の魅力をPRする活動の一環で「但馬まるごと感動市」を共同出店した。(田中潤) |
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