岩手県の増田知事は1月20日の記者会見で、2004年度からの県庁組織の改編を発表した。県の出先機関である12の地方振興局の権限、財源、人事の独立性を高めることやIT推進室や青少年・男女共同参画課の設置など本庁組織の改革が含まれているが、とくに注目されるのは、財政課を予算調製課に改め、人員と権限を縮小することである。(調製とは地方自治法149条での用語法)
これまでの財政課は、予算案の調製と予算調整事務のほか、議会関係の事務も行ってきた。これを4月から、議会関係の事務と予算案の調製を新しい課「予算調製課」に移し、予算調整事務と言われていたものについては、各部局に責任を持たせることにした。各部局ではそうした調整事務の人員が増え、財政課の人員は主査15人から6人へと大幅に削減されることになる。つまり、財政課が予算を査定し編成するのではなく、各部局が政策評価などに基づいて自主的に予算を編成する方式に改まることになる。
新たな予算編成の仕組みでは、義務的経費など70%部分は各部局に任せ、知事には「予算確認」として報告が行なわれる。30%部分については各部局が「予算要求」を知事に行ない、重要度、緊急度のウエイトにより、知事が各部局に配分する。知事と各部トップとの間で各部局が達成すべき目標について明確な契約を結び、達成できなかった場合にはその原因を明らかにする。これらの事業はすべて行政評価の対象となる。
今年春には知事選挙が行なわれるため、2003年度当初予算は骨格予算となり、選挙後にその肉付けが行なわれることになるが、新システムでの予算編成は実際には2004年度予算から本格的に行なわれることになるようだ。
こうした予算編成の仕組みの改革は各自治体で始まっている。群馬県では、昨年10月28日に小寺知事が予算編成の基本方針として、各部に予算の枠配分を行ない、各部はそれぞれの内部で予算原案を作成し、それを知事、副知事、各部長などによる予算編成本部で調整する方針を明らかにしている。これにともない、財政課の人員19人の内11人が各部に機動職員として配置された。
また、三重県では2002年度予算から基本計画にある67の施策別に一般財源を知事・副知事・出納長の会議で配分し、さらに細かな基本事業や個別の事務事業については、各部で政策評価に基づき再配分するやり方を導入している。昨年の機構改革で施策の責任者は総括マネージャー、基本事業の責任はマネージャーということになったから、予算は部長と総括マネージャー、さらには総括マネージャーとマネージャー間で決められることになる。このほか、新価値創造予算枠が21億円あり、これは各部の政策コンペの対象となっている。
各自治体のこうした試みはまだ始まったばかりであり、すべてが理想どおり進んでいるわけでもない。しかし、財務省主計局だけが大威張りしている国の予算編成と比べれば、はるかに時代の先端をいっていることは間違いない。(並河信乃) |
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