『JANJAN』は国からの強制的な合併の動きについて断固反対の姿勢だが、合併せずに自立してやっていこうとしている自治体の中にも、呆れ返るほど時代錯誤な市長もいる。
2002年12月1日、加茂市(新潟県)は田上町住民に対して、小池清彦市長名で「市町村合併について 田上町民の皆様へ」という、加茂市と田上町が合併してもメリットがないことを示す市長の考えをチラシにして新聞全紙に折り込んだ。
それを受けて3日、佐藤邦義・田上町長は加茂市長に抗議したが、それだけでは終わらなかった。25日には、加茂市が市長名で「市町村合併について 再び田上町民の皆様へ 田上町長さんの反論に対する見解」なるチラシを新聞全紙に再び折り込んだのだ。
こうした経緯があって、新潟県は2003年1月12日付「県民だより」の市町村合併特集記事で、加茂市長名のチラシについて直接的には言及していないものの、その考え方について批判し、県も介入する異例の出来事となった。
加茂市長名のチラシには、どんなことが書いてあるかというと、
・加茂市と田上町が合併すると、人口10万人の市を基準にして、それより人口が減ると交付税が増額され、人口が増えると交付税が減額されるという地方交付税の段階補正分が5億2900万円減る。
・だが、合併せずに得ることのできる段階補正額5億2900万円を自己負担分として起債(借金)事業を行えば、起債を返済する際に国からそれと同額以上の金額が交付税に算入され、交付される。つまり合併した場合、合併市は段階補正額5億2900万円に加えて、起債についての交付税も交付されないので、交付税が11〜13億円減ることになり、合併市の財政事情は厳しくなる。
・加茂市や田上町を含む県央6市町村や、田上町と新潟市が合併した場合も試算。それらの場合、前者では80億円〜100億円、後者では215億円〜270億円の交付税が減ることになる。
・新潟市は「中学生に対して完全給食を実施することができず、昼食時にミルク1杯が出るだけ」の「県の市町村の中で最も財政事情の厳しいまち」であり、田上町が新潟市と合併すると最も悲惨なことになる。
・地方交付税は今後も実質は減ることはない。
・田上町と加茂市は合併せずに「今後とも国から地方交付税交付金等のお金をたくさんもらって」、豊かな財政運営をしていくのが最良の策である。
新潟市の財政事情については「余計なお世話」だろうし、地方交付税について近い将来は確かにその通りなのかもしれないが、いつまでも国からの交付税をあてにして、もらえるものはもらおうとすることを前提にしているのは全く疑問だ。
段階補正をあてにして起債事業を行い、さらにそこから交付税をも期待するという旧態依然としたやり方にも理解しかねる。自治体の自己責任で起債の自由化を求めるなど、国から自立してやっていくという動きも見られるだけに、加茂市長の国に対する依存度の大きさ、甘えがつくづく窺われる。(田中潤) |
|