信号機を新設したことで交通事故が減少し、それによって2・5億円の経済効果がもたらされたというユニークな試算が昨年11月、神奈川県警から発表された。
試算の対象になったのは、一昨年に新設された信号機91基のうち、新設道路に設置された信号機を除く78基。設置された前後、それぞれ半年間の交通事故発生件数を比較した。
それによると、事故件数は348件(そのうち人身110件)から60件(人身31件)と約80%減。
死亡者は5人から0人、物損事故は238件から29件、その他にも車同士の出合い頭事故が50件から10件、歩行者巻き込み事故が24件から6件などとそれぞれ減少。
事故1件あたりの損害額を人身事故約360万円、物損事故約88万円として計算。人身事故が79件減少したため約2億8000万円、物損事故が209件減少して約1億8000万円の計約4億6000万円。そこから信号機の設置費用や電気料金、約2億1000万円を差し引いて、実質経済効果は半年で約2億5000万円という計算。
同じように昨年12月、熊本県警も信号機新設による経済効果を発表した。
対象とされたのは、一昨年4月から昨年3月までに新設された51基のうち、新設道路への設置を除く46基の信号機。こちらもそれらの設置前後半年間ずつを調べた。
その結果、人身事故は39件から11件、死亡者は2人から0人、けが人も44人から15人とそれぞれ減少。人身事故1件につき医療費、訴訟費、休業補償費など約360万円の損失として算出(物損事故の算出は除く)。人身事故が28件減少したため約1億円、1基あたりでは約220万円の経済効果となるという。
今回の神奈川、熊本両県警の試算は計算方法も異なっており、それぞれが独自で算出したものだが、今回の試算は信号機設置がいかに効果があるかを数字で示すためのものだろう。
しかし、警察が計算に使った事故件数の減少は、信号機をつけた交差点や横断歩道についての事故だけに着目しているらしい。神奈川、熊本両県の2001年4月から9月、2001年10月から2002年3月における交通事故件数は、神奈川県では3万4833件から3万4614件に1%の減少、熊本県では6424件から6455件と0・5%の増加になっている(熊本県に関しては人身事故のみ)。両県とも交通事故件数はそれほど大きくは増減していないのだ。
さらにいえば、信号機がやたらに増えて渋滞がひどくなる場合もある。意地悪くいえば、その経済損失も計算してもらいたかった。交通安全白書によれば、交通管制センターで制御できる信号機は全国でまだ33%だという。スムーズな交通を実現するため、こちらの方の整備にも気を配ってもらいたい。(田中潤) |
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