全国各地で進む合併論議のなかで、違う県同士の市町村が合併を試みる例もいくつかある。いわゆる「県境合併」だ。これに対して共通していることは、どこの知事も都道府県の枠組みを崩すと消極的なことだ。
★茨城県五霞町では12月10日、合併問題についての住民意識調査の結果を公表した。回収率は62.3%。67.4%が合併すべきとし、そのうち合併相手に埼玉県内を選んだのが81.2%、茨城県内を選んだのは17.1%。合併の組み合わせとしては、五霞町と幸手市が最多の44.1%、五霞町、幸手市、栗橋町の1市2町が32.2%だった。
住民調査を受けて、大谷隆照町長は県境越え合併を決意。同役場での記者会見で、合併について門戸を開いている幸手市、そして栗橋町を含めた1市2町の枠組みでの合併を検討すると表明した。橋本晶・茨城県知事が11月の定例会で「五霞町には茨城県に残ってほしい」と発言したばかりだったが、大谷町長は「県境合併はハードルが高く、合併特例法の期限に間に合わないかもしれないが、特例法のアメが欲しくて合併するわけではない」「これまでの行政の流れとは違うが、住民の意向を尊重する」など県境合併に意欲を見せた。
農協、商工会、学校の先生の身分、茨城県の農業改良事業を埼玉県がスムーズに引き継げるのかなど課題は山積しているが、大谷町長は「国は県境合併のハードルについては想定しておらず、このような自治体に対するきめ細かい配慮があってしかるべきだ」とも述べている。
また、15日の幸手市議会全員協議会において、議会側は五霞町との1市1町だけの枠組みを疑問視し、審議は難航。同日夜、合併検討協議会を開き、2市3町(幸手市、久喜市、鷲宮町、栗橋町、五霞町)の枠組みで合併を推進することを決議した。
★県境合併に向けて話がさらに進んでいるのが、長野県山口村と岐阜県中津川市。山口村議会では19日に、中津川市との法定協設置案を可決。中津川市議会も20日に可決している。両村市は2003年1月6日、中津川市役所に法定協の事務所を開設する。
田中康夫・長野県知事は12月県議会を終えての会見で、県境合併について、今後はさらに具体的なデータに基づいて住民サービスやその負担の水準、まちづくりの計画の議論が始まる認識であると述べている。
山口村は島崎藤村の小説「夜明け前」の舞台ともなっており、信州に残したいとの声もあったが、村議会の合併調査研究特別委員会が「住民の8割が越境合併を望んでいる」との調査結果を理由に、「県境合併を推進することが望ましい」と報告。2002年3月の村議会で、この報告を可決していた。
1958年に旧神坂村が中津川市と合併した際、神坂村が分村し、一部が長野県に残って山口村となったという経緯があった。
★合併を前提とするのではなく、まずは県境を越えて連携していこうとする動きも見られる。24日に、岩手、宮城両県の6市町村(陸前高田市、住田町、室根村、気仙沼市、唐桑町、本吉町)の首長らが参加して、県境を越えた広域連携懇談会「宮城・岩手県際の未来を考える懇談会」が発足。生活・経済圏、観光やイベントなどの広がり、共有する道路、河川などの歴史的なつながりから、「人口17万人エリア」の広域連携を図ろうとするのが目的。今後は大船渡市、志津川町、歌津町などにも参加を呼び掛けていく模様。(田中潤) |
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