市町村合併をめぐって大きな市との合併や広域での合併を避けようとする動きが各地で起こっている。、小さな市町村にとっては、合併の規模が大きくなると新しい自治体の中に埋没してしまう恐れがあるからだ。
市町村の12月議会が終盤を迎えた12月11日から20日までの10日間の動向を拾ってみると、合併を避けて単独でやっていこうとしている自治体が19、合併に対して慎重な自治体が2、大規模を避けて小ぶりな合併を模索している自治体が15に上った。
今回はこうした動きをまとめてみた。
12月11日、大森栄治郎・宮城県矢本町長は定例町議会で石巻圏1市9町の枠組みでの合併に当分加わらないことを正式に表明した。鳴瀬、河南など隣町との合併論議を進める方針。
12月12日、鳥取県淀江町議会合併検討調査特別委員会は、「米子市を含む合併案」を否決した同特別委での合併委議事録を要約したものを「議会だより合併特集号」として全戸配布を開始。今後は、日吉津村、岸本町、大山町との4町村で話し合いを求める意見が多い。
12月15日、小田島峰雄・岩手県東和町長は町政懇談会で花巻市からの任意合併協議会設置要請について慎重な見解を示した。住民投票などで十分な議論を尽くしてから合併について検討する模様。
12月15日、高知県大正町は高幡西部合併検討協議会(窪川町、大正町、十和村、大野見村)の第9回会合で同検討協からの離脱を表明、それを受けて同検討協自体も解散することとなった。大正町は、北幡3町村(大正、十和、西土佐)での合併を目指す方針。
12月16日、富山県の大辻進・立山町長、伊東尚志・上市町長は、それぞれの町議会本会議で、富山市が提唱する富山広域圏の合併協議会準備会に参加しないことを表明。立山町は、上市町、舟橋村、大山町との3町1村での合併を模索。上市町は単独での町政維持を検討。
12月16日、兵庫県洲本市、津名町、五色町、一宮町の中淡合併協議会は来年1月に解散する方針を決めた。津名町、一宮町は津名郡六町合併を目指す。洲本市は五色町との合併推進を表明。五色町は新町長が就任してから方針を決める見通し。同町では先月、町長が入札妨害で逮捕された。
12月16日、坂東忠之・徳島県石井町長は町議会で、上山町とは合併しないと述べた。住民アンケートの結果を受けてとのこと。
12月17日、北林孝市・秋田県上小阿仁村長は定例議会で、鷹巣阿仁5町村の町村合併について困難であるという見通しを示した。5町村の起債が膨大なことが合併の障害。今後は合併しない方針。
12月17日、秋田県協和町議会合併推進特別委員会では秋田市、河辺郡側との合併を断念し、大曲仙北任意合併協議会の一員として合併推進を検討することを決めた。「広域圏組合の活動を考えると大曲仙北との合併を進めるべきだ」などの意見が参考にされた。
12月17日、溝口進・富山県福野町長、清津邦夫・井波町長、米沢博孝・利賀村長は、安念鉄夫・砺波市長に任意合併協議会への参加を見合わせると返答。同日、溝口町長、清都町長は桃野忠義・福光町長、岩田忠正・城端町長、伊東浩・井口村長らとともに井波町役場で記者会見を開き、年内に砺波、庄川両市町を除く砺波広域圏八町村で任意協議会を発足させると表明した。
12月17日、三重県鈴鹿市議会総務常任委員会は四日市市、楠町、朝日町との2市2町法定合併協議会設置議案を否決した。合併協設置は住民の意向を汲み上げていないなどの反対意見が上がっていた。
12月17日、石原真一・島根県東出雲町長は町議会本会議で、松江・八束との合併はしない方針を強調した。
12月18日、山形県の原田真樹・余目町長、清野義勝・立川町長は、酒田市など1市6町で構成される庄内北部地域合併検討協議会で、設立が予定されている北部法定協議会へ参加しないと表明。余目、立川の2町での合併協設置を目指す。
12月18日、長崎県大瀬戸町議会の定例会は1市11町の長崎地域・大瀬戸町法定合併協議会設置案を否決。同町は現在、同月2日に発足した西彼北部5町(西彼、西海、大島、崎戸、大瀬戸)の法定協に参加している。否決された法定協設置案は、長崎地域との合併を望む住民の直接請求によるもの。
12月18日、川崎義秀・熊本県益城町長は定例会で益城町単独での町制維持を表明した。熊本市との合併については町づくりをする上でデメリットが大きい、合併するなら西原村を念頭においているとのこと。19日には、幸山政史・熊本市長に対して改めて同市との合併に否定的な考えを示した。
12月19日、中屋一博・富山県滑川市長は議会合併問題検討委員会において、富山、魚津との合併協議会準備会について、住民アンケートの結果が分散しているため、両方とも参加しないと表明した。今後は情勢を見極め、慎重に対処するとのこと。
12月19日、石川県川北町議会は定例会本会議で、「能美郡3町と合併しない決議」を賛成多数で可決。住民サービスの低下などを危惧して、西田耕豊町長は当面は単独町制でやっていく方針を示した。
12月19日、福井県鯖江市議会本会議では武生市との法定合併協設置案を否決。1月に住民投票条例案を提出して、合併の選択を市民に委ねる見通し。
12月19日、島根県境港市議会の市町村合併問題調査特別委員会は、米子市や周辺町村を含めた法定合併協議会参加について協議、反対が多数を占めた。今後、単独で市を存続させていく方針。
12月19日、香川県香川町議会は高松市との合併協議会設置案を反対多数で否決。小さな自治体の方がきめ細かなサービスができる、香川町の方が福祉が充実しているなどがその理由。否決を受け、今後は町民グループによる住民投票申請という局面を迎えることになった。
12月19日、長崎県吉井町議会は定例会最終本会議で、佐々谷4町(佐々、小佐々、吉井、世知原)による法定合併協議会設置議案を否決した。佐世保市との合併を求める意見が多数を占めたためだが、10月の町民アンケートでは佐々谷4町との合併が半数近く、佐世保との合併は3割だった。
12月20日、北海道網走管内女満別町議会は、同管内の6市町村(網走、女満別、斜里、小清水、清里、東藻琴)と、4町村(美幌、津別、女満別、東藻琴)の法定合併協議会の設置案を反対多数でそれぞれ否決。また同日、斜里町、清里町の両町議会も6市町村による設置案を、それぞれ否決した。
12月20日、岩手県矢巾町、滝沢村は両議会で、盛岡、矢巾、滝沢の3市町村による合併協議会設置案を否決、法定協設置は見送りとなった。2005年3月の合併特例法の期限を考えると、盛岡広域圏の合併論議は白紙となった。
12月20日、岡山県新庄村議会は「小さくても自主自立をめざす新庄村宣言」を決議。勝山町、久世町、落合町による合併検討委員会が合併参加を呼びかける予定だったが、同村は合併しないことを選択。
12月20日、大塚雅教・愛媛県小田町長は定例会で、上浮穴郡4町村(久万町、面河村、美川村、柳谷村)との合併を提案したが、議会は反対多数で否決した。
12月20日、高知県春野町議会では高知市、鏡村村、土佐山村との4市町村での法定協設置案を否決した。町民アンケートでは合併賛成が多数だっただけに、町民と議会との意向が一致しない形となった。
12月20日、鹿児島県高尾野町議会の市町合併問題等調査特別委員会では、出水地区2市4町(出水、阿久根市と高尾野、野田、東、長島町)の法定合併協議会設置議案を否決した。町民アンケートでは出水市、野田町との合併を望む声が多数だったということもあり、これらを受けて平原三男町長は今後、1市2町との合併について検討していく方針。(田中潤) |
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